プロローグ
私は何処へ向かっているのだろうか。
歩いているのだろうか、それとも走っているのだろうか。
飛んでいるのだろうか、それとも落ちているのだろうか。
あるいは何か得たいの知れないモノに呑み込まれているのだろうか。
そのどれもがそうであるようにも思われるしそうでないようにも思われる。
そもそも此処には光がない。
そもそも此処には音がない。
そもそも此処には臭いもない。
そんなわけのわからぬ此処だ。
こんなわけのわからぬ此処で私はいったい何をしているのか。
こんなわけのわからぬ此処で私はいったいナニモノなのか。
私にあるのはただただ漠然とした、例えるなら直感のような、思い込みのような、確信のような数少ない情報だけだ。
私は何処かへ向かっていたのだということ。
私であったものは私ではなくなりかけているということ。
私には使命があり、その為にナニモノかにならなければいけないのだということ。
永遠のような、一瞬のような時の流れに身を委ねるうちに。
暗闇の中の私は、朝日のような灯りを見付ける。
吸い込まれる。
吸い込まれる。
吸い込まれる。
落ちていく。
堕ちていく。
墜ちていく。
私はそのかけがえのない救いのような灯りが
何故だか無性に怖かった。




