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第1話 配信キャンセル界隈

「あいつ、配信ドローン連れてないっ!」「え、本当だー。やだー、ありえないー」「配信キャンセル界隈ってやつじゃね? 初めてみたぜ」「今どき、あんなのいるのね。配信は政府からも推奨されてるってのに」


 俺は、こちらを見て楽しそうに陰口を叩いている連中から、そっと距離をとる。

 離れながらちらりと見ると、どうやら男女二人ずつのパーティーだ。何機もの撮影ドローンが、そのパーティーの周りを忙しなく旋回している。


 専用の配信器材なのだろう、キャリーケースをごろごろとひいていて、それもうるさい。


 ダンジョン探索において、一人で複数の撮影ドローンを連れていくのが当たり前なのは、当然、俺だって知っている。有名配信者になればロイヤリティがあるのはもちろんのこと、安否確認への有用性から、政府から配信が推奨されていることも。


「──めんどくさ」


 ダンジョンの通路を折れて、ようやく陰口を叩いていたパーティーが見えなくなったところで俺はほっとして小さく呟く。


「こちとら、趣味のストレス発散で来てるだけなんでね。というか、こんな不遇ダンジョンにまで、配信者様は来ないで欲しいぜ……」


 世界各地にダンジョンが現れて十数年、新奇なものに飢えた人類は、すっかりダンジョンに順応していた。

 ダンジョン配信が一般的になってからでさえ、すでに数年以上が経つ。今では俺のようにダンジョン探索を純粋に楽しむ、いわゆる配信キャンセル界隈の住人の方が、変な目で見られるほどだった。


「ああいうのと会いたくなくて、わざわざこの最不遇と言われるこのダンジョンまで来てるってのに……」


 一層から致死性の罠が張り巡らされ、中層まで行ってもえるモンスターなんて全然出てこない、この奥多魔ダンジョン。


 各地のダンジョンに配信者様達が溢れかえっているのが、世の現状だ。それでも、この奥多魔ダンジョンではその不遇さゆえに普段なら、配信者様を見かけることはないのだ。


 なので、俺は週末の休日を潰して、車で二時間かけてストレス発散に、ここ奥多魔ダンジョンに来ていた。


「これは下層で暴れさせていただかないと、全然、割りにあわんな……」


 もう少しいくと隠し部屋があって、下層までまっすぐ落ちれる落とし穴の罠がある。


 俺は勝手知ったるなんとやらとのノリで、猛毒ガスやギロチンの罠のスイッチをひょいひょいとかわしながら、隠し部屋へと到達する。


「よし、誰も入ってないみたいだな」


 隠し部屋のドアにも致死性の罠があるのだが、発動した形跡はない。

 罠を解除して、俺は隠し部屋に入る。


 俺は隠し部屋のすみにこっそり溜め込んでいる角材を手に取る。

 軽く素振りし、馴染んだ感触に自然と顔が緩む。


「うっし。いきますかっ」


 俺は部屋の中央の罠のスイッチを踏むと、自発的に落とし穴に落ちて奥多魔ダンジョン下層へと向かうのだった。



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― 新着の感想 ―
目次の概要だと >配信の動画記録を必要とする法整備がされてしまう。 とあったのに、1話では >政府から配信が推奨されている とある。推奨はあくまで推奨であって強制力がないのに法整備とは?条例くらいなら…
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