猫の背骨
なんだか具合が悪くて寝込んでいた
黙っているのも気力が要ることだ
こうして寝ている時も
あちこちに溢れそうな言葉を
ぐっとこらえている
そこへ猫が近寄ってきてひと声鳴いた
痩せた猫が縁側から勝手に上がってきていた
私が首を傾けて猫を見るとまた鳴いた
猫の声だけで私は泣いた
なんだかありがたくて泣いた
痩せた猫一匹背骨を浮き上がらせて
私のそばで鳴いた
ただそれだけしか何もないような夜だった
月は静かにしていたし虫も眠っていた
この世の隅に有る私の部屋で
敷き詰められたしじまを取り払って
猫は何度も鳴いた