第3話 儚げな転校生
チャイムが鳴り、生徒が席に着く。
しばらくして、担任が教室に入ってきた。
「ういーっす。今日は新しくこのクラスに来た転校生を紹介すんぞー。入れー」
気だるげな声に促されて、一人の女の子が入ってきた。
パッと見てまず目を惹くのは、雪のように白い肌。それが、見る者に儚げな印象を与える。
触れるだけで崩れてしまいそうなガラス細工。彼女を一言で言い表すならそんな感じだ。
男子の半数以上が、その儚げな雰囲気に見惚れていた。
「んじゃ自己紹介なー」
超が付くほど気だるげな声だった。
いつも思うけど、こいつ教師失格だろ。
「深月匁です。よろしくお願いします」
まるで、全てに対して無関心。ガラス細工のようなその印象に対してそんな意志の強そうな眼と声をしていたことが意外だった。
「お前の席あそこなー。あの窓際の後ろから2番目のとこー」
「はい」
素っ気なくそう返し、自分の席に向かう。俺の隣の席だった。
すると、その席のすぐ後ろだった小春が気さくな調子で話しかけた。
「よろしくね深月さん。あたしは葉桜小春。小春、って呼んで」
「……………よろしく」
彼女は小春を一瞥した後、素っ気なくそう言い放って席に着いた。
小春は更に話しかける。
「あなたのこと、匁、って呼んでも良いかしら?」
「ご自由に」
まるで、小春のことが迷惑でしかないような態度をとる彼女に、最初は見惚れていた男子達も少し失望しているようだった。しかし、そこで小春が苛立った声を出すことも、周りが冷たい目線を向けることも無かった。
きっと深月さんは緊張しているのだろうと。2、3日も経てば、気さくに話す友達も出来て、クラスに馴染むのだろうと。
誰もがそう思っていたと思う。
そして、ちょっとした事件があったのはその日の放課後だった。
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