8話crazy lovers
辛口でいいのでもし、もしよろしかったら評価していただけたら
うれしいです
よろしくお願いします
今回はちょっと長いです
とうとう退院の日になった
その日の朝ごはんであるオートミールのようなもの(味気のない大変くそまずい病院食らしい病院食)を食べたのち短い間だったが
お世話になった病院(正式名称タークッシュ医療センターというらしい)に別れを告げ
初めての外に足を踏み出す
メイグは最後まで名残惜しそうな表情を浮かべていた
「もうちょっといてもいいんだよ?」
その言葉はもっと検査をして異世界からの訪問者であることを突き止めたいという心から
きているのだと最初からわかっていた
正直うっとうしいのとこれ以上あの病院にいたくないというのが本音だった
患者もスタッフも廊下などを歩くたびに目線を痛々しいほどに感じるのだ
まるで爆弾物でもみているがごとく居心地悪く、心が安らぐことがなかった
一刻も早く出たかったのだ
「親戚いること思い出したので…、今までありがとうございました」
出た瞬間新鮮な空気で肺をみたした
病院の匂いは昔からあまり好きではない、
振り返って病院を眺めると
かなり年代物の病院なのかところどころぼろっちい
錆も浮いている
病院というのは白を基調にしたカラーリングが基本だという印象が強かったのだが
この病院は、いや異世界だからなのかやけに配管やら鉄板やらがむき出しになっており
とちらかというと何かの生産工場?と思わずにはいられなかった
背を向けゆっくり歩き始めた
地面は灰色の石畳で大きな通りになっているのがわかった
幅は50メートルほどあるだろうか
いろんな店と人々がごちゃごちゃとひしめき合っている
いかつくて怖そうな人が声を張り上げ何かのお店の宣伝をしている
見ていてこの混雑具合が暑苦しく病院の病室に帰りたくなった
比較的日差しは強いほうだと思うが暖かい程度だろう
気候的には一番いいと思う
メイグやその他スタッフからの選別としてちょっとしたパンや飲み物着替えなどが入ったリュックをもらった
そして唯一自分の持ち物であり元の世界のものである母からの腕時計、着てきたパジャマはボロボロになっておりここに搬送されたときに捨てられたらしい
今初めて気づいた
もらった紙に目を通そうとしのだが書いてある文字が汚すぎて読めない
あの時なぜもらった瞬間に見ようとしなかったのか自分に失望した
癖が強すぎてはや外国語なのではないか?と疑問に思った
ん?
あ、ここ異世界だ
ていうことは汚すぎるんじゃなくて違う文字ってことなのかな?ん?いやでもなんかおかしくね?
言葉は通じてるよな?だって普通にしゃべっていたし
言葉は通じて文字はわからない?わけわかんないな、
リクは眉を寄せた、だがそれどころじゃない、紙に書いてある内容が分からないようじゃ
まずレイジ・テラナスとか名乗ったあの人物の職場にたどり着くことができない
さてどうしたものか、死活問題だ
病院に戻るか?いやそんな情けない話はないだろう
いまさらどんな顔をして戻ればいいのだ
恥ずかしすぎて死にたくなるだろう
ここはワイズ通りというらしい
さっき歩いていたおじいさんに紙を見せて事情を話したら
「なんだい、兄ちゃん記憶喪失なのかい、それは気の毒だのぉ」
といっていろいろ教えてくれた
言っていることは半分もわからなかったけど少しだけわかった部分はあった
まずここは要塞都市と呼ばれているが円状の敷地内は上空で見るときれいにまるでケーキを八等分カットしたように
円周側から大きな本道が中心のアトラス城に伸びておりその本道を基準に地区がある
ここは第七区であり通称{粋と迷路のスラム街}と言われているが決して無法というわけではなく現にスリや殺人はほかの地区より低い
だがそういわれる理由としては基本地面と統一された灰色の建物が多い中実にさまざまで無秩序というほどの建物があるからだそうだ
そしてほかの地区よりも本道の関係で土地の面積が広い、入ったら元の道に戻ることは不可能と言われるほどだそうだ
この第七地区は要塞都市全体から見て南に位置しておりこのワイズ通りは右側
カットケーキの形状のため城に向かえば必然的に面積は狭くなり遠ざかれば広がり最終的にあの灰色の塀に行きつく
あの塀は大昔の大戦の名残であり、この都市が要塞都市と呼ばれるのもそれが由縁だとか
