#10 暴走した恐竜
◆今回登場する人物◆
ウォルト(49)
バッファル島の長。シェリーとともに暮らす。
アレク(16)
リドナーの弟。6体の恐竜をサンドリアの鈴で束ねる。かつては、敵だった。
シェリー(19)
マリリンの妹。死んだ彼女の後継者で、ウォルトとともに暮らしている。
アリアナ(31)
バッファル島の魔法使い。光属性に適応している。
★今回登場する怪物★
ギガントラプトル
ラプトルとティラノサウルスの両方の遺伝子を持つ巨大な恐竜。陰の森に住む、アレクの相棒。高い知能と強いパワーを兼ね備えている。
ラプトル
非常に知能の高い中型恐竜。大きいものでは2m近くにもなる。ギガントラプトルとともに暮らす、5体のラプトルはアレクの相棒である。
●今回登場するアイテム●
サンドリアの鈴
古代都市・サンドリア製の鈴。アレクが、恐竜たちを束ねるのに使う。
シャインロッド
アリアナが使う、先に、黄色い魔石が埋め込まれたごく普通の杖。
その日、陰の森で巨大な恐竜が暴走した。ソイツは、最初は一心不乱に人々を食べようとしていたが、結界がそれを阻んだ。これに気づいたヤツは結界に噛みつき、引っ張ったり、ねじったりして、それを破ってしまったのだ。そして、ソイツはバッファル島に放たれた。
その恐竜を唯一抑えることが出来るのはサンドリアの鈴を持つ、アレクだけ。彼は鈴を鳴らすことで、ヤツらを制御していた。しかし、彼は旅行中。携帯電話の普及しないバッファル島に無線で連絡出来る者はいるわけもなく、このことを伝えるよしもない。ウォルト様は仕方なく、殺さないという条件で打倒命令を出した。
その命令にはたくさんの者が応じた。剣士、弓使い、ファイターなどたくさんのジョブ持ちの人々がその恐竜を打ち負かそうとしたが、その高い知能と強いパワーの前では手も足も出ず、食べられてしまった。その頃にはすでに、島の戦士たちは恐怖で打倒を諦めていた。そして、被害はさらに広がる。これを終わらせようと、水の賢者・シェリーは例の鈴を鳴らしてみるが、ヤツに届くはずがなかった。
それから、数日後、やっとアレクが帰ってきた。彼は知らせを聞くと、すぐに5体のラプトルと一緒にヤツを止めにいった。
カラン、カラン...
アレクが鈴を鳴らすと、ヤツの動きが止まった。さらに、彼はラプトルたちに指示を出した。
ビャー!ビャー!
どうやら、ソイツたちは恐竜の言葉で「やめろ」と言っているらしい。次に、ヤツは応える。
ギュゥゥゥン!
これは、「拒否」と言っているらしい。これを聞いたアレクはさらに、鈴の音をあげ、今度はヤツを威嚇する指示を出した。
ピャース!ピャース!ピャース!
ギュォォォン!
5体のラプトルと巨大恐竜が同時に突進を始める。それを見たアレクは近くを通りかかった魔法使いに声をかけ、「スタンニング」を唱えさせた。それは、見事、命中し、ヤツは倒れた。突進のしばらく地面を滑ったが、やがて、止まる。ラプトルたちはこれを軽く避けたので無事だった。
そして、アレクは魔法使いを連れたまま、ヤツの体の隅々までを見て回り、傷口を見つけた。彼はたまたま光属性に適応していた、その魔法使いに「ヒール」を唱えさせた。それから、再び、起き上がったときにもう1度、鈴を鳴らしてみると、ヤツの動きは止まったのだ。
こうして、ヤツはラプトルたちとともに陰の森へ戻され、再発防止のため、森の外周には厚い結界が何枚も張られた。




