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第12話 相棒

「いた! 本日最初の獲物は、あれにしよう!」


 ようやく下層へと至った俺は、すぐに目標のモンスターを見つけることが出来た。

 幸先がいい。


 ここまでかかった時間から計算して、日帰り出来る範囲でも、それなりに満足出来るぐらいに撲殺できそうだった。


 俺の穢ノ島ダンジョン下層での最初の目標たるモンスターは、一種のゴーレムだった。


 とは言っても人型ではなくて、まるでエイのような形をして、なぜか空を飛んでいるのだ。


 長ったらしい名前があるのだが、忘れた。なので、適当にゴーレムエイと呼ぶことにする。


 ちなみに、ネットで調べた限りでは、ゴーレムエイは堅くて毒もち。そしてドロップ品として、「尻尾」を落とすらしい。


 ただ、そのドロップ品が市場に出回ることはほとんどないそうだ。

 堅い棒状なだけで、使い道が不明なんだとか。


 しかし、鈍器を求めている俺には、堅くて棒状なだけで十分だった。


 嬉々としてゴーレムエイへと走り寄る俺。


 ──たしか下から近づくと毒針攻撃をしてくるんだっけ?


 ネットの情報もバカに出来ない。

 実際、俺が試しに浮いているゴーレムエイの下を通ると、ゴーレムエイが身を翻し毒針で攻撃してきた。


 その動きは、ここまでの敵に比べればなかなかだ。とはいえ、避けれないほどでもない。


 俺は余裕をもって避けると、そのままダンジョンの壁を蹴って跳び上がる。

 一種の三角跳びの要領で、ゴーレムエイの上をとる。そして、手にしたトンカチを思いっきりゴーレムエイに叩きつける。


 ──お、堅さがちょうどいい。この、砕ける感じとか、ゴーレム系の醍醐味だね!


 手に伝わる撲殺の感触を心ゆくまで堪能する。

 気持ちよくパリンと、ゴーレムエイにヒビが入る。

 俺がトンカチを振り抜くと、そのまま地面に叩きつけられるゴーレムエイ。


 良い音を立てて、ゴーレムエイが煙に変わる。


「あ、やべぇ。まさか一撃で壊したか……」


 俺の手には、今のでポッキリいってしまったトンカチさん。短い付き合いだった相棒に、哀悼の意を捧げる。


「ストレス、溜まりすぎてたんだ。だから、加減を間違えたんだ、すまんな……あ、ドロップアイテム……よっしゃっ!」


 無事にゴーレムエイの尾がドロップしていた。

 俺は喜び勇んでドロップ品を確保すると、鈍器としての性能を確かめようと素振りを繰り返す。


「お、いいねいいね。ここの突起が毒針だったところかな? ドロップアイテムになるとなぜか毒がなくなるんだけって? 」


 ブンブンと風を切る音を響かせる。


「振り心地はまあまあ。弾性が強めかー。伸性は弱めっぽい。ゴーレムと言ってもドロップ品は石材と言うよりは少し生物的なんだね。ふーむ。とりあえず今のところは65点かな」


 鈍器マイスターを自認する俺は、鈍器には少しだけうるさい。とはいえ、まだまだ道半ばの若輩者にすぎないので、評価はほぼ感覚頼りだった。ただ、棒状でかつ少ししなりがあるので、なんとなく振り心地は六尺棒に近い。


「強度は使ってみてのお楽しみかなー。本当はひたすら頑丈なのが良いんだけど、これはこれで良いね。さて、君の名前はエイ棒にするか」


 また、適当に名前をつけておく。


「エイ棒君は、どれくらい俺を楽しませてくれるかなー」


 ぐるぐるとエイ棒を振り回すと、バッと、その回転を止める。

 その時だった。


 背後に違和感を覚えて、俺は無意識に前に飛び、軽く転がる。


 地面に何か重たい物が叩きつけられた衝撃音。


 ──お、良い衝突音だ。ただ、重さだよりなのは減点。


 そんなことを考えながら立ち上がり振り向く。

 そこにいたのは巨大なカメのようなモンスターだった。ただ、その頭が九個もある。

 先程の衝突音は、頭の一つで俺を叩き潰そうとしたのだろう。


「いつの間に? とはいえ、ちょうど良いから、エイ棒君を試させてもらおう」


 俺は殴り応えのありそうな目の前のカメさんに、嬉々として襲いかかるのだった。




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