#20 下準備
先の雷により、出来た波動は黄昏界中に広まってしまった。これにより、全ての黄昏界の怪物が人間になる力を手に入れた。
ムスペルのドラゴンやユミルの巨人が人間化・巨獣化を手に入れたことに、さらにユグドラシルの木が進化して、勝手に動き始めたこと。それらが大きな変化であったが、今の私はそんな物に構っている暇が無い。一応は手を回して従うようにはしておいたのだが。
何故、そんな暇が無いかと言うと私は宇宙を我が物にする準備があるからである。私はまずこちらの生物の適性を確かめた。隕石を作ってその中に黄昏界の生物の種をたくさん詰めたのだ。私はこれをブラックホールを介して、地球へと落とした。
結果から言えば、適性はあった。種はみるみる生物の形を作っていき、バッファル島と言う島を支配してしまったようだ。しかし、ゼウスたちは人々と協力し、バッファル島の外へ追いやってしまった。生命の根源を断てるのが一番であったが、それは失敗に終わった。残念ながら、大がつく成功にはならなかった。
その頃、私が以前から進めていた大計画は中盤に差し掛かっていた。これは、侵攻した後に役に立つ。
それから、どれぐらいの時間が経っただろうか。黄昏界の全ての怪物は私の支配下となり、完全服従させることが出来ていた。
能力大戦争以来、大きな争いも無く、ウトガルドの秩序が乱れてはいなかった。変化もあまり無い。唯一の変化と言えば、ドュンケルサイドがクロスサイドから身体変化と吸収を奪還したことぐらいである。ちなみに、この2つがクロスサイドに戻されることは、気配すら見えなかった。
大計画の下準備もついに2/3を終え、いよいよ侵攻の日が近付いてきた。私は黄昏界の怪物たちとドュンケルサイドの者たちを集め、最後の決定をした。
実は、私は密かに地球のある男と交信をしていた。武器を授けたり、3度目までなら許すと1度生き返らせることも、やがてすることとなった。
私は宇宙を囲む巨木の根を見ながら、こう呟いた。
「見てろよ、ゼウス。私を追放したことを後悔させてやる。」
私が相当の覚悟で、あっちの神々に喧嘩を売ろうとしているのは言うまでも無い。




