表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/7

5)人喰いアメーバが猛威を振るい、通り魔が暗躍する。

 5時前には帰り着きそうだという川口の見立て通り、4時50分に三島のワンルーム前に到着した。

 彼女は、直接上田氏のマンションに行くか、一旦自宅に戻るか迷っていたが、汚れ物を洗濯機に放り込んだ後シャワーを使ってから行く事に決めた様だ。


 井村が笑って手を振り、川口が「場所が分かったんで、今度、夜這いに来るから。」とふざけ、俺が「谷口には、ちゃんと伝えておくから。」と言うと、彼女はちょこんと頭を下げ「皆さん、今日はありがとう。」と礼を言って建物の中に入っていった。

 礼を言わなくちゃいけないのは、俺たちと言うか、とりわけ俺の様な気もするけど。


 その後、井村が学生寮で降りた後、俺は今住んでいる学生向け安アパートまで、川口に送ってもらった。

 アパートは、寮から遠い距離ではないので、井村と一緒に降ろしてもらう心算だったのだが、川口が「まあ、いいから。」と回ってくれたのだ。

 実家から大学に通っている川口は、直接甘味屋へ行くのでなければ、約束の時間に間に合うかどうか微妙なタイミングだ。


 「川口、今日は一人で運転させて悪かったな。疲れたろ。」

 俺がアパートの前で、荷物を担ぎながら礼を言うと

「大丈夫。ホント言うと俺は、他人が運転する車に乗っているより、自分がハンドル握っている方が楽なんだよ。他人の運転だと、ブレーキのタイミングとか、気になってさ。酔いそうになるんだ。……今日はオマエの方が疲れただろうと思うけど、仮眠なんか取るなよ。時間厳守だ。」


・・・・・・・・・・・・・・・


 風呂場で水を浴び、綿シャツと綿パンに着替えてから、使い込んで多少クタビレが見える肩掛けカバンに財布その他を突っ込む。

 真夏の服は、大きなポケットが少ないから、カバンが無いと何かと面倒だ。

 オタクファッションなどと、何かと評判の悪い恰好だが、便利さには変え難い。

 約束の6時より10分早く甘味屋に到着するよう、時間を調整して部屋を出る。


 店の前に着いた時、大学の方から谷口が歩いて来るのが見えた。

 おお! なんて事だ。

 今日は彼女にしては珍しく、身体にフィットした、えんじ色に近い濃い赤色のTシャツに、腿の露出が多い短パンという恰好だ。


 カメラを携帯していないのが悔やまれる。

 いや、カメラを持っていないというのは言い訳に過ぎなくて、本当は彼女を撮影する度胸が無いのだ。

 カメラ機能ならスマホに付いている。

 写真撮らせてよ、とさえ言えれば、彼女は拒否したりしないとは、思うのだけれど。


 彼女に向かって軽く手を上げると、それを認めた彼女が、会釈してから小走りでやって来た。

 「お疲れ様です。何だかちょっと日に焼けたみたいですね。」

 そう挨拶する彼女の脚に、素早く目をやると、今日はツルツルのピカピカになっている。

 美しいなと思う半面、日本コジラセ党フェチ委員(もう、開き直った。)としては、若干残念な気もするかな?


 「俺、日差しが強いと、あっという間に焼けちゃうんだ。……でも、いつもと比べたら、今日は大胆な服装を選んだね。すごく似合っているけど。」

 三島のスパルタ教育のせいか、普段なら思っていても中々口に出来ないセリフが、ポロッと出てしまった。

 うわわわわ。大丈夫か、俺? 服が似合う、とかいう会話は今までした事が無いのに。


 彼女は一瞬、はにかんだ様な表情を見せたが

「皆さんが、海から直接来られるのかな、と思ったものですから。なるべく同席して浮かない格好を、と。一人で部屋に居る時は、何時もこんなです。」

 ぎゃああああ なんて可愛いんだ!

 しかし、公道でのたうち回る訳にはいかない。


 内心を気取られない様、表情を引き締めると

「詳しい報告は中でするけど、三島さんは今日は同席出来ない。彼氏の具合が良くないんだ。昨日から、熱っぽいんだそうで。」

 谷口は心もち眉をひそめて

「それでは仕方がありませんね。ぜひお話しておきたい事が有ったのですが。」

 「彼女も残念がっていたよ。週明けには、ミーティングを持ちたいって。……まあ、店の前で立ち話してるのもなんだから、中に入ろうか。」


・・・・・・・・・・・・・・・


 甘味屋の中では、既に川口がカキ氷を食べていた。

 ヤツは、先ほど別れた時のままの恰好だ。

 俺たちを見付けて、手を振ってくる。


 客の入りは二割といったところで、通常より空いている。土曜日だから、甘味より、飲みに行ったりガッツリした物を食べに行く学生が多いからだろう。


 川口が座っているテーブルに行き

「一ぺん、帰んなかったのか?」と言うと「帰ったら、遅刻しちゃうかも知れないじゃないか。オマエに偉そうな事を言っておいて遅刻したら、ネタにされるからな。コインランドリーで洗い物だけ済ませた。乾燥はしてないけど。後悔はしている。」