実はこの要塞都市は謎が多く、まだ昔の古代兵器や機械、俗にいうオーバーテクノロジーが城や町の奥深くで眠っているらしい
この前も子供たちが遊んでいたら誤って石壁の一つの小さなレンガを押し、古びた部屋が壁から現れて、大騒ぎになったらしい
中にはみたこともない兵器らしきもの、大昔の技術書などが発見された
なぜかこの都市の歴史書には大戦と現代の間に大きな空欄があり、知識や過去が現代人に継承されず今の人たちは若干とまどっているらしい
そして
あの城は、アトラス城は、今は塀の外部の世界を闊歩しているヤジュウクと呼ばれる人類とは違う生命サイクルを持ち
人を襲う生物の討伐または外部からの敵性攻撃に対する防衛、迎撃、撃滅、を主に目的、命を懸け生業としている人たちが集う場所らしい
そこまできておじいさんが
「むかしはのぉ、わしはこれでもグループを率いておってのぉ、幾千のヤジュウクを狩ったものじゃ」
といろいろ話し始め、ちゃんと相槌を打ち聞いていたが、一生懸命きいてるふりをしているのを見て
おじいさんに火が入り、話がヒートアップしていく、
「―ある作戦のとき小山のデカさのヤジュウクがおってのう、いやーあのときはわしがいなかったらもうだめじゃったな、
わしの愛機のブラストカノンで顔面を吹っ飛ばしてやった―」
長い、長すぎる1秒にも一時間にも感じる
「―そのとき後方で指揮を執っていたばあさんにプロポーズしたんじゃ
そのころのばあさんは花も恥らむ美しさでなぁ、思い出すと―」
リクは比較的我慢強い、だが限度ってものがある
「―ということでわしは熱くなってそのときの討伐隊隊長を殴ってしまってのう、それがあって以来今だにあいつの顔は曲がっておっての―」
爺さんの話が長い長い長い長いいいいい!!あれ?もしかしてもうお昼?おなか減ってきたと思いリュックから
パンを取り出しもさもさと咀嚼し水で流し込む、なんかもう眠くなってきた、意識がもうろうとしている
「―わしはしかたなく三帝の一人であるフェンリルとレディファイツしたんじゃが三日三晩戦い続け最後の最後に引き分けにな―」
気のせいかな?きのせいじゃねぇ、日が暮れてきてきた、ちょっとこれはまずい、道を教えてくれた親切なおじいさんと思い、
いつかは話が折れると信じ付き合ってきたがこれはさすがにまずい、ぜんぜん笑えない、
病院から出てまだ百歩も歩いていない、やっぱ笑えてくる
街灯もちらほら明かりが灯っている
苦渋の決断によりリクは必殺技を使った
すなわち
クラウチングスタートからのダッシュ
ゆっくりとしゃがみ込み全体重を両手で支えるようにして…
実はリクは逃げ足は速い
体育のときとかのタイムを測るときはなぜか遅くなってしまうが
後ろから追われていると思うと生存本能が刺激されるのか
なかなかの速さになる
おじいさんに最初に教えてもらって紙の裏側に書いた道筋を頼りにストリートを走り抜ける
小道、裏道、を複雑に通り抜け
「まて小僧ぉ、まだ話は終わっておらぬぞぉぉ」
さっきの爺が怒号の勢いで追いかけてくる
「ひいいいいいいいいいいいい!!!!!!」
怖いなにあの爺さん!!何あの速さ!!化けものじゃねーか!!
リクは奥歯をガチガチ言わせライオンに追われるトムソンガゼル(小柄のシカ、アフリカに生息、よくライオンに食べられちゃう)のごとく
逃げる、逃げる逃げる逃げる逃げる
水の入った桶を蹴っ飛ばしゴミ箱を倒し裏路地に周り時は屋根を飛び越え時には爺さんにそこらへんのものを投げつけ
逃走劇はどれくらい経っただろうか
本当に恐ろしかった
なんとか巻いたらしい
リクは汗を垂らしみぞおちを押さえ息も絶え絶え
やっと落ち着き
腕時計を確認すると夜の12時を指していた(不思議なのか当たり前なのかこっちの世界でも時間はあっているらしい)
近くの街灯の下に駆け寄りメモをした道を記す紙を確認しようと広げる
だが
走り回った結果泥水を被ってしまったのか紙に書かれている文字がぼやけてたいへん読みづらい
しかもさっきのあのおそろしい爺さんが現れるかもしれないと思うと背筋が凍る
なんとか紙の内容を読み取り着いたのだが
行き止まりだった
右も左も前も灰色の石造りの壁
もう限界だった
半日以上立ったまま話を聞き、二時間以上全力疾走
体力はなんかついたような気がするがそれでもかなりのハードスケジュールに体はひめいを上げている
壁に背中を付けてずりずりと座り込む
「つかれたよぉー、おなかすいたよぉー、喉乾いたぉー、シャワー浴びたい」
