師匠と出会うまで
僕はヘルト・ダルムント、貴族の家に長男として生まれた。優しい父と綺麗な母に愛されて育った気がする。
詳しくはわからないが家には召使いや家宰騎士等もいて多分だが名家で不自由無く暮らしていた気がする。
3歳になり妹が生まれた頃教育が始まった。
文字が読めるようになると与えられた本を毎日読んでいた。本が好きで父の書斎が僕の遊び場になっていた。
5歳になった頃父に魔法が使えるか確認すると言われ僕の拳位の小さな水晶を渡され「目を瞑り腹の奥に力を込めてみなさい」と言われ言われるがまま試してみた。
「おお、ヘルトは凄いな全ての属性を使える様だ」
頭を撫でながら嬉しそうに父が言うので僕もそんな父を見て喜んだ。
ほどなく魔法使いの先生が家に来て教育が始まると、すぐにそんな喜びは無くなってしまった。子供だから詳しくはわからなかったがどうやら魔法を排出する器官にどうしようも無い欠陥があるとその先生が言っていた。
父と母はまだ子供だから才能はあるんだからとにかく練習だけ続けてみなさいと言ってくれたが先生は器官の修復は不可能だから魔法を使いこなすのは無理だろうと言っていた。
魔力量もあり、全属性の才能もあるのにもったいないといっていた。
先生の様な魔法の行使はできなかったが体の表面までは魔法を発現することは出来た。
熱を発生させたり、水を薄く出す程度は出来たがやはり魔法を遠くに飛ばしたりはどうしても無理だった。
6歳になった冬に領内で戦争が起きたので召使いに妹と別の馬車で無理矢理逃がされた。
田舎の村に下ろされて懐いていた妹も別の馬車で移動した為バラバラになってしまったようだった。
村長の家で生活する事になったがこの家は春になった頃に家出した。
いじめられ、食事も満足に出されず、無理矢理奴隷の様な扱いで鞭で打たれ毎日泣きながら働かせていた。
どうしても我慢が出来なくなり村長に家を出るといい父に持たされていたナイフだけ持って森に逃げ出した。
頼むからそのままのたれ死ねと言われた。
森ではゴブリン等の魔物が出る事は本で知っていたがあの家にいるよりはよかった。
初めての夜は木のウロで寝た。
川を見つけ、近くに洞窟を見つけそこに住む事にした。
ちなみに洞窟にはゴブリンがいて必死過ぎてあまり記憶はないが戦って殺した。
あまりの気持ち悪さに吐いて吐いて辛かった。運がいい事に一匹だったのがよかった。あの時に2.3匹居たら多分死んでいたと思う。
火魔法は少し使えるので枯れた葉っぱを握って火をつける程度は出来たし、木の実も色々取れたし、カエルも簡単に取れたからあの家に居るよりはまともに生活出来た気がする。
ボアと戦った時は死ぬかと思った。とにかく必死に戦った。その時に気がついたんだけど僕は死ぬ気で必死に動こうとする時体の動きが倍ぐらい動ける事に気がついた。
多分初めてゴブリンと戦った時もこんな感じだったんだと思う。
ただ、その夜と次の日は筋肉痛で少しも動けなかった。
その日、体がほとんど動かないので暇つぶしにナイフを確認すると刃こぼれが酷くダメになってしまったことに気がついた。
まあ、木を切ったり骨に叩きつけていたんだから当たり前だろうと思ったがやることもないので土魔法で刃こぼれの修復を試みた。
とにかく刃こぼれを埋めるイメージで刃に触れて全力を魔法力を込めて土魔法を行使した所刃こぼれは埋まり元に戻った。
刃こぼれを無視して使い続け木を切ろうとして折れた時は本当に焦ったけど同じ方法で直ったので毎日夜に必ず刃こぼれが無くても不安だから修復作業をするのを日課にした。
たまに村に戻り、本で読んだことがあった冒険者ギルドでボアの牙と毛皮等を売り小銭も稼いだけど多分かなり安い金額で買い叩かれていたと思う。
雑貨屋さんで必要な物を買ったりもしたがいい顔はされなかった。
ちなみに村長の家の者には毎回石を投げられたり死ねとか言われたり本気で殺そうとして来たりしたが必死に逃げた。
そんなこんなで三年がたった時に師匠と出会った。