 乾燥させないと、洗っただけの洗濯物は臭くなるからな。


 それからヤツは、谷口を上から下までしげしげと眺め

「船長、今日はキュートに決めてきたね!」と手放しで絶賛した。

 「川口さんが、海辺向きの装いで安心しました。私だけラフ過ぎたら、ちょっと恥ずかしいかなって考えてたところだったので。」


 入り口の方から、おお! と感嘆の声が上がったと思ったら、井村が感激した表情でやってきた。

 ヤツも着替えを済ませていて、俺同様の地味な服装に成っている。

 「谷口さん、新鮮だね。なんていうか、こう……恰好良いね。」


 三人から次々に賛辞を浴びる事になった谷口は、有頂天になるよりも、むしろ疑惑の表情になって

「皆さん何かありました? ここは一つ、正直に話してみて下さい。……怒ったりしませんから。」

 彼女は、そう言ってから、聖母の様な表情になった。


 うっすらとした笑顔が、三島に睨まれている時より、怖い。

 女性は(あるいは谷口は)褒められれば嬉しい、というものではないらしい。


・・・・・・・・・・・・・・・


 オーダーを取りに来た店員さんに谷口は、川口の追加分も含めて、独断でわらび餅と抹茶のセット四つを注文すると、始めましょうかと、話をうながした。

 俺たちは閻魔えんま様の前に引き据えられた罪人みたいに、朝からの出来事を順を追って、代わる代わる話した。


 まあ、流石にドウテイをコジラセて云々の部分は、女性と言うモノに夢を持ち過ぎていて、みたいにソフトな表現でボカしたが、『俺が話をしなくても、残りの誰かが話すだろう』という囚人のジレンマを刺激されたため、細かな部分も補いあって、事実関係はほぼ必要充分な自白になったと思う。


 途中、塩のお清めの部分で、谷口の目が一瞬鋭くなったが、それ以外には彼女は軽く相槌を打つ程度で、口を挿まなかった。

 しかし彼女の顔は、マリア様の微笑みから、次第に能面の様な無表情へと変化して行った。


 「キャンプの件、いいですよ。一緒に行きましょう。水着は高校の時のがありますし。」

 センセーそれは、スクール水着ではないのでしょうか?

 「でも、介添え役とか弁護役というのは、面白くありませんね。私も副教官の伍長と言う事にしてもらいましょう。」

 はい。もう、観念しました。

 「確認しておきたい事があります。」

 なんなりと。正直に白状いたします。


 しかし、谷口の質問は、予想外のものだった。

 「上田さんの具合が悪いというのは、熱を出したんですよね?」


・・・・・・・・・・・・・・・


 谷口の顔が、真剣な表情に変わっていた。

 「今朝会った時は、無表情だったけど、しんどそうだった。言いたい事だけ言うと、直ぐに帰って行ったよ。風邪薬を飲んでると、三島さんは言ってたけど。」と井村。


 「上田さんが三島さんと一緒に、加藤さんのガールフレンドの処へ行ったのは?」

 「二週間くらい前だって、三島は言ってた。」と川口。

 「当然その時には、三島さんと加藤さんが何を調べているのかという、話は出ているはずですね?」

 「阪本事件について調べていたのだから、A沼が話題に出たのは間違いないと思うけど。」


 「ご老人が、A沼で若い男に会ったのは、一週間前の話ですね?」

 「あの老人は、そう言っていたけど。……まさか、清めを受けずに逃げた若い男って、上田氏だったのか?!」

 驚いた俺に、谷口は

「外れていたなら良いのですが。まさか、当たっていたら……。上田さんが、オカルトを信じているのかどうかは分かりませんが、『優しくて真面目な』上田さんは、物理的に危険な場所かどうか、彼女がA沼に行く前に下見をしておこうと考えたとしても、不思議はありません。私と同じく、突き抜き井戸の危険性を予想したのかも、しれませんし。……沼に潜ってみたのかも。水に入っていなかったのなら、老人は追い払うだけで、塩のお清めをさせようとは、しなかったのでは?」

 「でも暴力に訴えるというのは、聞いた感じの上田氏のイメージとは違っているような気がするけど。」

 「ご老人は、殴りかかってきた、とおっしゃったのでしょう? 殴られたとは、言っていません。上田さんは、威嚇だけして逃げたのではないでしょうか。」


 A沼で水練した阪本は、一週間後に発熱している。

 死亡したのは、発熱から5日後だ。

 

