5話
もっとはやく書きたかったのです
前の話でブックマークしてくれた方ありがとうございます!
肌に突き刺さる寒さ
サングラスをしなければならないほど真っ白な雪に反射した日光
所々岩がむき出しの雪山の途中に山小屋のような建造物があった
そこにはバルコニーがあり一つだけ光の点が見える
否それは光の反射だった、双眼鏡レンズによるものだった
寝そべりながらその双眼鏡をのぞくもの
そしてわきの方で同じく寝そべってたばこをふかし、情報端末らしきものをいじっている二人がいた
この極寒の世界ゆえか彼らの来ている服は防寒のために全体的にがっちりとした形状となっている
いや…、それだけではないはずだ
「おい相棒、あの岩陰にいるやつ見えるか?」
相棒と呼ばれた男は情報端末から目を離し、その方角を俯瞰する
「あぁ?、あー……なにかいるな、見える」
「何に見えるよ」
眉間にしわを寄せ目を細めて
「双眼鏡かせ」
「あいよ」
相棒は双眼鏡をのぞいたが持ち主が変わったのが分かったのか自動的に倍率がもとにもどったため
顔をしかめながらつまみをいじる
今日は珍しく雪が降らず太陽も出ていたのでそれが見えたのは運が良かったのかもしれない
何かが、ゆっくりと歩いていている
移動しているため断続した岩陰のために途切れ途切れに見える
だがおかしい
ただの生物にしてはでかすぎる
白の体毛に黒の波打つような紋章が体中に浮き出ている、長いしっぽは白と黒の斑
堂々とした胴体に鋭いアーモンドの目、二本の琥珀色の太い牙
計り知れない筋力をもっているであろうくの字に曲がった後ろ足
相棒はゆっくりと双眼鏡から目を離し、双眼鏡の持ち主をみた
「あれさ、もしかしたらだけど、白虎かもしれない」
「は?何言ってんだよ、ありえないから、いやありえないから」
そういいながらも極寒であるはずなのに不自然なほど汗をかいている
「お、俺の見間違いだったかもな、新種の{ヤジュウク}がたまたまあの数十年前の{白い悪魔}
に似てるだけかもしんないしな、う、うん」
二人は顔を見合わせていたが目の端で何かが躍動してこちらへ来るのが分かった
いやでもあり得ないと思った
なぜなら二人のいる位置とあの白い生き物がいる距離は5キロ
しかもこちらは特殊な光学装置によって目では確認できない
そもそも一メートルだろうが見つかることはない、ありえないはずだった
熱も赤外線もシャットアウトだが
ものすごいスピードだ
明らかに常識を逸脱した速度
奴の後ろには雪の嵐が起こっている
一刻の猶予もなかった
二人はすぐさま行動を開始
ここは表向きは観測所
本当は対{ヤジュウク}撃滅用に作られた拠点
だがもう何年も彼らは活動が活発化しておらず
好戦的な{ヤジュウク}はほとんど狩り尽くした
ゆえにこういった施設は費用などの理由から人員を少なくしていった
そもそもヤジュウクを狩るための最新の設備がそろっているため
よほどのことがない限り余裕だった
異常なほどの貫通力があるのだがコルクショックは起きず赤ん坊でも撃つができ
50mmの鉄板に穴をあける機械銃、反重力場を駆使し、直線コースで最大音速に迫る速度をたたき出すウィングや、
ナノサイズで細胞レベルから破壊していく爆弾をもつAI搭載の無人兵器もある、人よりも利口なやつらだ
あらゆる敵にも対応し、確実に息の根を止める
だが今回は例外だ
この施設の中で唯一二人で操作しなければならない兵器がある
荷電粒子砲
片方がぎりぎりまで電力の調整をし
片方がぎりぎりまで弾道の計算をする
膨大な電力を食うため、維持費もかかり一発撃つとどこかしこで
負担がかかり修理が必要になる
そのためにいつの間にか使われなくなった兵器だった
点検はしていたので使えることはわかっていた
そもそもそれを使わずとも今までが基本装備で十分に対処できる数年の勤務だった
二人は完全にパニックに陥っていた
決まったキーを挿入せずにエラーを何回も起こしたり
同じ操作を二回繰り返したり
二人がなんとか準備を終え
照準レンズで外を確認したときはもう五百メートルのところでこちらを見ていた
こちらの様子を観察しているらしい
それもそうだ
前方に突如巨大な鉄の塊が駆動音をわめきちらし蒸気をあげ現れたのだから
砲塔は大木のように太く全体的に白でカラーリングされている
白い極寒の獣の王はただただこちらを眺める
体からは蒼い蒸気のようなものが立ち上っていた
その堂々とした振る舞いに二人は一瞬言葉を失った
だが
我に返る
「充填率460%!!機械の限界はとうに過ぎている!!もし相手が本物でもし倒せたら始末書たくさん書かねぇとなぁ!!」
「はっ!!俺は始末書なんて書かねぇよ!!お前が全部やれ!!」
「ふざけんな!!一体どれくらい書けばいいのか想像するだけで気絶しそうだ!!」
二人はどんどん荷電粒子砲が駆動して大きくなっていく振動と音の中であほみたいに笑った
「資料でしか見たことないやつが目の前に現れるとはいやー世の中すごいな!!」
「これでおれたちは有名人だ!!白虎を倒すんだからな!まぁ肉片も残らないから証拠もなくなっちまいそうだがなんとかなんだろ!!」
「照準OK!!奴の頭にセットしたぜ!五百メートルなんだどんなことしたって当たるに決まっている!!!」
「カウント省略ぶちかませ!!」
どちらがトリガーを引いたかはこの際どうでもよかった
大地の雪を一瞬にして蒸発させ空気を貫いていく光の巨大な柱
だが
やつに触れた瞬間消えていく
二人は今度こそ言葉を失う
ただただその光景を確認するしかない
何事もなかったかのように長い窪んだ道が白い獣の方まで続いていた
いつの間にか雲で覆われ、吹雪が起きていた
傍らに置いた情報端末からは確かに悪天候によるアラームがあがっている
不意に
トラがこちらを見た
そしてなぜかしゃがんだ
そしてその背中から
少年だろうか?
フードを被った人らしきものが降りた
トラと比較すればあまりに小さい
その少年はこちらを向き
フードの隙間から顔を覗かす
そしてにやりと笑ったような気がした
読みづらい中読破していただきありがとうございます
次は来週の金曜日までには出そうと思っております
ですがもし調子がよかったらそれよりもはやく出します
もしかしたら日曜日に出すかもしれないですが約束できません