リクは情けない声をあげる
リュックの中の食料はとっくの昔に消えている
昼飯の時に食べていたらあの爺さんが
「なんだぁ?いいもんくってるじゃないか?」
そういわれたらおひとついかがと言わずにはいられないのがリクと呼ばれる弱い生き物の性
一瞬で無くなった、いったいその細いご老体のどこに吸収されていくのか研究して論文にまとめたいと思わざる負えないほどだった
リクは泣きたくなった
うなだれ地面をみて体育座りし、石畳の小さなレンガをいじっていた
そうしたら
左の壁から蝶番のおしゃれなドアが現れた
リクはあんぐりと口を開けた
そして何かいい匂いがしてくる
香ばしいようなクリーミーな不思議な匂い
フラリともう力が入らなかったはずの足で立ち上がる
口の中に唾がブワっと湧く
その匂いを辿ってそのドアを開く
チリンチリーン
喫茶店と思ったがバーらしい
お酒がカウンターの壁に並んでいる
マスターらしき人がグラスを磨いている
少ないが客もいるらしい
薄暗い店内を恐る恐る進む
マスターと目が合いこちらを顎でしゃくる
カウンターは一番端っこに客が一人いるだけだった
歩くたびに床板がキシキシと鳴る
テーブル席のほうにも何人かいるようだったがこちらに気づいているようだが気にしていないようだ
マスターの目の前のカウンター席に座った
「何かご注文はありますか?」
チョビ髭にベスト、エプロン、シャツを身に付けた50歳後半ぐらいの男性が静かにほほ笑む
「…すみません、外にいたらとてもいい匂いがして、全然お金もないのに入ってしまってすみません」
男性はちょっと驚いたような面白いような顔してちょっといなくなったと思うと
コトッとリクの前に一皿を置いた
「厚切りベーコンとコーンのグラタンです、初めて作ってみたのですが、味見してもらえませんか?」
「え、でもお金もってない…」
マスターは人差し指を口に添えて
「お代は結構ですよ、ただ感想をいただきたいのです」
やばい、目頭が熱くなったとリクはそのマスターが聖人に見えた
匙を手に取りおもむろにすくい口に含む
フゥッとつい息がこぼれてしまった、大胆にゴロゴロと切りそろえられた炙りベーコンは口の中で
燻製の香ばしさと肉汁をあふれさせ、コーンはプチプチと口の中ではじけその甘みは昔夏祭りの屋台で焼きトウモロコシを食べたのを思い出した
アルデンテのほどよく芯が残っているマカロニ、そのすべてを包み込む暖かくクリーミーなホワイトクリーム、
「…おいしい、」
つい口からこぼれてしまった
マスターはその言葉を聞いてニヤッと笑いグラスを磨く
「お客さんずいぶんお疲れのご様子ですが、今晩の宿とかはないんです?」
「いえ、実は今日住み込みで働かせてくれる仕事場にいこうと思ったのですが、その…」
「あー、初めてこの地区に来る人はみんな迷うんですよね、お客さんだけじゃないですよ、最初はみんなそうです
ちなみにその仕事場名前なんて言うんです?もしかしたら知ってるかもしれませんよ?」
「…えっと、クレイジーラバー?っていうんですけど…」
マスターはピタッとグラスを磨く手を止める
「…もしかしてリク・クライアンさん?」
「あ、はいそうです、……、え!?」
「いやあー運命っていうのもこうなると感じますよね、ようこそクレイジー・ラバーズへ!!」
いきなりの急展開にリクは動揺を隠せない
というのも店のお客だと思っていた人たちが全員こちらを向いた
「え?え!?、で、でもここバーですよね?バーで自分働くんですか?しかもお店の前の看板にはmoon spotって書いてあったんですけど」
「焦らずに落ち着いて、まずメンバーを紹介しましょうか、まぁいろいろあって今はほとんどそろってないんだけど
おーい、レイジ!例の新人のスタッフ!」
と携帯端末らしきものに呼びかけている
「ちょっと待ってね今レイジ呼ぶから、あいついつも携帯端末持ち歩いてないんだよなぁ」
というとマスターは店の裏へひっこむ
「へぇー君が新人か、よろしくね」
いつのまにか隣に人がいたカウンターの端っこにいたと記憶していたのだがいつの間にかいた
「僕もクレイジーラバーズの一員、みんな僕のことラインって呼んでるんだよねよろしくぅー」
フードを被って顔を隠しているが少年だろう、第一人称ぼくっていってるし、なんか生意気そうな
軽そうな第一印象だ間違いなく年下だろう
