フタタビ
神々《みわしの》神々《なたる》。
単に自分が神様であるアピールをしたいがために『神』の字ばかりをならべてつくった偽名。
そんなもので地上に降りてきたとある神様は毒殺されていた。
なぜか
それはこの自称神様が人に対して悪戯をするのが好きだったというのが原因だ。
単純に相手が悪かったと言える。
相手は皆川零次という、以前誰かさんのせいで異世界転移を経験した青年だ。
言葉巧みに相手を話しに乗せ、金をだまし取りつつ家に上がり込んでしばらくの財布代わり兼食料庫にした……つもりだった。
※
発見数時間前。
「神と言えど人に身なれば弱いもの。毒とかそういうもんが効いてしまうんだから」
皆川零次の目の前には、スタイル抜群パツキン爆乳の明らかに外国人のお姉さんがピクピクしながら倒れていた。
わっっっっかりやすい手口だった。
知り合いから電話で「なんか変な神が降りてきているから気をつけろ」と言われていたこともあり、すぐに思い至った。
カフェでブラックコーヒー片手に甘々なパンケーキを食べているところに、突然流暢な日本語を使い日本名を名乗る明らかに外国人が話しかけてきたのだ。
それもわざとらしく胸元を強調したり、わざとらしくミニスカートで足を組んだりして。
一発で不審者であり、美人局的なアレであると悟った皆川は、引っ掛かるフリをして同居に。そして毒だ。
電気ポットのそこにゼラチンで固めた毒入りキューブ(小さすぎて気付けない)を入れて毎日毎日毎日……。
メッキ関係や劇物系の資格は多数所持して、そういうこともやっているためちょこっと誤魔化して入手するのは簡単だった。
「き、さま。神を何だと思っている……!」
「何って? 人を勝手に異世界に放り込んではいさようなら、とかこうこうこういう力を上げるからハーレムでもなんでもやって楽しませろ、とか最初から助言し続けるふりをして最後は自分が助かるために最愛の人を死に導く、とか七個のボール集めたら願いを叶えてくれるけど願いが言われるまで帰れない、とか人を不幸のどん底に突き落として楽しむ、とか」
「もういい! 貴様とことん神を舐めとるな」
「あぁん? 異世界送りにしたクソ神をぶん殴って消滅させたことがあるやつにそれ言うか?」
皆川は偽神の目の前にしゃがみ、髪を鷲掴みにして顔を上げさせる。
「ぐぎ、貴様っ!」
「どうせその体も魔力とかいう訳分からんエネルギーでできてるんだろ? んで死んだら消失するっていう。おめーは戸籍も何もないから死んだところで誰も捜索願を出したりしない、そのうえ存在しない人物でありここに入った時の録画映像は完全に差し替え済み。分かるよなぁ? 仲間呼んで輪姦されないだけよかったと思えよ」
異世界送りや神、天使というモノが大嫌いな青年は、偽神に――――