師匠との生活
鳥の声が聞こえ日の光を感じ目を覚ますと目の前に未だ賢者様の綺麗な顔があった。昨日の事を思い出して顔が熱くなりとりあえずベッドから出る。
大賢者なのに意外と起きないんだな。
そうだ、師匠の為に朝ご飯を作ろう。
思い立ってすぐ洞穴に行きボアの肉の塊を取り、起こしたら申し訳ないので家の前で草に包まれたボアの肉を出す。
この三年で無駄に鍛えられた手つきでかまどや鍋等もセットして丁寧にボアの肉の腐った部分を削ぎ落とし、シチューを作る。
食べるかはわからないけど一応多めに串に刺して肉も焼いていく。
高かった塩と森で取れた香草も使おう。
家の者は腐りかけの肉が一番美味しいと言っていたが確かに腐りかけが肉も柔らかくなり一番美味しいと思う。
ただ、家の者とは誰なのか屋敷にいた時の記憶が酷く曖昧で細かい部分がまるで思い出せない。
モヤがかかった様に爪の先に引っかかる部分はあるんだけど思い出せそうで思い出せない。
大雑把に記憶している部分も何か正しいのか不安になるんだけどこうして記憶を手繰っているといつも酷い頭痛が始まるので考える事をやめる。
とりあえず家の中に入りテーブルに並べ一息つくが師匠起きないな・・・起こすか・・・。
「師匠、朝ですよ」
むにゃむにゃ言っててなんか可愛いけどやっぱり起きない。
「師匠、冷めちゃうので朝食食べ・・・」
あ、起きた。
・・・うーんなんだろう。
夜も食べられる様にかなり多めに用意したし、どこから出したのかわからないパンも全て食べてしまった。
昨日はそんなに食べてなかったのし賢者様だから小食なのを想像していたけど全く違うらしい。
美味しかったか聞くと「美味しかったよ!そうだ食事の準備は全て君に任せよう!」凄くいい考えを思いついたかの様に大きな胸を張って言っている。
作るのは僕なのに。
師匠の用意したまずいお茶を飲み一服してから
「よし、では改めて君に魔法がなんたるかを教えてよう」
その日から師匠との修行が始まった。
ついに僕にも夢にみた英雄譚の大魔法が使えるのかと期待していたら錬金術の話が始まった。
どうも僕には非常に重要らしい。
どうやら、排出器官が壊れている訳では無く魔法を行使する際に魔力の収束させる位置を固定することが出来ないとの事だった。よっぽどその先生とやらは無能なんだなとぐちぐち言っていた。
自分では指定の位置に対して魔法を行使するイメージしているのに対して全く別の位置に魔力が収束している為空振りをしているらしい。
ただし、体の中や触れている部分への魔力の行使は可能なのだと。ナイフの話や身体強化がこのまさにこの部分だという話だった。
ちなみに金を作れば簡単にお金が稼げるのではと言ったらそう簡単ではないらしい。
世界に存在する物質の割合で作成出来る難易度が違うので金を魔力で精錬しようとすると莫大な魔力量に対して非常に小さな量しか作れない上に魔力反応がある為すぐにバレるとの事だった。
重大な犯罪行為だから考えるなと教えられた。
また、創造と魔力精錬は全く違うと
「創造とはこの世界にこの事象があると新しく世界に書き込む行為」
と言っていた。まだ理解出来ないだろうが覚えておけと言われた。
これが魔法の極地らしい。
魔法精錬の一番簡単なところで言うと水魔法らしい。
世界に存在する水の量が莫大な為簡単に魔法として行使する事が可能ということだった。
世界に存在する物質を少しずつ魔力で拾い集めるのが魔法精錬という事らしい。
一時的に借り受ける方法もあり、一般的な攻撃魔法はこれに該当する。
この場合、魔力消費量は魔力精錬よりも少なくて済むとの事だった。
賢者様曰く、創造こそが魔法であり、一般的な魔法は魔法を劣化させた物との事だった。
意識が簡単な方に引っ張られ易いので一般的な魔法はあまり教えたくないと言われたが毎日行っていたナイフの手入れを今まで通り全力で欠かさずにやるならば良いと教えられた。
その際は必ず絶対に壊れないと言う概念を組み込む様にと教えられたがわからないならそう考えながらやれば良いと言われた。
それから修行や勉強の他にも毎日色々な事があった。
師匠が風呂を作り出し風呂に一緒に入れられたり、限界を知れと身体強化の限界に挑戦させられ心臓が止まったり、面白い物を見せてやると山の一部を破壊したり、急に雪を降らせたり、辺り一面花畑にしたり、瞑想していろと言うから瞑想していたら下位ドラゴンを取って来てこれで飯を作れと言って来たり。
そんなこんなで1ヶ月が過ぎた。