ジェイソンさんのお話
暗い森の奥深くに、小さなおうちがありました。
カビ臭いベッドがきしみ、男がむくりと起き上がりました。
「いけない、大事な仕事を寝過ごすところだった」
年に数回しかないお仕事なのです。今日を逃したら、次は来年になってしまいます。
白いお面と、大きな斧が彼の仕事道具です。昨日の夜から、これらをベッドの横に置いていたのは、きっと今日が待ち切れなかったのでしょう。
「寝過ごす」どころか、実は一時間も前から起きていて、そわそわしていたのも、今日が三ヶ月ぶりに、下の町へ出ていける日だったからでしょう。
彼の大きな斧は、あまり使わないせいか、サビが付いています。しかし、それをあえてピカピカに磨くことを、彼はしません。
切れ味がよくなってしまって、間違って人を殺してしまっては、たいへんです。
暗くて、細い道を進みます。
自分が住んでいるにしても、この森を夜に通るのはちょっと怖かったりします。
町は静かでした。
それもそうです。彼が来ることは町のみんなが知っています。
彼を恐れて、家に入り、厳重な戸締りをして、明りを消して、息を潜め、一夜を過ごすのです。
しかし、彼はそれが逆に嬉しく思いました。
誰も見つけられなければ、誰も襲わずに済むのです。
「残念だなぁ。誰も襲えないじゃないか」
残念そうには感じられないような口調で呟きました。
「ねぇ」
後ろから声が聞こえました。振り向いても、誰もいません。
あたりを見回しても、誰もいないのです。幽霊かな、とちょっと怖くなりました。
「ねぇってば」
声は下から聞こえてきました。それは小さな女の子でした。
「あなた、ジェイソンさん?」
人に名前を呼ばれたのは久しぶりです。彼の名前は誰もが恐れ、口にしなくなってしまったからです。
ジェイソンさんは、顔が青くなりました。持っている斧が、震えました。
「私を殺さないの?」
女の子は、淡々と話します。そうです。ジェイソンさんは女の子を襲わなくてはいけません。それが彼の仕事なのです。
やっぱり、寝過ごすべきだったと彼は思いました。だって、そうすればきっとこの女の子を襲わずにすんだからです。
涙が出そうになりながらも、斧を強く握りました。
「ねぇ、ジェイソンさん。お願いがあるの」
斧を上げようとした手を止めました。お願いを聞いてからでも遅くないなと思ったからです。
ジェイソンさんは、出来れば女の子に逃げてほしいと思いました。
「私のこと殺してもいいから、その前に遠くへ連れてって」
ジェイソンさんは、女の子は頭がおかしいのかと思いました。
暗い森の中の細い道を歩きます。でも、さっきのように怖くありません。ジェイソンさんの右手には、斧ではなく、女の子の左手があるからです。
女の子は、なにも言わずにただ歩きます。
ジェイソンさんは、女の子の考えていることがてんでわからなく、困っていました。
もしかしたら、女の子はすごく足が速くて、僕の家を見つけたら、すぐに町に戻ってしまうかもしれない。そうして、待機していた大人の人たちに場所を知らせて、いよいよ僕は殺されるかもしれない。
ジェイソンさんは、あまり使わない頭を必死に使って、そう考えました。しかし、そうなってもし殺されてしまってもいいと思いました。
もう、人を殺す仕事は嫌なのです。
そっと、女の子の顔を覗きました。不安も恐怖もないように、まっすぐ前を見ていました。
「どうしたの?ジェイソンさん」
こっそり見ていたのがばれて、少し焦りました。
「もうすぐ僕のお家だよ」
「ずいぶん質素なところに住んでるのね」
思いのほかきついことを言う女の子に、ジェイソンさんはちょっと傷つきました。
家の中に入ると女の子は珍しそうにいろんなものを見始めました。
「普段はなにをしてすごしているの?」
「なにもしてないよ」
「うそだ。なにをして暮らしてるの?」
「なにもしてないんだって」
本当は、自分で作った積み木で遊んだり、森に住んでいる小鳥に合わせて歌ったりするのが好きでしたが、あまりにも恥ずかしくて言えませんでした。
女の子は、逃げ出したり、なにかで連絡をとろうとするような怪しいことはしませんでした。
「君のお母さん、きっと今頃心配してるよ」
「してないよ、絶対、絶対」
女の子は、急にこっちを見てそう言いました。その目は悲しみと憎しみが交ざったような目でした。
ジェイソンさんは、それ以上女の子になにも言えませんでした。
「ジェイソンさんのお母さんは?」
「いないよ。もう、ずっといない」
そう。もうずっと前にいなくなったのです。
「ここで一人で暮らしているの?」
「そうだよ。別に寂しくないからね」
