第17話 スキルランク
「急にこんなことを言われても、思水さんにはご迷惑だと言うのは重々承知しています」
俺の驚いた声に、俯きながら告げる橘さん。
「あの、ええっと、まず確認しときたいのだけどさ。俺は、配信とかしない派なんだけど……」
俺は何より大事な点を伝えておく。
基本的に探索者になるのは、みな、ダンジョン配信目的なのだ。
橘さんがそんな承認欲求まみれの人間とは考えにくいが、俺のスタンスは伝えておくべきだろうと、あえて口にする。
「もちろん、存じております。ただ探索のみをされるストイックな姿勢も素敵だと思います」
「それは、橘さんもあー、配信キャン……配信なしで探索する探索者を目指しているってこと?」
「さようです」
「──なんでまた……」
「助けて頂いた思水様に、憧れました」
そんなまっすぐな言葉を、ためらいもなく口にする橘さん。その純粋な瞳が、汚れた大人の俺には痛い。
──いやその、俺がダンジョンに潜るのは、撲殺してストレス解消するため、なんだけど……そんな憧れる要素ゼロですよ、橘さん!
その純粋な瞳に、そんな俺の本音は言い出しにくい。
「あっ、もちろん、思水さんがモンスターを自らの手で倒すのを、楽しまれているのも存じております。そして、私なら、そのお手伝いが出来るはずと、思っております。それを踏まえての、今回の申し出なんです」
「そ、その前に! 橘さんのご両親は今回のことは?」
「もちろん、二人とも承認してもらっています」
賛成ではなく、承認と告げる橘さん。
「俺と、パーティーを組みたいって橘さんが言い出すことも」
「はい──」
「いやしかし、未成年の娘さんが、俺みたいな……」
「ダンジョン法によれば親の同意があれば未成年でもパーティーを結成できますよね」
「……出来ます、ね」
俺はしぶしぶ認める。橘さんがしっかりと勉強しているのも、理解する。
「それでは後は、思水さんが私とパーティーを組むことによって得られるメリットとデメリットでご判断頂ければと思います」
そういって、テーブルの探索者証を裏返しにして、俺の方へと差しだしてくる橘さん。
「私は探索者証を獲得時にユニークスキルを得ております」
「──それは、おめでとうございます」
ユニークスキルはその名の通り、世界で一人しかもっていないスキルのことだ。
スキルはその有用性からAからEの五段階に分けられているのだが、ユニークスキルはそのランク外のスキルとなる。
聞いた話では、ユニークスキルはどれも個性的らしい。ただ、たまに外れスキルとしか思えないものもあるとか。それでも、ユニークスキルを獲得したと言うのは祝福するにふさわしい素晴らしい出来事だった。
──なんたって、俺が探索者証を獲得したときに得たのは、Dランクの筋力増加と言うパッシブスキルだったしな。
普通は良くてCランクのスキルを得る程度だ。俺のDランクのスキル獲得だって、探索者としては可もなく不可もなくといったレベル。
それをふまえて、俺は橘さんのユニークスキルが記載されているであろう彼女の探索者証を受けとると、目を通すのだった。