 「三島さんに、連絡を取っていだだけませんか。上田さんがただの風邪で、取り越し苦労なら良いのですが。今の症状をうかがえれば、あるいはA沼には行っていない事が確認出来れば、少しは安心できるかもしれません。」

 川口が慌ててスマホを取り出す。

 コールを続けているが、なかなか繋がらない。

 井村が伝票を掴んで、レジに急ぐ。

 電話が繋がった。

 「うん、落ち着け。川口だ。……直ぐ、そっちへ行く。谷口に替わるから、住所を言え。」

 川口は谷口にスマホを渡すと「車を持ってくる!」と店から飛び出した。


 「……分かった。直ぐそちらへ向かうけど、救急車を呼んで。……そう。救急隊員が来たら、大学病院の救急外来に向かうように。そして『PAMの疑いがある』と。……そう。ピー・エイ・エム、パムよ。……もし当たっていたら、普通の町医者じゃ対応出来ないから。……ご家族にも、連絡を。……外れていたら、一緒に土下座してあげるから。」

 冷静な声で話をしている谷口の肩が、小刻みに震えている。

 俺が彼女の空いている方の手を握ると、固く握り返してきた。


 通話の終わったタイミングで、「表で待って居よう。」と支払いを済ませた井村が、谷口の肩を叩いた。

 彼女は立ち上がったが、緊張のせいか、少しふらついた。

 慌てて二人で彼女を支えたが、谷口は両手で自分の頬をパアン! とすごい音を立てて気合を入れ、「大丈夫。」と立ち直った。


 俺たちが甘味屋から出たのと同着で、川口が車を回してきた。

 「乗れ。住所は。」

 「三島さんの家の近く。」

 谷口が答えると、川口は急発進した。


 「救急車よりも早く着いたら、この車で病院まで運ぶか?」

川口がいつもより荒い運転をしながら、谷口に問いかける。

 暗記した住所をナビに打ち込みながら、谷口が答える。

「自家用車だと、受け付けに時間を取られます。救急車の方が早い。」


 入力を終えた谷口は、スマホを取り出すと電話をかけた。

 三島に電話をするのだろう、と思っていたのだが、違っていた。

 「もしもし。……はい。谷口と言います。感染症の一之瀬先生をお願いします。……至急です。船長の谷口と言っていただければ。」

 船長の谷口で通じるのであれば、一之瀬先生は非科学研のOBなのだろう。

 電話が繋がるまで、少し間が有ったが、その間誰も口を開かなかった。


 「あ、先生。谷口です。……はい。これから、一人救急外来へ送ります。……ええ、話をしていた四人とは別人ですが、PAMの可能性が。……既に発熱しています。感染していたとすれば、一週間経っています。……はい、救急車です。よろしくお願いします。」