嘘でした。本当は寂しくて、どうしようもなく苦しくなる時が来るのでした。
「私が一緒に暮らしてあげようか?」
女の子はカビ臭いベットにバウンドして、そう笑いました。
「あ、私、殺されるんだった」
ジェイソンさんは、この子を殺さなければならないのです。
ジェイソンさんは、悲しくなりました。
もし、この子が一緒に暮らしてくれたら、どんなに楽しいだろうと想像してしまったのです。
朝にとれたての卵で作る目玉焼きを二人で半分こすることが出来るし、もう一人かくれんぼをすることもなくなるのです。女の子に楽器を教えて、二人で演奏会をすることだって出来ます。
でも、ジェイソンさんのお仕事は人を殺すことです。
「ジェイソンさんは、お面を外さないの?」
「外すさ。外すよ。君がいなかったらね」
家にいるときはほとんど付けることはありません。しかし、今は女の子があるので外すわけにはいかないのです。
「どうして?外してみてよ。ジェイソンさんのお顔、見てみたいよ」
ジェイソンさんは、ははーん、と思いました。きっと女の子は自分の顔を見て、それを町の人に伝えるに違いないと思ったのです。
「いいかい、お譲ちゃん。僕の顔を見たってなんの意味もないよ。だって僕はね、町へ行く時は絶対にお面を被るんだ。こそこそと隠れて町に降りたりなんかしないよ。男らしくないからね。13日の金曜日の日だけに、このお面を被って、町へ行くんだ。なんたって僕は、みんなに恐れられる男だからね」
ジェイソンさんは胸を張ってそう答えました。それを見た女の子は、溜め息をつきました。
「そんなんじゃないのよ、ジェイソンさん。私はね、あなたのお顔がみたいだけなの。別に、お顔を見たからって町の人に話すつもりはないのよ。だって私、殺されるんだから。そういう、ずる賢いことはしないの。ただね、お顔を見て、あなたがどんな表情をするのか、みたいだけなの」
ジェイソンさんはまた、悲しくなりました。そこまで言われると、お面を外したくもなるのですが、それはできません。
ジェイソンさんは自分の顔が醜いことをよく知っていました。
「お譲ちゃん。君はまだ知らなくていいことがたくさんあるんだよ。僕のお面の中だってのそうちの一つさ」
「ジェイソンさん、待ってよ。私もうすぐあなたに殺されるのよ?まだなんてもうないの。もう大人になんかなれないんだからね。だからお願い。それともどこかコンプレックスを持っているの?大丈夫よ、私だって、お鼻が低いのを気にしてるの。それに、このとしでそばかすまであるのよ。本当嫌になっちゃう」
女の子はそう言って自分の鼻をぽんぽんと叩きました。
そんなに低くないのになぁと女の子の整った顔を見ながらジェイソンさんは思いました。
女の子の顔は、透き通るように白く、大きな目が印象的でした。
「それにね、私、よく目が見えないの。黙ってたけど、ジェイソンさんまだ気づいてなかったでしょ?」
女の子の言葉にジェイソンさんはびっくりしました。だって、さっきまで、家の中のものをじっと見ていたりしたからです。
「嘘つくなよ。ばればれだよ。さっきまで、いろんなものを見ていただろ」
「ほんとよ。だって、一緒に歩いていたときだって、何度も躓いていたでしょ?ぼんやりとしかね、見えないから、よくいろんなものにつまづくの」
そういえば、何度もつまかけして、おっちょこちょいの子なのかなぁと思っていたのを思い出しました。ベッドにくるときも、床に落ちていた積み木に気付かず、足で蹴ってしまっていました。
女の子をよく見てみると、大きな目はどこか遠くを見ています。目が合っていなかったのです。
「目が見えないなら、お面を外す意味だってないじゃないか」
「違うの。そうじゃないの。見えないけど、ぼんやりとは見えるのよ。だからね、いつも感じてるの。ぼやけたものをね、補うように、感じるの。だからね、ジェイソンさんの気持ちがわかるように、お面、外してほしいの」
女の子が言っていることはなんだか複雑のように思えて、ジェイソンさんにはちっともわかりませんでした。
ですが、女の子が必死に説明していたのを聞いて、お面を外してもいいかぁと思えてきたのです。もし、ちょっとだけ外して、女の子が嫌な顔をしたら、また付け直せばいいだけです。そして斧を持って襲うふりをすればいいだけです。
人に嫌われるのは、もう慣れています。そう強がりました。
そっと、お面を、半分くらい、外しました。
女の子は何も言わず、ただずっとこちらを見ています。
お面が徐々に顔から遠ざかり、ついにお面を持った手を下に下げました。
