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初投稿です。広くあたたかい心で読んでいただけたら嬉しいです。


※冒頭、家族の死に関する描写があります。

 

「……みんな、仲良くね……あり、がと……」

「っ、お、かあさ、ん……っ」


 その日私は病院の一室で永の眠りにつきました。享年四十一。

 なんだか最近体調よくないなー、もしや、そろそろ更年期? とか思っていたら、何とかという難病に罹ってました。

 原因も治療法も未解明、発症すると三年後生存率五パーセント以下という、もうね。終活する以外に何をしろと。


 でも、まあ。

 事故なんかで突然亡くなる方も多いわけで、色々始末や準備ができただけよかったのかなあと。


 ……ごめん、思えないわ。

 仕方ないんだけどね、分かってるけど、もう少し生きていたかったなあ。

 子どもたちの成人まで見たかった。

 旦那さんがリタイアしたら旅行しようって約束も、楽しみにしてた。

 両親どころか、祖母より先に逝くなんて親不孝ごめんなさい。


 ねえ、日本には八百万の神さまがいるんでしょう?

 私、毎年初詣もしたし毎日神棚のお水替えてたわよ。誰か一人くらいお願い事を聞いてくれないかしら。


 ねえ、神さまお願い。


 私の家族が、少し悲しんでくれた後は元気になりますように。

 みんなは長生きしますように。

 幸せと思える人生を歩めますように。


 だれか、神さまお願い……。







 って、私、死んだはずなんだけど。


 なんでしょう、ここ。

 私は今、ものすごい量の葉っぱに囲まれております。


 見渡す限りの空間が、柔らかい新緑色の葉っぱで埋め尽くされていて、でも実体は無いようで触れない。それがついているはずの枝も幹も無く、葉っぱのみ。

 先ほどからこの緑の空間に、ふかりふかりと浮かんで……どういうこと。死後に行くなら、三途の川でしょう?


「驚かせたかな、すまんのう」

「無事に連れてたか、よかったのう」

「……どちらさま?」


 はうっ、びっくりした!

 急に背後からとかヤメテ。叫ばなかったことに自分でも驚いたわ、息は一瞬止まったけど。

 ん? 息してる?

 え、あれ、私死んだのよね。死んでも息はするの?

 死んだことないから分からないわ、誰か先輩! 教えて!


「あー、いいかの。お前さんは死んどるよ、大丈夫」

「あまり気にせず自然体でいきんしゃい」


 死人の自然体ってなんでしょう。

 いい歳なのに頭をポンポンされました。あ、でもなんだか落ち着いたみたい。

 ようやくこの話してる人たちをちゃんと見ることができました。


 ……まあ……なんというか、布袋ほていさまとか、あの、七福神に出てくるおじいさんが洋風になったらこんなかなーっていう。


 お一方は見事なスキンヘッドで長い頭、長いお髭は真っ白です。まあ、ご立派な耳たぶ。触ってもいいですか?……ふわふわですぅ。そして綺麗な翠の瞳をしていらっしゃる。

 もうお一方はたいそうご立派な体格で、ええ、特にお腹周りが。

 ちょび髭が素敵ですね、本物かどうか確かめても? まあ残念。あ、こちらは碧眼なのですね。


 お二人ともギリシアっていうか、北欧っていうか、うん。向こうの神さまがお召しになってるような白い布をたっぷり使った服を纏っていらっしゃいます。

 こう、肩のあたりからギャザーがよって、腰の下で緩くとまってて。下はタフっとしたズボンにキラキラのサンダル風お履物。

 背の高さと同じほどの長い木の杖もお持ちですね。


「お前さんの願いを叶えよう思ってな」

「かわりに儂たちの願いもきいてもらおうと思ってな」

「「ここに呼んだんじゃよ」」


 ハモるんですか。仲良しですね。

 え、願い?


「お前さん、残された家族の幸いを願ったろう。それ、叶えてやろうぞ」

「そのかわり、ちょっとばかり手助けしてもらうぞい」


 確かに、先立つ不孝を無念に思いながら願いました。

 あの人たちが笑ってくれるなら、なんでもやりますよ、お母さんですもの。


「まあ断ってもやってもらうがの。それでじゃな、今度は他所の世界になるんじゃがもう一度生まれてもらおう」

「妹を助けてやってくれな」


 さらっと腹黒っぽいことも聞こえましたが。あの、もう少し詳しく。


「なに、お前さんが今度行くところは今までと大して変わらんよ。人がいて、動物がいて、魔物がいて」

「そうそう、海も山も果物もあるわい」


 いや、聞き捨てならない単語入ってたよ!?

 魔物って言ったよね? 河童とかツチノコじゃないよね、マモノ?

 え、今までもいたの、見たこと無いよ!


「お前さんの妹になる娘っ子がなあ、魔王に嫁いでしまうんじゃ」

「そうして生まれる子どもの力が強大でな。結局人間の世界をすっかり滅ぼして、さらに魔物の世界もほぼ壊滅させてしまうんじゃ」


 魔物発言スルーでいきなり壮大な話なんですが。

 人類を救え的な話なら私の手にあまるというか、そんな力はございません、無理です。私はただのパート主婦です。


「お前さんが相手するのは、魔物じゃなくて妹じゃよ、大丈夫。要は妹が魔王に嫁がなきゃよいのじゃ。」

「本来なら人が滅びようがどうしようが放っておくんじゃがな。今ちっとばかし困ったことになってての」


 そこから暫くおじいちゃんズのお話しを拝聴するに。


 ・そもそも、この世(?)はいろんな世界が存在して、それぞれバランスを取り合っている

 ・生き物の増減は時間をかければ戻るので基本放置

 ・だが最近、各所で固定種が突然減少、絶滅する事態が多発。原因調査中

 ・これ以上は、最悪全ての世界が崩壊してしまう惧れがある


「まあ、崩壊するならするでそれも世界の意思じゃ、仕方ない。でもなあ、永いながーい間ずっと観てきたもんで、ちっとばかし惜しくなってな」

「というわけで、少しだけ介入することにしたんじゃ」

「しかし儂らは観察者じゃからの、直接は手を出せないのでな。元凶の魔王やなんかはどうにもできんのじゃよ」

「隙間を見つけて一人送り込むのがせいぜいじゃ。それをお前さんに頼みたい」


 要するに、バタフライ効果を狙っているということですか……それにしても責任重大!

 ほかに適任者はいなかったのでしょうかっ?


「まあ、たまたまじゃ。いろーんな条件に合う魂を集めて釣り針を入れたら、お前さんが引っかかったんじゃ。これも縁だと思って諦めい」

「考えすぎると良くないからの、余計な記憶は持ち越さないから安心おし。感情というか、お前さんのその考え方は残しておくでな、そのままで生きたらそれでええ。実際、儂らはそれ以上の干渉はできんのじゃ」

「ダメじゃったらいよいよ諦めるから、気にするでないぞ」


 出会い頭の「無事に()()()()か」って「釣れてた」だったの!? えーなにそれ。

 これから行く世界はお前さんのいたとこより少しばかり遅れておるからの、電子レンジの記憶なぞあっても邪魔じゃろう消しといちゃる――って、え、ちょっと、お姿が消えてきてるんですけど!


 ん、消えかかってるの私?

 多少の加護って何?

 ちょっと待っていい笑顔で手を振らないでっ!

 まだ心の準備がっ――




 うそー……どうしよう。


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悪堕ち姫書影
アマゾナイトノベルズ/イラスト:セカイメグル先生

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