・・・・・・・・・・・・・・・


 三島の家の近くまで到達した時、救急車のサイレンが聞こえた。

 後ろから、急接近して来る。

 川口が車を道路脇に寄せ、道を空ける。

 追い抜かせた救急車の後を、追走する。


 救急車はワンルームマンションの前で止まり、救急隊員が建物に入って行く。

 救急車から少し間を空けて車を停めると、川口はハザードランプを点けて「行け、行け!」と怒鳴った。


 俺は車から飛び出して、救急車に走り寄り、待機している隊員に「上田君の所ですね?」と確認する。

 隊員が「友達?」と質問して来るのに大きく頷き、井村と谷口に向かって「間違いない!」と言う。


 マンションに入っていた隊員が、入り口まで戻って来て「ストレッチャー!」と叫ぶ。

 待機していた隊員がストレッチャーを組み立て始めたのを見て、谷口がエントランスに走る。

 「303号室の二人の友人です! 患者はアメーバ性の髄膜脳炎かも! 大学病院の一之瀬先生の所へ。」

 救急隊員に向かって、谷口が早口で説明する。


 303号室だな。

 エレベーターにはストレッチャーを乗せるから、階段を駆け上がる。


 303号室のドアを開けた瞬間、物凄い吐瀉物としゃぶつの臭いがした。

 「三島! 上田氏の様子は?!」

 廊下の先に、部屋の一部が見えていて、三島がペタンと床に座り込んで、壁に背中をもたれかけているのが分かる。

 俺の呼びかけに、彼女の反応は無い。


 「患者さんの友達?!」

 奥から男性の問いかけが聞こえた。救急隊員だろうか。

 「そうです! 上がります!」と返事をして、靴を脱ぐ。

 部屋へと進むと、隊員が一人、男性を抑え込んでいる。

 男性は、俺にとっては初めて見る顔だが、上田氏で間違い無いだろう。


 「手伝いますか?」と、俺の後ろに続いていた井村が、隊員に尋ねる。

 隊員は「いや、それより、この女性を。」と三島に向かって顔を振る。

 俺は三島の横にしゃがんで声を掛ける。「しっかりしろ、三島。」

 彼女は上田氏が出したものらしい吐瀉物を、頭から浴びていた。

 様子がおかしい。彼女の肩を、軽く揺さぶってみる。


 三島は、魂が抜けた様な目で俺の顔を眺め「呪いが……」と、つぶやいた。

 俺は一瞬、三島の言う呪いが、A沼の呪いを指しているのか、上田家の呪いを指しているのか、判断に迷ったが、「呪いじゃない!」と強い口調で断言した。

 井村も「これは、アメーバ性髄膜脳炎なんだ。原因さえ分かったら、病院で治る病気だ。特効薬がある。」と頼もしい声を出す。

 三島の目に少し光が戻った。


 「髄膜脳炎?」救急隊員が驚いた声を上げる。「なんで、また……。」

 「詳しい話は、下で待っている谷口という女性がします。」井村がハッタリを効かせて自信たっぷりに言う。「大学病院の救急処置室へお願いします。一之瀬先生がいらっしゃいますから。」

 井村は救急隊員に、というより三島に言って聞かせているのだ。安心しろ、気をしっかり持て、と。


 俺はキッチンでペーパータオルを見つけ、水で濡らして、三島の顔と頭を丁寧にぬぐった。

 三島が小さく、ありがと、と呟く。

 「いいって。服やスカートは自分で拭けるな?」と、残りのタオルを渡した。

 互いの家に着替えを常備しているカップルも居るのだろうが、上田氏と三島の関係だと、この部屋に三島の服は置いて無いだろう。


 ストレッチャーに上田氏が乗せられている間に、俺は床に散った吐瀉物を、部屋に有ったティッシュを使ってざっと始末し、プラスチック製のゴミ箱に入れると、ゴミ箱の中のビニール袋の口を結んだ。

 次亜塩素酸でも振り撒きたい処だが、そんな暇は無い。


 ストレッチャーが運び出されると、火の元が無い事を確認し、エアコンと明かりの電源を落としてから三島に施錠をさせる。

 「大丈夫だよ。じゃあ、行こうか。」

 三島が子供の様にコクンと頷く。

 井村は上田氏と一緒に下に降りていたようで、俺は三島の手を引いて、階段で下に向かった。


・・・・・・・・・・・・・・・


 夕方の色が濃くなり始めた救急車の周りには、人垣が出来ていたが、無責任な野次馬ではなく、心配顔のご近所さんの様だ。

 救急車には、ストレッチャーに固定された上田氏が運び込まれていて、婚約者として三島が同乗したが、彼女の様子が頼りないため、谷口と井村も付き添いに乗り込んだ。

 救急車が、サイレンを鳴らし、出発する。


 俺は川口の車に向かった。

 助手席に座ると、川口が「どうだった?」と口には出さず、目で訊ねてきた。

 「上田氏は、大量に吐いていたよ。谷口の話じゃ、アメーバ性髄膜脳炎の疑いがあるみたいだ。三島は上田氏のゲロを頭からかぶって、魂が抜けたみたいになってたけど、呪いを心配していた。」


 我ながら下手くそな説明だ、と思う。

 しかしヤツは、そんなんじゃ分からねぇよ、なんて事は言わなかった。


 川口は一つ頷くと、車をゆっくりと発進させた。

 サイレンに驚いて表に出てきている人影が多いから、救急車の直後を追走するのが危険だからなのだろう。行く先は分かっているから、無理にリスクを冒すことはない。


 床に座り込んでいた三島の、凍った様な表情を思い出し

「呪いじゃない、病気だって言って聞かせたら、多少はショックから回復したみたいだけど、恋人の酷い状態を目の当たりにしたんだから、無理も無い。……上田氏は、助かるのかな……。」

 髄膜脳炎と言う事は、脳にダメージを受けているのだ。

 部位や損傷範囲にもよるだろうが、助かっても後遺症が残るのかもしれない。

 リハビリで機能回復するのなら良いけれど。


 「病院に行く前に、お前の家に寄るから、服を換えて来い。オマエもヒドイ臭いがするよ。ゲロの始末をしたんだろう?」

 川口はそう言うと、車を俺のアパートの方へ向かわせ「慌てて病院へ向かっても、どうせ俺もお前も、何も出来ないしな。大きめのタオルを何枚かと、三島が着れるようなTシャツかジャージを取って来い。俺たちに出来るのは、せいぜいそんなトコだ。脱いだ服を入れれるように、ビニール袋も何枚か有った方がいいな。」


