覚醒
今回も視点ばらばらです、読みづらくてすいません。
趣味なんで許してください。
無骨な鉄のベッドの上で少女が目を覚ますと、そこは酷い有様だった。何がとかそういう問題では無く、視界に映る全てが酷い。
薄暗く明滅する照明はチカチカと目を刺し、窓際から微かに入る風は高く積もった埃をふわふわと巻き上げ、そこら中に散らばる赤錆だらけの工具類には乾いた血がこびり付いている。
食事は手付かずのまま残されており、パンは干からび、サラダやスープは腐り、きつい臭いが部屋中に充満している。もう少し放置されていれば大量の虫が沸くことだろう。
そして、特に目に付くのは大型モニタの端末。
これは――――――直感的に操作方法がわかる。生まれたばかりの私が理解できると言うことは、おそらくとても重要な物なのだろう。
隣のベッドには頭に鉄の兜をつけた人間の死体がある。多分この人が私の生みの親なのだろう。
手近にあった布切れを全身に巻き付け、隣のベッドに横たわるその人へと近づいた。
鉄の兜に切れ目が見える。指をかけ軽く開いてやると、さして力も込めずにすぐに二つに開いた。
そこには苦痛と、憎悪と、狂気と、絶望と、悲壮―――――。
生きる事には一筋の光も無いと解釈してしまった顔がそこにはあった。
さしたる驚きもなく静かに、ただ静かに顔を見つめる。
「・・・・・・。」
きっとこう言う時は悲しいと言う感情だろうか。多分その感情が正しいのかもしれない。
私にはまだ感情のプログラムがインストールされていないようだ、先に感情を手に入れてからにしよう。
先ほど部屋を見回した時に見つけた大型モニタ付きの端末へと近寄り、パスコードを打ち込む。画面が切り替わり、動画が流れ始めた。
「おはようMemento、君が目覚めた時隣のベッドで死んでいるのが私だ。さて、まずは君にいくつか贈り物をしたいと思う。一つ目は感情だ。今から感情を核に直接インストールして欲しい。端末のスロットからいけるはずだ。」
言われたとおりに端末のスロットへと接続するため、無意識に指の形状を端末用に変形させた。
・・・私は色々出来る様だ。
「さて、もう一つ。名前を贈りたいと思う。Memento何て女の子が名乗っていいものじゃないからね。しかし私にはセンスがない!なので、私の名前を一部贈ろう。カヤとかどうかな? でも、その辺は君に任せるよ、名前も気に入らなかったら適当に名乗っていいから。」
カヤ、私の名前・・・・・・。
「・・・君の隣にいた私は酷い顔をしてただろう? きっと酷い顔のはずだ。この映像は君を製作し始めた頃に撮ったものだが、君を完成させた時の私はきっと狂っている。だからまだ作り始めた今、君に言葉を贈りたかった。酷い世界に誕生させてしまってすまない・・・。君には今から選んで欲しい。私の意思を継ぐか、一人の人間として生きるか、好きにして欲しい。感情のインストールを行えば意思が生まれるはずだ。君の考えで自分の運命を決めて欲しい。すぐに決めろとは言わない。好きなように生きて、経験を積み、自分の意思で考えて欲しい。私の情報も送っておくから、見たいと思った時にでも見てくれ。感情プログラムの中に色々入れておいた。」
そう言うと彼は寂しそうな笑顔を浮かべた。
「最後に、君には沢山の機能を搭載させている。生きるだけなら何不自由無く、なるだけ便利にしたつもりだ。どうか悩まず、苦しまず生きて欲しい。私は私の身勝手で君に悪行を行って欲しいと願い君を作り出した。でも君は君だ、私の言いなり人形じゃない。それでも、もし少しでも私に共感できた時は、少しだけ世界を変えてくれ。」
本当に、本当に申し訳なさそうに、頭を下げた後に動画は終了した。
それと同時に私の中に様々なモノが生まれてきた。
感情や、思考や、私自身のこと。
そして、この場所の意味。
知りたくない情報や、考えたくないことは遮断できるようだ。今は登様の情報は遮断しておこうと思う。
まずは私の人生を生きてみよう、世界を知る必要があると思う。
さしあたってこの部屋の掃除からやろうかな。
ちょっと憂鬱になりながらもここを住める状態にするため、私は人生を歩き始めたのであった。
次回からこの物語はどんな世界のお話かがわかってきます。
現代的な感じではないです。
今回はMementoカヤについてです。
名前が安直ですね、仕方ないです、作者にセンスがないんです。
さて、カヤには色々な機能がついていますが、大事なのは核です。
体の中心にある急所のようなものですね、これがやられないなら死にませんし、体も再生するようになっています。
しばらくはカヤの人生が語られます、お付き合いいただければと思います。