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1.最悪の出会い方


「…ッオラァ!!」


重厚な刃を持つバスターソードで男が忌まわしい

怪物共を吹き飛ばし、両断する。


その男の凪いだ半月状の残痕は怪物の血やその

怪物共の散らばった肉塊が残るだけ、

並大抵の人間とは思えない程の力強い斬撃に、


”彼”に護衛依頼を頼んでいた商人は強い恐怖を

感じてしまっていた、

これ程までに強いとは、思ってもいなかったからだ。

それこそ彼は冒険者であれば間違いなくAレート

以上の実力を持っていると言えるだろう。


「…あー、商人の旦那、もう怪物はいなさそうです、さっさとこの森を抜けちまいましょう。」


男はバスタードソードに付いた血液を懐から取り出したシルクの布でサッと拭き取り、鞘に仕舞う。


商人はそのなんとも言えない男の気の抜けたように

感じてしまう声に少し緊張を解きながら、

息を付く。


商人にはこのように気の抜ける声を出す者が、

あの、鬼神の様な強さを見せつけてくれた男と

同じ人物か疑ってしまう。


ただ、そんな事を考えていても仕方が無いので、

重いバックをさっさと背負い、木々が重なって少し

薄暗い森の中を小太りの腹を揺らしながら

歩き始めた……











「…あいよ、丁度銀貨5枚いただくぞ。」


男は商人から5枚の明るい色をした銀のコインを

受け取ると、

枚数も数えずに腰元のポーチにさっさとしまった。


男は商人と別れ、到着した町をウロウロと

特に行く当てもなくうろつき始める、


(…ここぁ…ディアーズの町っつたっけか…)


男は少しこの町の事を思い出しながら狭い路地の

石の階段を降る。

横目ではこのディアーズの町から見える大きな

湖を眺めていた。


男は近くにあったベンチに腰を掛けて、大きく息を

付いた、座る時に自分の装備が立てるガチャガチャと

鳴る金属音が周りにいた、雰囲気の良さそうなカップルの接吻を邪魔した事には気づいてはいなさそうだ。


(…たまにぁ、こんな風に感傷に浸るのも悪くはねぇな……)


男はそう思いながら瞳を綴じる、

男の脳裏に浮かぶのは…酒に、女、パンパンの金貨が

入った自分のポーチ……


(なんか、俗物的な感傷になっちまう、くそ、)


男はそんな自分の深層心理に不機嫌になってしまう、


「…うっし!、いっちょ飲みにでも行くかァ!」


勢いよく立ち上がりながら、一人、大きな声で

高らかにそう男は言う。


カップルはもう、どこかに行ってしまったようだ。



男がそう言って暫く、男は町の酒場にいた、

酒場に居たのは、仕事を終えたのであろう鉱夫や、

明らかに衛生的とは言えない浮浪者、

そして男のような鎧に身を包んだ者たちだ。


「…おっさん、エール1杯、しっかり冷てえ奴で。」


「あいよ!」


男は注文をこの酒場のオーナーと思しき禿げた頭の

男に伝えると、オーナーは直ぐにジョッキに入った

エールを出してくれる、氷もしっかりと入っているらしい。


「ありがとよ、代金置いとくぜ」


男は木のカウンターに銅貨を15枚置いて、

近くにあった椅子に腰掛ける、椅子といっても、

大きな木樽を半分に切り分けたような簡素な物だが。


「…ぷはぁ」


一気にグラスの中のエールを煽るように男は飲んでいく、冷えたジョッキの表面に出た水滴が思い切り

そこらへんに散るが、気にする素振りはない。


「やっば、仕事終わりにゃぁこれに限るなッ!!」


男は軽くジョッキを掲げながら大きな声を出す、

それに同調したように他の鉱夫達も同じように

声を上げながらジョッキを掲げていた。










「…あ”〜…飲みすぎちまったなぁ……」


男は酒場の近くにあった塀にもたれ掛かりながら

ほとんど中身の無くなったポーチを触りながら

憂鬱そうに呟く。


この計画性のない男は今日貰った金の殆どを

酒に当てて、いまや宿の料金を払えるか分からないほどしか残してないのだ、


「…今晩の宿…どうすっか…」


どうしようも無い事をボヤくのもこの男の癖のようなものだ。


「あの…大丈夫ですか?」


そんな男に声を掛けてくる人がいた。

小柄な、茶髪の少女だ、薄いグレーの鉄製胴当てと、

腰にはある程度の長さのあるブロードソードを提げている。


「…ぅ…あぁ、大丈夫だ、お前みたいなちっちゃいのに心配されるほど落ちぶれちゃあいねぇさ。」


男は無精髭の生えた口元を、ニッと上げる

少女は少し機嫌を悪くしたらしい。


「…っはぁッ…ゆ、勇者様ッ…速いですよッ!」


茶髪の少女の後ろから、息を切らしながら、

銀色の豊かな髪を揺らしながらまた、

少女が走ってくる。


「勇者ァ?」


男はなんとも小馬鹿にしたように、そう口から漏らす。


「…なっ、勇者様のことをバカにするんですかっ?!」


銀髪の少女は男に食ってかかる、


「やめなよ…シズハッ…みっともないでしょ?」


「…で、でもッ…」


声を大きくした銀髪の少女を勇者と呼ばれた

少女が止める。


「おっと、ごめんな、とても勇者とは見えなくてな。」


男は思ったことをそのまま声に出す、

男に悪意はないが、どうやらその言葉が

銀髪の少女の地雷を踏んだらしい。


「…ゆ、勇者様!この愚か者を断罪する許可をッ!」


「やめなさい、シズハ、」


断罪だとか、おっかない言葉が聞こえたが、

少女が力強く銀髪の少女を諌めた。


その勇者と呼ばれた少女に尊敬を抱いているだろう

銀髪の少女は少々不服そうだが、大人しく身を勇者に寄せる。


「…ふぅ、ごめんなさい、私の仲間が失礼を働いてしまって。」


茶髪の少女が礼儀正しく、そう謝罪する。


…どうやら、ある程度学のある嬢ちゃんらしいな。


「…ご丁寧にどうも、俺も口が過ぎちまったな。」


俺がそう口を開くと、視線を感じる、どうやら俺の口の効き方がどうにも気に食わないらしい。


「…それで…大丈夫ですか?お体の方は。」


「あぁ、問題ないさ、ただ飲みすぎちまっただけだ。」


俺がそう言うと少女は息を着く、


「なら安心ですね、今後は飲み過ぎないようにお気をつけて。」


そう言うと少女は立ち去っていった、

…えらく世話焼きな少女だったな。

あの銀髪は立ち去り際まで俺を睨んでいたし……


まったく…今日はついてねぇなぁ…寝る場所もねぇしよ…


そんな事を考えながら、男は立ち上がり、行くあてなく町をぶらぶらと、歩いていきます。



まさか、あの少女と、今後長い関係を持つことになるとは思いもせずに、夜は更けていきました。




こんな凡庸な作品を見ていただき、

ありがとうございます!

ゆっくりとしたペースで投稿していきたいと

思いますので、是非とも今後も

よろしくお願いします!

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