「まぁ、君は僕より年上でしょうが、このグループに入ったからには先輩なんだから何でも聞いて頂戴ね?」
ラインはふんぞり返って手を差し伸べる
「よろしくお願いします、いろいろお世話になります」
リクはちょっとこの少年が気に入った、昔これくらいの歳の従弟がいてよく遊んだものだった
そのころを思い出して懐かしくなった
少年と握手しているとテーブル席にいた人たちも来た
「おぉ、君が新人君かぁ、私はチカゲ、話はレイジから聞いているよ、これからよろしく、わからないことがあったらなんでもききな」
ボーイッシュな雰囲気を醸し出している
あまり手入れをせずに自然のままにしているのだろうかクセッ毛がある肩まである燃えるような赤髪、
髪とおそろいの深紅の目、肌はすこし焼いているのだろう、茶肌のお姉さんが笑いかけた
ホットパンツにTシャツはとても体のラインを如実に表していて、なんというか…、グットだった
もう一人は少女だった、強いて言うならばスレンダーというべきだろう、首筋付近できっぱりと切った髪は
真冬を想起させるような青、目は見るものを凍らせるような碧色、チカゲの後ろに隠れ顔だけをのぞかせている
恥ずかしがり屋らしい、青いマフラーを付けている
「すまんね、こいつは人見知りなんだよ、そのうち慣れるさ、さぁ、名前だけでも」
「……スーです…。」
スーは聞こえるか聞こえないかの声で顔を真っ赤にしてつぶやく
チカゲはその姿をみて「かわいいやつめ!」といってもだえ苦しみスーに抱き着いている
「他にもメンバーはたくさんいるんだけどね、みんないろいろ理由があってこれない状態の人もいるから出会ったときに挨拶して
みるがいいさ」
チカゲはスーをなでなでしながら言った
「おぉ!!きたかリク!!待ってたぞ!!ちょっとなんか遅くね!?まぁいいっか!来てくれたんだから!」
ドタドタという音が近づいてきたと思っていたらレイジがカウンターの扉から現れた
「ようこそ!!クレイジーラバーズへ!!さらにもう一度ようこそ!!あ、もうメンバーにはあいさつしたのかな?
オーケーオーケー、それならば話は早いねみんな仲良くするように、あれ?メンバー今日なんか少なくない?」
「メイトは情緒不安定で入院中、ロッキーは旅に出てるって言ったきり半年くらい帰ってない、あとは…」
チカゲが説明しようとしたらレイジが遮る
「あーもういい、もーいい、まったく久しぶりの新人なのに集まり悪いんだもんなぁ」
レイジがため息をついた、リクはグラタンを食べておなかを満たし実は睡魔が襲い掛かってきていた
それを見かねたのか
「レイジ、リクの部屋案内してあげなよ、リク今日結構クタクタな目にあってここまでたどり着いたみたいだよ?
まずは休ませたほうがいいんじゃない?記憶喪失だと何もかも新しい情報なんだから疲れやすいんだから」
チカゲがリクは涙を溜めあくびを押し殺したのを見て察した
「そうだな、今日はまずは休ませようか、リクこっちカモン」
レイジの言う通りにカウンターの隣の扉の中に入る
そこはちょっとした広い部屋になっておりリビングといったほうがいいのかソファやテレビ、冷蔵庫や台所娯楽関係のものがあった
「あ、ここは基本メンバーの談話室っていったほうがいいのかな?バーのほうでいるほうが多いけど、あ、ここの階段のぼるからね」
部屋の端にらせん階段がありのぼると二階があり扉がいくつかあった、その中の一つを選ぶと
「ここが君の部屋ねぇー」
開けてみるとなんとも居心地のよさそうな部屋が現れた
ベットはふかふか窓は夜景が見え壁や床は暖かそうな木目だ
「好きに使っていいよ、足りないのがあったら言って、まぁ最初は足りないのばっかだろうけど、慣れるものは慣れるさぁ、それじゃあ
ね、おやすみ」
というとレイジは去っていった
去っていったのを確認してリクは荷物を床に放り出し、服を適当に脱いでベットの中に倒れこんだ
顔をベットの中に埋め、フゥーと息を吐いた
体中の筋肉が力が抜けていくのを感じた
(今日はいろいろなことがったな、これから大変だろうけど、頑張らねば)
と声にならない声でつぶやく、もうおねむモードで声が出ていないことにも気づかない
(ただ、いきおいできちゃったけど、この仕事っていったい何なんだろう)
薄らいでいく意識の中かすかに疑問を浮かべ、そして消えていった
読んでいただきありがとうございます
もし、よろしければ評価していただけたら幸いです
次の話は来週土曜に投稿します