プロローグ
目がくらむ光と耳をつんざく激しいクラクション音が閑静な住宅街に響き渡る。
突然だが、俺は努力というものをしたことがない。
これは別に俺が天才で努力もせず人生うまくいってきただとかそういった類いの話ではなく、単純に努力が嫌いでこれまで人生において低いハードルしか設定してこなかったというだけの話。
高校時代は、部活動に入らず勉強もそれなり。勉強しない割には成績はいいほうだったと思う。大学受験も勉強しないでいけそうな三流国立大学を受け、何とか四年で卒業。
就職活動も面倒くさいというただそれだけの理由で地元の市役所1つのみを受けて就職。いやぁ、よく就職できたもんだと我ながら不思議だな。
就職後ももちろん一切努力なんてしていない。バレないよう仕事をサボりつつ定時になると即帰宅。夜中の12時過ぎまでサービス残業してるバカもいるみたいだが一切気にしない。それにしても、公務員ってのはサボっていようが努力していようが給料が同じってのがいいよな。
だが三十路前になってよく思うようになった。俺の人生本当にこれでよかったのかって。毎日が同じことの繰り返しで、はりのない日常。
大学時代の努力していたやつらはかなり忙しそうだが、何だかすごくイキイキして見える。そんな姿を見ていると、俺も同じ道を歩む選択肢はあったはずなのにという後悔だけが次から次へと浮かんでくる。
うん。
これが走馬灯ってやつかな。
真っ暗な夜道にまぶしい光で全く見えないけど、このクラクション音とエンジン音はトラックってやつかな。うん。トラックだな。何で住宅街にトラックが通るかなー。
これはきっと助からないだろうなぁ。走馬灯って本当に時間が長く感じるんだなぁ。
さて、次の人生は努力できますように。
あ、コンビニのおでん食べそこねたな。
ここで、俺の意識は途絶えた。