 川口は、努めて穏やかな声を出そうとしている様だった。


・・・・・・・・・・・・・・・


 同じ大学だとはいうものの、今まで病院地区に来た事は無かったから、外来者向け駐車場に車を停めてから、建物の中に入るのに、多少戸惑った。

 病院の正面玄関まで走ったのだが、閉まっている。

 中には煌々と明かりが点いているのに。


 「土曜のこんな時間だから、一般外来は終わってるんだ。」掲示してある病院地図を見ながら、川口が言う。「夜間・救急入り口ってとこへ、回ろう。」

 客待ちのタクシーが待機している横の歩道を、走る。

 着替えを入れた紙バッグが、バサバサとうるさく音をたてるので、胸にしっかりと抱える。


 『夜間・救急入り口』と、赤くライトが灯っている入り口を見つけた。

 中へ駆け込むと、受け付けがあり、警備員が座っている。

 受け付け横の椅子には、何人もの患者の家族らしい人が座っているが、三島や谷口の姿は無い。


 「救急搬送された上田君の友達です。」と、息を切らしながら学生証を見せる。

 警備員は頷いてから、名簿とプラスチックのプレートを取り出して

「床に引いてある赤のラインをたどって行ったら、救急処置室に着くから。でも、その前にこの名簿に名前とプレートナンバーを記入してね。」と処置室の場所を教えてくれた。


 胸にビジターのプレートを安全ピンで留め、床の赤いラインをたどる。

 院内で走るわけにはいかないから、足音を潜めた早足で移動する。

 何回か角を曲がった後、赤いラインの先の長い廊下の奥に、井村が腕を組んで長椅子に座っているを見つけた。


 近付くにつれ、井村の向こうに、谷口が三島を抱くようにして座っているのが分かった。

 「井村。」と声のトーンを下げて呼びかけると、こちらを向いた井村が、軽く片手を上げる。

 川口が「どんな具合だ?」と尋ねると、井村は「検査中だ。まず病気を確定しなけりゃならん。」と答える。


 俺は谷口に紙バッグを差し出し「三島さんの着替えを、見繕ってきた。俺のトレーナーとTシャツだけど。」

 谷口が頷いて受け取る。

 それを見た井村は「川口、着いて直ぐで悪いけど、三島さんを一旦、彼女の家まで連れて行って、シャワーと着替えをさせてやってもらえないか? タオルで拭いたとは言え、あのままじゃ可哀想だ。」

 「構わないけど、上田氏の付き添いは、いいのか?」

 井村は、三島に目をやってから「俺が残っているから、いいだろう。親御さんも、こっちへ向かっているし。……谷口さん、三島さんに付いて行っってくれると、彼女も心強いだろう。」

 谷口は「それが良いでしょうね。」と同意すると「三島さん、一度着替えに行きましょう。」と三島を促した。


 三島が井村と俺に頭を下げ、谷口が「せっかく持って来てくれたけど。」と紙バッグを返して寄こした。

 川口が「じゃあ、行ってくる。」と告げて、三人は俺が辿って来た赤いラインを、逆に夜間・救急入り口の方へと歩き去った。


・・・・・・・・・・・・・・・


 「着替え、せっかく持って来てくれたのに、悪かったな。」長い廊下にただ二人、取り残された様に並んで座っていると、井村が不意に謝ってきた。

 謝る事なんか、何も無いのに。

 「いや、いいんだ。お前の言うのが正解だよ。俺の服じゃダブダブだし。上田氏の親御さんは、何時頃に来れそうなんだ?」

 「10時を過ぎるんじゃないかな。三島はパニックになっていたから、親御さんに連絡出来ていなかったんだよ。病院に着いてから、電話番号を聞いて俺が上田家と三島家に連絡したんだ。常磐道の込み具合では11時を回るかもしれん。」


 「親御さんに説明する役回りになったのは、大変だっただろ? 悪かったな、押し付けた形になって。」

 井村は首を横に小さく振ると

「大変、ではなかったよ。救急搬送されたって言うと、親御さんは最初は驚いたが、次第に感情を押し殺したみたいに冷静になった。まるで、来るべき物が来たと、覚悟していたみたいだった。上田家、三島家両方とも。」


 「呪いを、信じているんだろうか?」

 井村は、ため息をついてから、頷くと

「あの様子じゃ、そうだとしか思えん。ただ、A沼の事は知らないだろうな。俺は髄膜脳炎で、としか言っていないから。親御さん達が思い浮かべたのは、上田の家に纏わる呪いだろう。」


