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ここもサブタイなし

ここはどこだ?俺は眠い目をこすり周囲を見渡す。


「そうだった・・・」


そうだった。俺はゴブリンになってしまったことを思い出す。

この妙な世界に来て2日目だ。さすがに2日目ともなると周りを見渡す余裕がでてきた。


この洞穴はゴブリンたちの巣として生活しているようだ。1日目には全く気付かなかったが、周りにはボスゴブリンを含め17匹のゴブリンがいる。ボスゴブリンを除きどのゴブリンも俺と同じような体格で、ボスゴブリンのみ体が一回り大きく、身長は150センチ、体重が40キロくらいはありそうだ。


どのゴブリンもあほ面を浮かべ、歩き回ったり座り込んだり寝っ転がったりと好き勝手しているが、ボスゴブリンに狩に行ってこいと次から次へと蹴飛ばされ、巣から出ていく。


その様子を観察しているとボスゴブリンがこっちに気づき話しかけてきた。


「おう。やっと起きたか。」


「は、はい。」

俺はどきどきしながら答える。


「ん?そういえばお前はどうして話せるんだ?まだ他のガキたちは誰も話せないだろう?」


「さ、さぁ?」


「まあいい。難しいことは考えなくてもいいか。今日こそはちゃんと獲物をとってこいよ。」


「分かりました。行ってきます。」

今はおとなしくしたがった方がいいだろうと判断し出口へ向かう。




「ったく。狩り狩り、獲物獲物そればっかりうるせえやつだぜ。他のことは言えねえのかよ。」

ぶつくさ文句を垂れながら、巣穴から外へ歩いていると、ゴブリンが2匹うろうろしている。そうだ。こいつらをうまく利用すれば、弱いモンスターなら倒せるんじゃないだろうか。こいつを敵の前に出して囮にして陰からタコ殴りにする。実にすばらしい作戦だ。


「おい。そこのお前ら。俺についてこい」


「ギ?」


こいつらはろくに話すこともできないのか。ささっと着いてこいといいながら俺は歩き出す。


しばらく歩いていると以前見かけた角ウサギを見つけた。前に見た角ウサギとは違い茶色の角を持っている。種類が違うのだろうか。この角ウサギの強さが全く分からない今、うかつに攻撃することはできない。ここはやはり、このアホずらゴブリン2匹を利用するしかない。


「おい。あそこにウサギがいるだろ。あいつを倒しにいけ。大丈夫だ。あのウサギはこの辺で一番弱いモンスターだからお前たちでも簡単だ。」


ちゃんと伝わったのかはわからないが、ゴブリン2匹は一回うなずいて角ウサギの方へ歩き出した。


よし。チャンスだ。今の内に角ウサギの後ろに回り込んで様子をみよう。角ウサギとゴブリン2匹ではどっちが強いのだろう。


ゴブ1号――今名前を付けた――が角ウサギに木の棒で殴りかかる。見事に頭に命中したのだが効いているのか?すぐにゴブ2号も続き横から殴りつける。角ウサギもただやられるだけではなく、角を振り回し反撃しているが、ゴブリン達には当たっていない。


いけるぞ。3対1なら確実にこっちが有利だ。


俺は草かげから飛び出し、角ウサギを滅多打ちにする。


「泣いて謝っても遅いぞこのやろー」

反撃が怖いので手は一切緩めない。


ひたすら殴り続けていると、急に力がみなぎるような不思議な感覚があったので、殴るのをやめるとウサギがぐったり動かなくなっていた。


た、倒したのか?


「おい。ウサギが死んでいるか確認しろ」


俺はゴブ1号に命令し、数歩離れると、ゴブ1号が棒でウサギをつんつんしている。角ウサギは動く気配が全くなく、どうやら本当に倒したようだ。


やったぞ。ついに初勝利だ。ふん。そもそもたかがウサギ程度がこの俺に勝てるわけがなかったんだ。俺は人間の時にも格闘技をやっていたから、こんなウサギ程度楽勝に決まっていたか。たった1週間の通信空手でも役に立つもんだ。

それにしても、さっきの感覚はなんだったんだろう。急に力がみなぎる感覚がしたんだが。まあ、今は考えても何も分からないか。とりあえず目の前のウサギを巣まで持ち帰るか。


ゴブ2匹に命令し角ウサギを持たせ巣へと帰る。





「ボス。獲物を手に入れてまいりましたー」

俺は角ウサギを両手で抱え、ボスゴブリンの前へ差し出す。


「おう。よくやった。もう行っていいぞ」


えっ?なんですと?


人間の時だったら野生のウサギなんて食べたいなんて全く思わないが、ゴブリンになってからは不思議とそんな忌避感はなくなっていた。かくいうさっきも、巣への帰り道、草をうねうね這っていた芋虫をぱくっと食べたばかりだ。味はクリーミーな味で結構いけた。


俺が危険を冒して苦労して手に入れた獲物だ。ここは強気でいかねば。


「おいこら。俺が苦労して手に入れたんだぞ。半分くらいは、いやもっと俺の物になってもおかしくないはずだ。そのウサギをおれn「ああ!?」いえ、何でもないです。そのウサギはぜひボスに食べてもらおうと思って持ってきたものですので、全部食べちゃってください。」


怖えよう。ボスゴブリンさんがすごい目でにらむんだもん。あやうくちびっちゃうところだったよう。


俺はさっさとボスから離れようとボスゴブリンに背を向け走りだした。黄色い水たまりを残して。




ぐぬぬ。絶対覚えていろよ。いつか後悔させてやる!


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