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2.嫌な依頼者


「…マジかよ。」


俺は今、とある依頼の依頼主と出会った所だ、


どうやら俺を指名した、指名依頼のようで、

金貨1枚と、破格の報酬金がかかっていたから

ほいほいと受けてしまったのだが…

まさか依頼人が…


「…貴方は先日酔いつぶれていた……」


茶髪の少女だ、銀髪のも居るようだ。


まさか昨日出会ったばかりの少女が、

依頼主だとは…流石に想定外だった。


「…あー、…昨日声掛けてきた女の子だよな、」


「えぇ、そうですね…まさか、ギルドでオススメされた方が…貴方だとは…。」


「オススメ…?…」


「…えぇ、あなたは実力者で、正しい心を持ち、絶対に依頼をこなせる方…と、受付に聞きました。」


…俺って…そんな良い人間だと思われてんのか?!

どちらかと言うと、正しい心なんざ捨ててると

思って日々を過ごしているんだが……。


「あー、今でも遅くはない、俺以外に変えたほうがいいんじゃないか?」


「…ギルドにも迷惑ですし、それに貴方、レートAに届く程の実力者だそうですか、昔は竜を討伐したんだとか、」


あん…のお喋り受付娘が!人の経歴を勝手に喋るとは…、


くっそ…ただ向こうは俺以外に変えそうないし…

俺ももう依頼を簡単に受けちまったからな…

こいつらを…護衛するしかねぇのか……。


「…はァ…しょうがねぇな、俺もプロだ、護衛は何処までだ?」


「そうですね、この先の森を抜けて、次の町、フィアードの町まででお願いします。」


フィアード…か、この町からさほど離れた町じゃない

それで金貨5枚とは、かなり破格の報酬金だ。


「…了解、ちなみに出発は何時だ?」


「今からですね。」


「……今??」


おいおい、嘘だろ、見た感じ、馬車もねぇ、食料なんかもねぇし…どうやってフィアードまで行く気だ…

確かにフィアードは近い町ではあるが…

行くためにはバロッタ樹林帯を抜けなくちゃならないし…、

少なくとも歩き続けても2日はかかるぞ?


「…おいおい、食料はどうすんだよ…」


「…あぁ、その点は大丈夫です、シズハ、お願い」


「…分かったわ。」


シズハは手に持った短い杖を軽く振ってみせると、

杖の振った軌跡をなぞるように

宙に黒い空間が生まれる、


その中にシズハが手を入れると、薬草の束を

取り出してみせた。


「…おいおい、こりゃ、時空魔法か…。」


俺は激しく驚く、明らかに15歳ほどの少女が、

超高等魔法である時空魔法を使えるとは、

完全に想定外だった。



「ええ、シズハは私の友達で、高等魔術師ですから、時空魔法に食料を入れてもらっているんです」


「なるほど、便利だな」


「…ちょっと、あなた、私の事をそんな物みたいに言うのは辞めてくれる?」


銀髪の少女が不快そうな顔をしながら言う。


「コラ、シズハ、これから私達の護衛をしてくれる方なんだよ、ちゃんとした言葉使いをしなくちゃ。」


茶髪の少女がそう銀髪の少女を叱りつける、

こいつらはいつもこういう掛け合いが多いな…

まぁ、仲が良いってのは、いい事だし、

問題がある訳ではないか。


「…まぁ、そこまで俺への言葉使いは気にしなくていいぞ。」


「…お気遣いありがとうございます。」


「それで、えーと、茶色いの、もう出発するのか?」


「…ちゃ、茶色いの??…そ、そうでしたね、名乗り忘れてました、」


「…私はティア・フィール、魔王討伐の任を受けた勇者です、よろしくお願いします。」


…ティア・フィール、か、…なるほど、覚えておくことにしよう、また茶色いのとか呼んだら不機嫌になりそうだしな。


「…あぁ、こちらこそ、よろしく頼む」


「…あっと、シズハ、しっかり挨拶しときなさい。」


「…シズハ・グレスハート、15歳の天才高等魔術師よ、」


シズハ・グレスハートは、こちらに目を合わせないようにそう小さな声で言う。


はは、そうとう嫌われてるな、そんだけこの勇者が

大好きなんだろう、と考えておこうか。

少しでも軽く考えないとな、こんな年頃の娘に

嫌われてると考えたら、虚しくなってしまう。


「あぁ、シズハに、ティアだな、よろしく。」


「…あなたの名前、聞いてない。」


シズハが変わらない表情で聞く


「…おっと、これは失礼したな、俺はー…そうだな、俺は傭兵だ、好きに呼んでくれ」


「…え、私は名前が聞きたかったんだけれどあなたの職業なんて、もう分かってるわよ。」


「…俺は傭兵だ、名乗るような名前はない。」


シズハは頭の上に疑問符が浮かんで見えるような

表情をしながら、ティアの方を見る。

ティアも同じような顔をしていたが、


「…分かりました、それでは、傭兵さん、とお呼びしますね。」


どうやら察しが良くて助かる、俺は…名乗る訳にはいかないからな。


「あぁ、そう呼んでくれ。」


俺は少し口元を緩める、

ティアも少し緊張が解れてきたらしい。


「…えー、もう出発するんだよな?」


「あ、そうですね、そろそろ行きましょうか。」


ティアが前に行き、俺とシズハを先導する、

町の正門から出て、草の刈られて多くの人が通り

踏み締められて出来た道を歩いていく、

途中では何人もの行商人や、町に行く人と

すれ違い、その度にしっかりとティアは

挨拶をしていた、


律儀な奴だ。


「…ふぅ、あと森までどれくらいですかねぇ?」


ティアが歩きながら、俺の方を向いてそう聞いてくる


「そうだな、あと、1時間もあったら森の中には入れるだろうな。」


「1時間ですか、案外近いものですね」


ティアが少し笑いながらそう言う。

俺は特にそれに言葉を返す事はせずに、

ただ歩いて、ティアに着いていく。

ティアもこれ以上俺が話す気が無いのを理解したら、

少し困ったような表情をしながら前をまた向き、

歩き続けて行く。


「…ちょっと、アンタ。」


不意に後ろから声が聞こえた、シズハだろう。


「…なんだ。」


「せっかくティアから話しかけたんだから、もうちょっと話を続けてあげなさいよ」


軽く後ろを振り返ると、キツい目でシズハがこちらを

睨んでいた、


「ティアはアンタとコミニュケーションを取ろうとしてるんだから、少しくらい応えないと、失礼だとか、思わないわけ?」


「…俺はあまり依頼者と不必要な会話はしない主義なんだ。」


そう俺が冷たく言うと、シズハはため息をつく。


「…ハァ…」


…静かなまま、暫く俺達は歩き続けた。



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