女の子を見るのは少し怖い気がしました。人に嫌われることは、慣れているはずなのに。
「ありがとう。ジェイソンさん。そんな不安な顔しなくて大丈夫よ」
女の子は、ジェイソンさんのほうを見て、にっこりと笑いました。
ジェイソンさんは少し泣きそうになりましたが、ぐっとこらえました。
目の見えない女の子ですが、きっとばれてしまうと思ったからです。
ジェイソンさんは、お手製の楽器を持ってきました。ジェイソンさんの体は大きく、手も大きいのですが、何故か器用なので、なんでも作ることができました。
この楽器は、吹くと音が出るものです。いくつもの穴があり、そこを押さえると音程が変わるという綺麗な音色の楽器でした。
かつて、人を襲ったときに落ちていた物を見よう見真似で作ったものでした。
他にも何種類かの楽器があり、それらも下の町で見かけたものを自分で作ったものでした。
ジェイソンさんは音楽が大好きでした。
いつの日か、下の町に降りたときに、聞いた音楽を奏でました。
それはきっと古く、女の子は知らない曲です。しかし、ジェイソンさんはこの曲がお気に入りでした。特にこの楽器で奏でると、いっそう楽しくなるのです。
女の子は、目を閉じて、ジェイソンさんが奏でる音楽を聞きました。そのうちどんどん楽しくなってきて、音に合わせて手拍子を始めました。
ジェイソンさんは、こんなこと、初めてで、嬉しくて、嬉しくて、なん曲もなん曲も、楽しい曲を奏でました。中には女の子が知っている歌もあったのか、手拍子をしながら口ずさんでくれるものもありました。
ジェイソンさんは、それはもう、本当に楽しくて、自分がこの女の子と殺さなくてはいけないことをすっかりと忘れて、日が暮れるまで、演奏しつづけました。
「おなか空いた」
一通り演奏が終わると、女の子は呟きました。
「よし、ご飯にしよう」
女の子に言われて、初めて自分もおなかが空いていたことに気付いたのです。
ジェイソンさんは今日はちょっと女の子のために、とっておきの料理を作ろうかな、と考え、裏の畑に向かおうとしました。
「ジェイソンさん」
女の子はジェイソンさんをひきとめます。
「私を殺さなくっていいの?」
女の子の表情には不安も恐怖もありませんでした。ただ純粋に、普通の質問を言うのと同じように、問いかけているだけでした。
「腹ごしらえしてからだって、遅くないだろう?」
女の子の表情がぱっと明るくなり、ジェイソンさんは嬉しくなりました。
今日の晩御飯は、野菜がたくさん入ったリゾットです。
ジェイソンさんは、これが大好きで、特別な日にしか食べないと決めていました。
今日はお客さんがいるので、ジェイソンさんにとってはとっても特別な日です。
「おいしい」
アツアツのリゾットをほおばる女の子は笑顔でそう答えました。ジェイソンさんは思わず嬉しくなりました。
今までジェイソンさんの料理を食べてくれるのは、小鳥や動物たちだけだったからです。それに、その子たちも、食べてはくれるものの、ジェイソンさんの大きな体を恐れ、ジェイソンさんに懐いてくれることはありませんでした。
誰かと食べるリゾットが、いつも食べるものよりも何十倍もおいしく感じました。
それから女の子はもう一杯、ジェイソンさんは二杯もおかわりをして、二人は満腹になりました。
女の子はベッドに横になりました。カビ臭いーと言いながら、楽しそうに転がっています。
ジェイソンさんはそんな女の子を殺さなくてはいけません。
「もしかして、お譲ちゃんを探しに、町の人が森に入ってきているかもしれない」
ジェイソンさんはぽつり呟きました。
「それはない、絶対、絶対」
女の子はむくりと起き上がり、真剣な表情で言いました。
「そんなことない。きっとそうだ」
「ジェイソンさん、私ね、言ってなかったけど、嫌われている子なの。お母さんにもお父さんにも。町のみんなにだってそうよ。使用人のアリスだって、ニコニコしてるけど、私なんかいなくなれって思ってるわ。きっとそう。いいえ、絶対そうよ。みんな、弟のアシュリーさえいればいいと思ってるのよ。まだ歩けるくらいじゃないんだけどね、あの子が跡取りって決まってるから。目も見えない、変な事ばかりいう私はみんなの嫌われ者なんだわ」
女の子は早口でそういうと、またベッドに横になり、壁のほうを向いてしまいました。最後のほうは声が震えてました。
「だからね、私、死んじゃいたいとずっと思ってたの。そのほうがきっとみんなもせいせいするわ。でもね、ちょっとだけ、今は悲しいかな。だって、あんなに楽しい演奏を聞いたことがなかったから。あんなにおいしいお料理を食べたことがなかったから。ジェイソンさんと一緒に暮らせたらきっと楽しいんだろうなって考えたら、ちょっと悲しくなっちゃった」
