師匠との出会い
森の中で僕はいつもと同じ様に茂みの中の小動物用の罠の確認をしていた。
「はぁ、今日も何もなしかぁ」
うーん、今日は干し肉でも食べるしかないかなぁそれともカエルでも捕まえようか・・・
ガサッ
サッと音を立てない様に振り向き素早く愛用のナイフを抜き身構える。
ゴブリンかボアでもいるのか?
ザッ、ザッ、ザッ
何かがこの先で歩いている音が聞こえる。茂みの隙間から慎重に覗き、その姿を見て喉から出る悲鳴が漏れそうになるのを喉の奥でなんとか押し留めた。
十数歩先にだらしない体をした大男の体に醜い豚の頭が乗っている姿が見える。
(オ、オーク!?)
なんで、こんな所にいるんだ!?
3年住んでいるけど一度も見た事無かったのに!
あれは拙い、小さい頃に大木すら叩き割ると本で読んだ9歳になったばかりの僕が勝てるわけがない、どうにかここから逃げなければならない。
どうにか逃げる算段をつけようとして周りを見渡して絶望する。
他に二体が周りを見渡しながら歩っていた。
(三体も何故!?怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖いどうにか逃げるしかない)
ゆっくりと後退りする。
バキリ
三体のオークが一斉にこちらを向いた。
茂みのから勢いよく飛び出し走りだす。
ドグッ!!
数歩走り出した所で背中に強い衝撃があり転んでしまった。
(なんで!?)
ああ、なるほど目の前に棍棒が落ちている。
痛みで視界が狭まり息が出来ない程に苦しいが死ぬよりはいいとナイフを構えて向き直す。
三体のオークがその豚面を嫌らしく歪めて気持ち悪い馬鹿にした様な声を出しゆっくり歩いてくる。
体が痛みで動かない上にこんなナイフじゃ勝てる訳が無い上に今度こそ恐怖で体が動かない。
一匹のオークが近づいて来て背中から引き出した大剣をゆっくり振り上げる。
ああ、ダメだ・・・死ぬのか・・・
諦めて目を閉じて衝撃を待つ
ザン!!
熱い液体が体中にかかるのを感じて目を開けると頭の無いオークがよろけて倒れるのを見た。
今度こそ喉から小さく悲鳴を出してしまった。
ザン!!
ザン!!
更に奥にいるオークの頭が順に飛ぶのが見えた。
何が起きてるんだ。
「ねぇ、君大丈夫かい?」
背中から耳障りの良い鈴の様な声が聞こえた。
後ろを振り返りながら立つ。
脈絡も無く彼女は言う。
「へぇ、君面白い物を持っているね僕の弟子にしてあげよう」