「入学式前日の夜」
という訳で(どういう訳だよ)、初投稿です。不慣れな点ありますが、よろしくお願いします。
深夜、とある住宅街のとある家で、明かりもつけずにパソコンの画面に顔を近づけている学生がいた。
「ふ、ふふふ…ログボ溜まったぜ…これでやっと綾香ちゃんのフィギュアに応募できる!」
俺の名前は寺垣文羽。今年から大学生。親元を離れて絶賛オタ活中。
最近の世の中はかなり寛容になった方だろう。数年前までは、オタクは世間から冷たい目で見られてたらしいし。まぁその時の俺まだ小学生だったし、知る由もなかったのは当然か。
「さぁ、お迎えする準備は出来てる…頼む、当たってくれ!」
俺は今、「私立星河学園」というアニメにハマっている。その中でも特に好きなキャラ、所謂「推し」の澄野綾香という登場人物に心血を注いでいる。やはり学園モノに限るな。ちなみに、元々はゲームから派生した作品らしい。最近知った。
「やっぱ、素晴らしい作品だよ。俺もこんな学園生活送りたかった…。伊藤、お前羨ましいよ…」
元々がゲームと言っても、割とギャルゲー要素が強かったから登場人物は女の子ばかりだ。主人公の伊藤一成は実質ハーレムのような日々を送っている。
「…まあ、俺の場合顔が駄目だからさ…分かってるんだよ、分かってるのに…」
やはり、主人公と自分を投影してみると虚しくなる。この癖だけはやめる事ができない。
「…そういや明日入学式じゃん。寝よ」
もう2時をまわっている。一体何をしていたんだ俺は。…いや、推しの為なら仕方がないな。
夢の中で逢えるといいな。俺のプリンセスに。
「…何言ってんだ俺、気持ちわり…」
最高に後味の悪い締め方だ。こりゃ今夜は悪夢だな。入学式前日だってのに…いや、もう日付変わってたわ。
(…)
随分とリアルな夢だな。歩けるし、痛みも感じる。ただ心無しか胸の辺りが思い。下半身にも違和感が生じてるし…。
「…って、はぁぁっ!?」
う、嘘だろ!?見た目完全に女子大生なんだが!?
「…夢じゃない。ここは俺の部屋だし…え、ホントに何で?」
人生は予測出来ないものだって、どっかの偉い人が言ってた。でも…。
「これは誰も予想出来ないだろ…」
ふと時計を確認する。
「やっべ、遅刻!?どどどどうしよう…」
入学初日から遅刻したらお笑い者になってしまう。それだけは阻止しないと…。
「…このまま行くか」
見た目に似合わぬ速度で街を駆け抜ける。もう周りの目とか気にしてる暇はない。
「かわいい…」
誰かが呟いたそんな言葉にも目をくれず、ただただ走った。これ、間に合うのか?
「なんでこんな目に…」