 「でも、PAMには特効薬があるんだろう? お前、上田氏の家で救急隊員に向かって、自信満々で言ってたじゃないか。」

 俺はあの時、三島を落ち着かせる為の発言だろうと考えたのだが、今は藁にも縋る思いで井村に訊ねた。本当であってくれ、と。

 「特効薬はあるんだよ。PAMの原因菌であるネグレリア・フォーレリというアメーバを死滅させる抗真菌剤が。アムホテリシンBという薬だ。谷口さんからの受け売り情報だけど。」


 井村は俺に、落ち着けという様に、静かな口調で言葉を続けた。

 「上田氏の家に行く途中の車内で、谷口さんが大学病院の感染症の先生に電話してただろ? その時、『搬送する患者は、話をしていた四人とは別人』みたいな事を言っていたのを覚えているか?」

 「あ、ああ。そんな事、言ってたな。」

 「俺はそれを聞いて、感染症の医者が知っている病気だったら、原因菌も判明していて、何らかの対処法も有るんじゃないか、と考えていたんだ。谷口さんが予想したのが、本当にどうしようもない病気だったら、俺たちが実際に沼に向かったと分かった時点で、谷口さんはもっと強烈に反応していたはずだ。四人全員のスマホに、メールやら留守電や着信記録が数え切れないくらい、残っているほどに。」


 「なるほど。それで、薬はある、と。」

 井村はコクンと頷くと

「救急車の中で、谷口さんが救急隊員に説明していたのと、病院でお医者さんと彼女が話をしているのを聞いて、俺の想像というかハッタリが、的を外していないのが分かった時には、ホッとしたよ。」

 「日本で買える薬なのか? 希少な新薬とかではなくて。」

 「カンジダとか水虫の治療に使われているくらい、一般的な抗生剤だそうだ。それから、谷口さんが連絡していた感染症の一之瀬先生って、Iホテル廃墟探索が決まる時に、酔っ払いのOBを止めようとしてくれてた先輩だった。さっき処置室で会って驚いたよ。」


 俺は井村の言葉を聞いて、全身から緊張が抜けていくのを感じた。

 一般的な抗生剤。それならば一安心だろう。

 上田氏の部屋の惨状を見て、どうなる事かと思ったが。


 しかし井村は、一気に弛緩した俺の顔を見て

「気を抜くのは、まだ早い。PAMは正確には『原発性アメーバ性髄膜脳炎』と言うらしいんだが、脳内に侵入したアメーバが、脳を溶かして喰い荒らす病気なんだ。さっき言ってたネグレリア・フォーレリというアメーバが、その原因菌だ。ネグレリア属には他の種もあるんだが、病気を起こすのはフォーレリ種ただ一種だけなんだそうだ。」

 「だけどお前、そのネグレリア・フォーレリには、アムホテリシンBが効くんだろう?」

 俺の疑問に答えた井村の言葉は、非情なものだった。


 「確かに、アムホテリシンBはアメーバを殺す。でも、PAMを発症してしまえば、生存率は2%程度だ。」


 生存率2%……。

 リハビリがどうとか、後遺症がどうとか言う問題ではなかった。

 「生存率2%って……。」

 数字の持つ冷徹さが、胸にズシリと沈み込む。


 俺がようやく事態を把握したのを感じた井村は、説明を再開する。

 「感染しても、早めに手を打ってPAMにまで至らない様にすれば、滅茶苦茶に怖い菌という訳ではない。だけど、ネグレリア・フォーレリが感染しているという診断が、難しいんだ。CTで頭の断層撮影をしても、初期では異常が見当たらない。異常が見つかるようでは、既に手遅れなんだよ。脳が溶けているのが見えるわけだから。初期症状は風邪ひきみたいな感じらしいから、そもそも町医者じゃPAMの可能性なんか考えないし。」

 「じゃあ、どうやって、確認するんだよ?」

 「患者の容体が悪化して、ただの風邪じゃないという疑いを持った医師が、髄液を採って検査に回し、培養してアメーバが確認出来れば、PAMだと診断が付く。培養には何日か必要らしいが。」


 「お前、そんな事をしていたら……。」

 「間に合わない。だから、2%なんだよ。」


 「上田氏は、もう絶望なのか?」

 「いや、望みは有る。アムホテリシンBの投与が決まったから。CT撮ったり、インフルの検査とか、他の病気の可能性の追求も当然やるんだが、栄養剤と解熱剤の投与だけみたいな、様子見の時間が短縮されるからな。上田氏は問診で、先週A沼に潜った事を認めたよ。意思の疎通は、まだ出来ている。あの沼に行ったんじゃないかという、谷口さんの読み通りだった。彼が、もうじきCTを撮り終えて戻って来たら、ICUに入れられるんじゃないかな。」


