第2話 いつも通りの風景
朝霧高校。
それが、俺達の通う学校の名だ。
1学年およそ140人。
周りを山や田畑で囲われている。
そんな田舎だからか、近隣の3つの中学からそのまま進学する人がほとんどで、学年の3分の1程度は知り合いだ。
学校に着いて、玄関から中へ。下駄箱に靴を脱いだ後、右に曲がって職員室前の階段を上る。
2階に上がり右から3つめの教室が2年3組の教室だ。
教室に着くと、何やら言い争っている男女が目についた。
「だーかーらぁ、ソースに決まってんじゃん!」
「何言ってんだよ。醤油以外ありえねぇだろ!」
一人はいわゆるスポーツ男子。少し周りの人よりも黒くやけた肌と、全身のしまった筋肉が特に目立つ。
制服は着崩してはいないのだが、入学時から買い換えてないらしく、若干肩まわりがきつそうだ。
身長はおそらく俺と同じ位だろう。
もう一人は、長めの茶髪を後ろでポニーテールで1つにまとめている。
こちらもスポーツ女子といった感じで、見る者に活発な印象を与える。
身長は俺よりも少し低く、粉雪よりも少し高い。だが粉雪は女子でもかなり小さい方なので、女子の中では平均位なのではないだろうか。
「お前ら、いつもいつもよく飽きないな」
「お、よう純人、粉雪。この女、また意味不明なことを言ってやがんだよ」
「おはよう、お二人さん。わけ分かんないのはこいつの方だから」
「お前ら相変わらず仲良しだな」
「「仲良くない!」」
…そういう所を言っているんだが。
「で、今日の話題は?」
大体予想はついているけれど。
「目玉焼きに何をかけるか」
予想通りだった。
「お前らは何をかけるんだ?やっぱり醤油だよな?」
「当然ソースよね?」
まるで俺達が同意した方が勝ちだと言わんばかりだ。
俺は勿論、
「軽く塩を振って食べる」
「私も同じかな」
俺と粉雪がそう言うと、2人から同時に「何言ってんだコイツら」とでも言いたげな目を向けられた。
「そんなん聞いたこともねぇよ… 美味いのか、それ?味薄くね?」
「普通に美味いぞ。っていうか、小さい頃からこれだから変って言われてもな」
「粉雪は?粉雪も小さい頃から塩で食べてたの?」
「うん。小学生の頃、純人の家で一緒に朝ごはん食べたことがあって、その時に食べてから私も塩で食べてる」
「やっぱりきっかけは純人か… 」
今度は呆れたような目を向けられた。
こんな感じのやり取りが、このクラスの日常的な風景だ。ほとんど毎朝この繰り返し。もはやルーティンと言ってもいい。
彼ら、入塚仁義と葉桜小春は俺達の小学校からの同級生だ。小学生だった頃からいつも4人で遊んでいる。この2人は毎朝のように騒いでいるけれど、別に仲が悪いわけではなく、似た者同士がゆえのコミュニケーションの一種、といった所だろう。
「ところで純人、夏休みどうする?」
「去年と同じ感じでいいんじゃないか?早めに4人揃って宿題を終わらせて、後半に余裕持たせようぜ」
「あたしは賛成」
「私も」
「俺もだ」
「じゃあ決まりだな」
その時、チャイムが鳴って、今日の雑談もお開きとなった。
補足説明しますと、
粉雪の一人称…私
小春の一人称…あたし
で区別しようと思っております。
読んでいただきありがとうございます。
今後も宜しくお願い致します。
2016/02/12 13:16 修正