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歌声が新たな出会いを呼んだ
「歌、上手だね。」
突然、可愛らしい声が降ってきた。
顔を上げると、月明かりに照らされた小さな女性が一人。
ニコニコしていた。
この海で、人に出会ったのは、初めてだった。
もう何度も訪れているけれど、夏でも泳いでいるはいないし、砂浜もずっと綺麗に保たれたまま。
人には知られてない私だけの場所だと思っていた。
「私たち以外にこの場所を知ってる人がいるなんてね。」
彼女も、同じことを思っていたようだ。
「私たち…。」
彼女以外にも誰かがいるのだろうか。
でも、彼女以外に人の気配はない。
「そう、私たち。この近くにね、シェアハウスがあるの。」
彼女の指差した先には、確かに小さな明かりが見えた。
「男女5人で暮らしてるんだけどよかったら来てみない?」
彼女は、可愛らしく首を傾げる。
「えっ、でも…。」
「大丈夫だよ。みんな優しいから。」
相変わらずニコニコと笑って良い人そうではあるけれど、さっき出会ったばかりの人に付いていって良い気はしなかった。
「いや…。」
断ろう。そう思った。簡単に信用しちゃいけない。
「あ、そっか。知らない人には付いていかないって学校で習うもんね。自己紹介しなきゃ。」
私の心を読み取ったかのように、そう言って女性は
「垣内灯、25歳です。今は、絵本作家やってます。」
礼儀正しく頭を下げて「よろしくね。」と言った。




