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第23話 砕いてみよう

 煙となって消える虎のモンスター。

 コロンと魔石が落ちる。


 俺がそれを拾っていると橘さんが話しかけてくる。


「すいません、気付かれてしまいましたよね……」


 何故だか、橘さんがしょぼんとしている。


 もしかして、気づかれたことを気にしているのだろうか。

 俺は橘さんの誤解をどうやって解こうかと悩むが、とりあえず、ありのまま話してみる。


「音で気づかれたみたいだったね」

「はい」

「もしかして、気にしてる」

「ええ、と──。はい、実は気にしています。お時間を割いて頂いて、ここまで一緒に検証していただいたのもですけど、隠連慕(かくれんぼ)の効果がこうも限定的だと、思水さんとしては私とパーティーを組むメリットがない、ですよね?」

「いや、そんなことはないよ」

「そう、ですか?」

「ああ。今ので言えば、虎のモンスターは明らかに俺が突然現れて反応が遅れてた。その隙が致命的になるぐらいにね。それだけでも橘さんのユニークスキルはとても有用と言える」


 俺が説明するにつれて、ほっとした様子へと変わる橘さん。


「つけ加えるなら、あの虎のモンスターは知覚能力は平均より高い方だと思う。そんなモンスターですら、何か違和感は覚えても、誰かが居るとは思ってもいないんだ。これが並みの人間、特に撮影ドローンに夢中の配信者様なら、全く気がつかれないはず」

「──ええと、配信者様?」


 熱く語る俺に対して、橘さんはポカンとしている。


「そう、彼らは本当に迷惑でね……さて、そういう訳で、隠連慕の最後の確認をしたい。あ、でも先にこれを」


 そういって俺は虎のモンスターの魔石を橘さんへ渡す。


「あ、はい。えっと、保管しておけばよろしいですか?」

「え、いや換金できないし。砕いちゃっていいよ」

「──砕くんですか?」

「そう」

「やってみます……」


 顔面にはてなマークを浮かべる橘さん。そういえばいつも俺は、魔石は砕いているって伝えてはいなかった気がする。

 それなら確かに、何を言われているか不思議そうにするのも仕方ない。


 置いてあったさっきの木の枝を再び拾ってきた橘さんが、地面に魔石を置いて、棒で割ろうとしている。


「あー、砕くと、体から疲労が抜けて、リフレッシュできるんだ」

「そう、なんですね、やあっ!」


 膝を曲げて、ピタリと膝をつけてしゃがんだ状態の橘さん。両手で持った木の枝を魔石へと叩きつけながら、かわいらしい声をあげている。


 ただ、魔石は全然、砕ける気配がなかった。


「──橘さん、手伝おうか」

「はぁ……はぁ……ごめんなさい。お願いします」

「おっけー」


 とはいっても、どうしたら良いか少し悩んで、俺は大きめの石を二つほど探してくる。

 ひとつを橘さんの足元におき、その上に魔石をのせると、もうひとつを橘さんへ手渡す。


「上から手を握る、ごめんね。こう、一緒に石を叩く感じでいこう」

「──わかりました」


 そういって石を握った橘さんの手に自分の手を重ねる。ただ、叩きつけたときの衝撃で橘さんの手を潰さないように、自分の指で石を保持しておく。

 実質、指の力だけで石で魔石を割らないといけないのだが、たぶん何とかなるはずだ。


「せーのでいくよ。せーのっ!」


 短めに勢いをつけた石を魔石へと叩きつける。

 するとぱりんという音とともに、魔石と、ついでに持っていた方の石も砕けたのだった。






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