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第18話 かくれんぼ

隠連慕(かくれんぼ)、ですか……」


 たしか似たような名前で隠身(かくりみ)と言うスキルがあったはず。そちらはたしかBランクだった。


隠身(かくりみ)みたいに、モンスターからの自分自身の認知確率を下げるスキルですか?」

「さすが思水さん。良く御存じですね。はい。方向性としてはランクBスキルの隠身と、同じで間違いありません。ただ、私のユニークスキル隠連慕は、私が信頼して接触している相手も一緒に、周囲の存在の五感の知覚のうちから一つだけを、消すことが出来るみたいなんです」


 そういって手を差し出してくる橘さん。

 手をとれ、と言うことだろうか。


 俺はおずおずと橘さんの手をとる。ひんやりとしていて滑らかな手だ。


「こうやって手を握っていたり、私の地肌のどこかに触れていてくださっていれば、発動出来ます。周囲から見えなくなるか、音が聞こえなくなるか、一切の匂いが漏れなくなるか等、五つの中から任意に選べます」


 俺の手を握りながら、説明してくれる橘さん。ただもちろん、ここはダンジョン領域ではないので、実際には試せない。


「な、なるほど……」


 俺は手を握られたまま答える。なかなか凄い効果だ。

 ただ、試せないのだから、手を握っている必要はもうないのでは、と思いつつも、一生懸命に説明している様子の橘さんをみるとなかなかそれも伝えにくい。


 そして橘さんからの説明が終わっても手を握られたままだった。

 仕方ないので、そのまま、とりあえず今聞いた内容についてパーティーをくむメリットデメリットについて考えてみる。


 ──まずは対象になるのが、橘さんが信頼している相手ってとこだよな。橘さんはああ言ってるけど、本当に俺も一緒にユニークスキルで見えなくなったりするかは実際に試す必要はあるね。そして、何かで橘さんからの信頼を失うと、たぶん効果がなくなる気もする。ただ、本人についてはその縛りがないっぽいのはいい点。何かあっても、橘さん本人は無事にダンジョンから出れる可能性が高いし。


 俺はそこは安心材料だなと心に留める。何せ相手はまだ未成年の女性なのだ。いくら探索者は自己責任とはいえ、橘さんだけで無事にダンジョンから出られる方法があるに越したことはない。


 橘さんが説明しなかった五感の二つについても、軽く考えてみる。


 ──あと二つは、触覚と味覚だよな。触れてもばれないと、舐められても味がしないとかか。


 味の方は使い道がかなり限定されるが、触れてもばれないは、対モンスターでは使い道がありそうだった。

 触覚しかないモンスターは殴り放題になるのだから。


「説明は、わかりました」

「はい」


 俺の手をぎゅっと握って答える橘さん。

 とても真剣な表情で、でも握られている俺の手を伝って、俺の返事がどうかとても緊張して待っているのが伝わってくる。

 それだけで絆されてしまいそうになるが、ここは安易に決めるべきではないと、自分自身を戒める。


「まずはお試しで一度一緒にダンジョンに行ってみましょう。それで実際のユニークスキルの効果を見させてください。あの、それでお返事と言うことで良いですか?」

「もちろんですっ! ありがとうございます。嬉しい。足手まといだから、最初からダメって言われるかなって思ってました──」


 本当に嬉しそうに笑いながらそう話す橘さん。笑みが眩しい。


 こうして、俺は橘さんとお試しでダンジョン探索をすることを約束したのだった。

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