 「三島は上田氏の部屋で、彼の嘔吐おうとを顔面に浴びたけど、感染は大丈夫か?」

 「PAMは人から人への感染は無い。それから、ネグレリア・フォーレリの入った水を飲んでも、アメーバは胃酸で死滅してしまうから問題無いらしい。淡水でしか生きられない菌なんだそうだ。だから、吐瀉物を浴びても大丈夫だろうね。PAMが起きるのはほとんど、鼻から菌が湧いた真水を吸い込んだ時に起こる感染らしいし。」

 「鼻からの感染?」

 「ネグレリア・フォーレリが大量増殖した真水を、鼻から吸い込むと、鼻の奥から脳へとアメーバが進むんだ。薬師堂の塩のお清め、特に塩水での鼻うがいは、意味が有ったんだよ。塩水でアメーバを殺すんだな。A沼の怪異は、病原性アメーバによる感染症で、塩のお清めは、過去の経験による予防策だった、と言う事だろう。阪本事件も含めて、全部が全部それが真相なのかどうかは判らないけれど。」


 「ネグレリア・フォーレリってアメーバは、地域限定の病原菌なのか? A沼には、そいつが潜んでいるのは間違いないのか?」

 俺は炎上した掲示板の住民みたいに、急激に腹を立てていた。

 塩で殺せるのなら、スーパーで塩を買いあさって、A沼を塩漬けにしてやる。

 塩だけじゃ生ぬるい。漂白剤と灯油もぶち込んで、死滅させてやる、と。


 俺の逆上を察知したらしく、井村は俺の腹に軽くジャブを打ち込んでから

「A沼に、塩を投げ込もうと思っても、無駄だぞ? ネグレリア・フォーレリは、淡水だったら、どこにでも居る菌らしいから。」

 どこにでも、いる?

 

 俺は、驚きが顔に出易い質らしい。今日は三島にも「驚いた顔ばかりしている。」と言われたんだった。もう、遠い昔の記憶の様な気がするけれど。

 「どこにでもいるんだ。」と井村は頷いて、「あるいは、どこにいてもおかしく無いんだ。本当にふざけた話だよな。自然の沼なんかだけじゃなく、塩素が抜けた汲み置き水にだって、増殖しても不思議はないんだそうだ。水道から出て来たばかりの水は、塩素消毒してあるから安全らしいけど。水道水を、塩素臭いって馬鹿にする、水にこだわるグルメ漫画なんか、どうするんだよ。」


 「じゃあ、俺が知らないだけで、毎年かなりの死人が出てるのか?」

 しかし、この疑問はハズレだった。

 井村は「どうも、そうじゃないみたいだな。俺も同じ事を考えたんだが。」と、結論を先に言ってから話を続けた。

 「どこにでもいるアメーバなのに、日本でPAMと確認された症例は、佐賀県の一件だけだ。患者さんは残念な事に亡くなったんだが、感染経路は不明という事らしい。亡くなった後に病理解剖が行われれば、脳の溶融という特徴的な症状が見つかるのだから、埋もれてしまった症例がたくさん有るとは考え難いだろ? あと外国でも、PAMになってしまった人物と同じ池で泳いでいた人達が、PAMを発症していない事からも、感染するのはかなりのレアケースで、運が悪かったとしか言いようがないみたいなんだ。」


 「どこで起こってもおかしくないなら、何でA沼には呪いの伝説が出来たんだろうな。過去何百年かの間に何例か、PAM事件に類する出来事が有ったにしろ。」

 「ネグレリア・フォーレリが増殖し易くなるには、水温が25度以上で、塩も酸・アルカリも含まず、アメーバの餌になる細菌が多く住んでなきゃならない。暑い夏の温くなった沼。たまたま条件が合致したんだろう。どこにでもいるとしても、何時もウヨウヨって訳ではないんだろうな。それにA沼には、加治神氏の非業の最期という、呪いの言い伝えの下地と言うか背景に成りそうな事件が起きてる。ある意味、判官びいきの日本人のツボを押しそうな事件だ。加治神氏の事が無ければ、ただの『通り悪魔』のもたらした不幸、という事になっていたのかもしれん。所詮しょせん呪いなんて、事故や天災と同じく運次第の、俺たちが生まれながらに参加しているロシアン・ルーレットの一つに、意味を持たせようとしただけにしか、過ぎないのかもな。」


