断片集
「春、手帳」
桜のつぼみを見つける
水を抱く
自分の眼が綺麗だと思う
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針の無い時計が 動き始める
落ちたときに
その時計から針が外れた
動いているのか、
知っているのは
針のない時計だけ
手にとり耳をあて
音を聞くこと。
わかるのは
ただ動いているか止まっているか、
ということだけ
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「子守歌」
眠っている人は
その人の姿を見ることはない。
春の暖かさにほほえみながら
冬の寒さにふるえながら
その顔は、一体誰に会うために
その口は、一体誰と話しをするために
その耳は、一体誰の話しを聞くために
けれども目を閉じたままに。
眠っている人は、
その人の姿を見ることはない。