第5話 悪印象
「もう!何なのあの子!?」
そう堰を切って叫んだのは葉桜小春だ。
放課後、予定通りに駅前の喫茶店に行き、席に着いた途端に開口一番、彼女はそう愚痴をこぼしたのだった。
「もうちょっとマシな対応出来ないのかしら!?周りの人の評価とか気にならないわけ!?」
「分かったから、な、もう少し落ち着けって。お前も少しは周りの目を気にしよう」
「え? あっ…」
自分が周りの客の目線を集めてしまっていることに気づき、小春は恥ずかしそうに目線を下に向けた。
けれど、俺も小春をなだめながら考えていた。
なぜ深月さんはあそこまで周囲を遠ざけるのか。
見ていて苛々する、というのは一体どんな意味なのだろうか。
何か理由があるのでは―
「何か理由があるんじゃないか、とか考えてないでしょうね、純人」
「よ、よく分かったな…。 まあ、少しは考えたけど…」
「あんたは善人過ぎんのよ。あの子はきっと、都会から田舎に引っ越してきたかなんかで周りを見下してるんだわ。純人が気を遣ってやる必要なんて全く無いの。ほら仁義、あんたも何か言ってやんなさいよ」
「俺も同意見だよ。考え過ぎだろ、純人。それより勉強始めようぜ、な」
「そうね。今はテスト勉強の方がよっぽど大事!前回悪かったから今回で挽回するのよ!」
2人からそう言われ、俺も考えるのはそこまでにした。
「それはそうと、また勝負するのか?お前ら」
「ええ、勿論よ!今から負けた時の言い訳、考えときなさいよ!」
「いや、1度でも勝ってから言えよ」
こいつらは中学一年からずっとテストの点数で競ってる。結果は仁義の全勝だが。
ちなみに、これは中学三年の時の俺と小春のやり取り。
「何で1度も勝てないのにそこまで仁義と張り合うんだ?」
「そこにあいつがいるからよ」
…俺はそれから、聞くのをやめた。
「俺は別にやめても良いんだけどな」
「なっ!? そう余裕ぶっていられるのも今のうちよ!負けてから泣いたって知らないんだから!」
「いつもどこから湧いてくるんだよ、その自信…。自慢じゃねぇが20位以上違うんだぞ…」
二人の学年順位を明かすと、仁義はいつも70~80位、小春は90~100位である。仁義が呆れるのも無理はない。
まあ、物事を直感で捉えるタイプだからな。
「何か失礼なこと考えてない?純人」
だから何で分かるんだよ。
そんなやり取りを終え、ようやく勉強に集中し出した頃、粉雪がやって来た。
「ごめんね、遅れちゃって」
「別に気にしなくてもいいのよ、粉雪。遅れたところで誰も困らないし、怒るわけでもないんだから。そうでしょ、純人?」
そう言って、意味ありげな目線を向けながら俺に同意を求めてくる小春。
たまにこいつは何を考えているのか分からない時があるんだよな…。
「ああ、全然大丈夫だ。心配すんな」
「そっか。…良かった」
小春が大丈夫だと言った時も申し訳なさそうにしていた粉雪だったが、俺がそう言うと、安心したような顔をして席に着いた。
「ところで粉雪、深月さんについてどう思う?」
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