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第9話 もし、協力者が集まったら

 授業の合間の休憩時間、俺はトイレに行くために廊下を歩く。

 すると、目の前に木山が現れた。

 思わず身構えてしまうが、向こうは特に気にした様子もなく俺の横を通り過ぎようとする。


 その時、木山が俺にしか聞こえないような声で囁いた。


「君、戸川さんに随分冷たくしてると話を聞いたが」


「……誰に聞いたかは知らないが、それは何かお前に関係あるのか?」


「彼女とは同じクラスだし、席も隣同士だから相談に乗ることがあるんだ」


 その繋がりで仲良くなって、今や人知れず逢引ってか?

 浮気じゃなきゃ青春ドラマだな。……ヘドが出る。


「ただの隣同士の人間にしては随分と世話を焼くんだな? 次期会長としてのご機嫌取りか?」


 それとも新しい彼氏気取りか? いや、実際もう彼氏なんだろうな。


「そういう考えは浅ましいよ。純粋に友達として彼女を心配してるんだ。君も少しは彼女の気持ちを考えたらどうだい?」


 木山はそれだけ言い残し、教室に戻っていった。


 心配ねぇ……。そんなもん、こっちはとっくにし尽くしたさ。

 でも、あいつは何も変わってしまった。


 だからこうなったんだ。




 放課後になり、生徒会室の隣の部屋へと入った。

 この部屋は資料室で一般生徒の立ち入りはできないが、滝の協力の元、資料整理の手伝いの建前で俺と裕は堂々と足を踏み入れた。


「本当は君たちにもっと協力するべきなんだろうけど、生徒会の方にも顔を出さなきゃならないから」


「分かってるよ、ここまでしてくれただけありがたいって話だ」


「ああ、恨み言なんて罰が当たる」


 申し訳なさそうな顔をする滝。

 それを慰める俺達は滝からあるものを受け取って、奴を見送った。あいつも忙しいのにな。


「さて、ここに滝が持ってきてくれた木山のスマホがある。そしてその木山は『偶然にも』校内で起こった喧嘩の仲裁に入ってる。いやまたどうして校内を歩いている時に目の前で喧嘩が始まったんだろうな? 見て見ぬふりをしようとしても『奇遇にも』ギャラリーがいて止めろと煽られてしまってるからな。あと一時間は足止め食らうだろうぜ」


 何の気なしにそう言ってのける裕。こいつの人脈も恐ろしいな。


「喧嘩してるのは三年の先輩達だ。さしもの木山も、下手に出て仲裁に時間がかかるだろうな」


「先輩たちを動かすなんて、高くついたんじゃないのか?」


「俺もそう思ってバイト先のカラオケを三回ぐらい奢ろうと思ったんだが。……どうもその先輩達、過去にどっかのイケメンに女を盗られたことがあったらしい。事情を話したらタダでもいいから協力させろって言ってきた。あんな後輩思いの先輩たちを振る女がいるなんて、世の中分かんねえもんだな」


「それだけクソな女もクソな男も多いってことだ。誠実に生きてる人間が割りを食う、せめて俺たちぐらいは真面目な人間関係を築こうじゃないか」


 そんなことを言いながら、滝が持ってきた木山のスマホを見る。


 一度生徒会を訪れた木山だったが、荷物を置いて出て行ったらしい。あいつがカバンの中にスマホを入れる人間だって知っていた滝だから出来た事だ。危険を冒してくれた滝には感謝しかない。


 ちなみに木山は教師の誰かに呼ばれたらしい。……まさかあいつを嫌いな教師がいるなんてな。それを見つけ出した裕の鼻は末恐ろしさすら感じる。


「でも木山のロックナンバーなんか知らんぞ?」


「俺だって知らねぇよ。当然顔認証を突破するだけの変装術なんかないし、あいつの指紋を取った手袋なんて代物もない。でもな、中身を見る方法は何もそのままスマホを見るだけじゃないぜ?」


 裕はスマホの側面のスロットを開けると中身のSDカードを取り出して、自分のスマホにセットした。


「は! あの野郎、カードにはロックを掛けて無いみたいだな。……ほれ開いた」


「お前、一体どこのスパイだよ?」


「別に大したことはしてねぇよ」

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