 井村は、そう言うと語調をやや軽い感じに変え、お前が三島の着替えに持ってきたTシャツとジャージを貸せ、と言って来た。

 俺が紙袋を渡すと、ヤツは

「俺だけゲロ臭いままだからな。ちょっとトイレで着替えて来る。洗濯してから返すから。」

と長い廊下をトイレを探しに歩いて行った。


・・・・・・・・・・・・・・・


 井村が着替えから戻って少し後、急に騒がしくなったと思ったら、救急処置室に、新たな患者さんが運び込まれてくるのが見える。

 大きな病院だから、上田氏以外に急患が搬送されても不思議は無いのだろうが、病院にあまり縁の無い俺には、救急処置室の忙しさは意外だった。


 ストレッチャーに乗せられていたのは、まだ中学生くらいの少女で、血の気の引いた顔で、低くうめいている。

 看護師と救急隊員が慌ただしくやり取りを始めている中で、「刺された」と「通り魔」という二つの単語だけが、はっきりと聞き取れた。


 患者さんの家族らしい中年のご夫婦が、取り乱した様子で処置室の前にやってきた。

 医師が、ご夫婦に安心するよう声を掛け、キビキビと室内に入ってゆく。


 患者さんの友人だろうか、運び込まれた患者と同年配の少女が、警官に付き添われて歩いて来る。

 少女はTシャツに短パン姿で、ちょうど今日の谷口みたいな服装をしている。


 黒いストレート・ヘアと近眼鏡のせいか、一瞬遠目には、谷口に何かがあって戻って来たのかと、心臓が縮む思いがした。

 ただ、少女のTシャツが黒だったので、すぐに勘違いには気が付いた。

 今の俺は、誰の身にも起こり得る突発事項というヤツに、敏感に成り過ぎているのかも知れない。


 警官は少女に話しかけている様だが、少女は呆然としていて、何も答えない。


 井村は口をつぐみ、腕を組んで目を閉じた。

 俺たちは少し離れた所に座っているとはいえ、ささやき声で会話するのも、はばかられる様子だったからだ。


 俺は、井村が口にした「通り悪魔」という言葉と、救急隊員の話から漏れ聞こえた「通り魔」という言葉について、ボンヤリと考えていた。


 今でこそ「通り魔」とは無差別殺傷犯を指す言葉だが、本来は「通り悪魔」「通り者」「通り魔」は同じ怪異で、憑依した相手を狂乱させ刃傷沙汰を起こさせるあやかしの総称だ。

 外見は、老人のようであったり、武士のようであったり、鬼のようであったりと一定しないが、その気配を感じて気を強く持ったら、諦めて姿を消す。

 しかし、姿が消えても妖そのものが消滅したのではなく、他所へ向かっただけであり、必ず近隣で事が起こる。


 自分が助かったのは、他人を生贄に差し出したから。あるいは、他者の犠牲の上に自分の平穏が成り立っている。―そんな嫌な気分を思い起こさせる昔話だ。


 「通り悪魔」は、ぼんやりしている人間に憑依すると言う。

 俺は腹の底に力を入れて、気を引き締め直し、現代の「通り魔」は、もう逮捕されたのだろうか、と考えた。

 現代の「通り魔」は、歪んだ性欲が原因であったり、薬物が原因の錯乱であったり、愉快犯の犯行であったりと、「通り悪魔」たる妖の仕業ではないが、降って湧いた災難を受ける被害者の立場からしてみたら、ただ運が悪かったとしか、言い様が無い出来事であるのは変わらない。


 俺が日々を無事に過ごしているのは、またPAMに感染していないのは、今の処ただ運がいいだけ……そんな気がした。


・・・・・・・・・・・・・・・


 上田氏が戻ってきた。

 ストレッチャーに横たわったままだが、可動式ベッドの簡易版みたいな構造で、救急車のそれとは異なっている。この病院のものなのだろう。

 俺と井村は立ち上がったが、彼はそのまま、再び処置室へ運び込まれて行った。


 ストレッチャーの後ろに続いていた医師の一人が、処置室の看護師と少し会話を交わした後、井村に

「婚約者のかたは?」

と声を掛けた。

 見覚えのある人だ。この医師が一之瀬先生だろう。

 井村は直立不動で「全身、吐瀉物で汚れていたので、着替えに戻らせています。谷口が付き添っています。じきに戻って来ますが、急ぎなら私がうかがいます。」と答えた。


 先生は、了解という様に頷くと「じゃあ、彼女たちが戻って来たら、中に声を掛けて下さい。幸いな事にCTでは異常は確認出来ませんでした。ご家族は、何時くらいになりそうですか?」

 「常磐道しだいですが、11時くらいになるかも、しれません。」

 「そうですか。それでは婚約者のかたが、戻ってこられるまで、夜間入り口の待合スペースに移動された方が良いでしょう。ここは、その……取り込み中ですから。上田さんは、準備が整い次第ICUに入っていただく事になります。戻って来られたのが、ICUに移送された後でしたら、そちらの受け付けに向かって下さい。」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