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ラクリマの群青  作者: 日輪猫
平穏だった日々へ
21/59

No.20 戦闘開始

 


「戦闘、開始」


 黒と青の戦闘服に身を包んだ7人の集団。

 その中で先頭に立っていた黒髪の男が剣を構え、そう言い放った瞬間、後ろにいた6人の男女も一気に武器を構えて走り出した。


「は、速ぇ...」


 まるでテレビの早送りをしているかのように目にも止まらぬ速さで駆けていく集団。

 自分が知っている中で最もレベルが高いノエルでさえも出したことのないようなスピードに、ソーマは目を丸くした。


 そんなことに目もくれず、グランドルムが立っている所よりも少し離れた所で、他の5人を見ながらも立ち止まった3人の男女がいた。前衛を援護する魔導師だろう。


 そのうち1人の男が杖を相手の顔の方に向けて、2人の女は走る5人の方へ向けて何やら呟き始めた。


 そして先に2人の方がそれを言い終わると、赤

 青 緑の三つの光が1人ずつの体にまとわりつき始めた。ソーマもこれを体験した事があった。と言うよりつい先程までその魔法を受けていた。

 アリスが得意とするエンチャントだ。

 しかし、格が違った。



「嘘..あんなに大きなのを三つも...しかもあんな大勢に...」


 岩陰の隅から目を凝らして、その集団を走り出した時にやっと確認出来ていたアリスもソーマと同じように目を丸くして遠くの魔導師を見ていた。


 このワールドでのエンチャント、というのは主に魔法をかけるプレイヤーの攻撃力、速さ、防御力、状態異常耐性、そして、魔力を強化するためにある魔法の事を指す。


 それらを判別する方法は魔法がかけられた際に出てくる球体の色の違いであり、その色は順番に 赤、青、緑、黄、紫という色合いだ。

 そしてそれらの強さは、受け手の体にまとわりつくその球体の大きさによって変わる。つまり、大きければ大きいほど強化されると言うわけだ。


 そして、アリスが驚いたのはその集団の魔導師の魔力の多さだった。


 魔法を使うにしても、エンチャントをするにしてもその強さによって消費する魔力はもちろん違う。

 より高レベルな魔法を使うには、より多量の魔力を失うことになるのは何があろうとどこも同じである。


 それなのにも関わらず、あの魔導師達はたった2人で、アリスの大きさの1.5倍程の玉を三つも作ったのだ。しかも1人ではなく5人に。


 彼らが戦闘を始めてからものの数十秒でド肝を抜かれ、その動きを自然と目で追う2人。


 その凄さを感じ取ったのはもちろんソーマ達だけではなく、グランドムルも先程の余裕ぶりを少しずつ無くしていった。

 軽く浮かしていた体をグッと下へと落とし、いつでも移動が出来るように準備をする。そして、その間にもしっかりと相手に目を向けて爪と神経を研ぎ澄ませる。


 グランドルムはソーマの時とは全く違う態度を取っていた。これ程差があるのかと驚く程に。


 そうして、お互いは衝突し合ったが...


 勝負は一方的に終わった。



 まず始めにエンチャントをされた5人ではなく、後ろで長い時間魔力を貯めていた1人の男が攻撃魔法を怪物の肩に放ち、それが見事に命中。


 右肩に強い衝撃を受け、バランスを崩した上に黒い皮膚がもっと黒くなるほどに焦げてしまったのが最初の一手だった。


 そして、すぐに体制を立て直し咆哮を彼らに浴びせたグランドルムだったが、剣士達はそれに全く動じずに走り出し、やつの足元に到着するとその肉を大量にえぐっていった。


 それを喰らったグランドルムは苦しそうな顔をしながらも一切攻撃を途切れさせようとせず、右手の鋭い爪を使い、ソーマと同じように吹き飛ばそうとした。が、これは大きな剣を持った防御役に完全に封じられ、そのせいで動きが止まった腕を道にして来た片手剣を持ちの男に顔を切り刻まれてしまった。


 「瞬殺」 その言葉通りの見事なカウンターだった。


 そうして、太く長い尾を振り回しても同じようにガードされた後、カウンターを喰らう。

 1人だけにターゲットを絞って攻撃してもすべて華麗にかわされる。

 一旦距離を置こうと足に力を込めようとした瞬間に電気系統の魔法を喰らい動けなくなる。

 などと言うように、見事な連携によって全ての手段を奪われたグランドルム。


「グガァァァァァア、ッ...」


 ───パリン、、ッ


 ソーマとアリスがあれだけ恐れ、絶望した相手はこうして3列もあった大量のHPをあっという間に削られ、最終的にはただ悲鳴を上げることしか出来ずに星屑となっていったのであった。



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