ジェイソンさんもおんなじ気持ちでした。ずっと一人でいたから、女の子といた時間はとても楽しく、幸せでした。
ジェイソンさんは女の子に、何も言うことができませんでした。
僕の仕事が人を殺す仕事じゃなかったらなぁ、とジェイソンさんは思いました。
しばらくすると女の子の寝息が聞こえてきました。それは小さな、健やかな寝息でした。
ジェイソンさんは女の子がたまらなく、愛しく感じました。寝息に合わせて動く、その小さな体を、壊したくないと思いました。
女の子にそっと布団をかけました。
そして、ジェイソンさんはベッド脇の、床に寝転がりました。
お客さんが来ることなんて、これまでありえなかったため、ベッドも布団も、一つしかなかったのです。
床は冷たく、すこし体が痛かったですが、女の子の寝息が聞こえるだけで、いつもより安心して眠ることができそうです。
いつもより早く、ジェイソンさんは目を閉じました。
なんだかふわりと、温かいものが体に触れ、ジェイソンさんは目を覚ましました。
まだ夜は明けておりません。いつも13日の金曜日のこの時間は、まだ下の町で仕事をしているころです。もしかしたら町の人は不思議がっているかもしれません。
温かいものの正体は、女の子にかけた布団でした。
隣には女の子がいます。慌ててジェイソンさんは、女の子を起こさないようそっと抱きかかえ、ベッドへ戻そうとしました。
眠りが浅かったのか、女の子が起きてしまいました。
「ジェイソンさん、寒いでしょう?布団に入らないと風邪をひいてしまうよ」
女の子はジェイソンさんをベッドへ引っ張りました。
ジェイソンさんは風邪をひくことはありません。困ったなぁと思いました。
「悪いが、布団もベッドも一つずつしかないんだ、一夜くらい、我慢するよ」
ジェイソンさんはそう言って戻ろうとしますが、女の子は引っ張るのをやめません。
「ジェイソンさんがベッドで寝ないなら、私も床で寝る」
そうなってしまっては大変です。女の子が風邪をひいたり、体を痛めてしまってはいけないと思ったからです。
ジェイソンさんは仕方なく、女の子の隣におずおずと寝転がりました。
女の子はそれを見て満足したのか、再び目をつぶりました。
女の子からの寝息を聞きながら、ジェイソンさんは自分の寝相で女の子を殴ったり蹴ったりしてしまわないか心配で、眠ることができませんでした。
天井を見つめながら、ジェイソンさんは決意しました。
そうだ、もう、女の子を殺すのはやめてしまおう。静かに二人で暮らしてしまおう。一緒に音楽を奏でたり、かくれんぼをしたり、そうして静かにくらしてしまおう。
明日になったら、出来たての卵で朝ごはんを作って、二人で半分こにしよう。そして、女の子のためのベッドと布団を作ってあげよう。女の子がつまづいたりしないように、家をもっと歩きやすくしてあげよう。
そうやって、静かに二人で幸せに暮らしていこう。明日、女の子に話してあげたら、きっと女の子も喜んでくれるに違いない。素敵な提案ね、と歌を歌ってくれるかもしれない。
そういえば、女の子の名前を聞いていなかった。
明日は今日よりもっともっと楽しくなるに違いない。
ジェイソンさんは静かに笑って、そしていつの間にか目を閉じてしまいました。
ジェイソンさんの寝相で女の子が殴られたり、蹴られたりすることはありませんでした。
朝がきました。鳥がそれを知らせるように鳴いています。
ジェイソンさんはいつもこの鳴き声で起きるのですが、今日はなかなか目を開けません。
女の子が目を覚ましました。寝ぼけているのか、あたりを二、三度見回して、ジェイソンさんの家にいるということをやっと把握しました。
隣で幸せそうに寝ているジェイソンさんを起こそうと体を揺らしました。
顔がはっきり見えなくとも、女の子にはジェイソンさんが幸せそうに眠っていることくらい、お見通しなのです。
「ジェイソンさん、朝だよ。起きて。お寝坊さんね、まったく」
女の子はそれからジェイソンさんを何度か揺らしました。
ジェイソンさんは全く起きません。
「ジェイソンさん、ジェイソンさんたら」
女の子は、ほんの少し、状況をわかってしまいました。でも、認めたくなかったのです。
「ねぇ、一緒に歌を歌おうよ。私のこと、殺す前に、お願い。そしたらきっと楽しくなるでしょう?昨日のあの、綺麗な音の楽器、聞かせてよ。ねぇジェイソンさん起きて」
ジェイソンさんは幸せな顔で寝ていました。昨日の夜、女の子と暮らすことを決めたばかりだからです。
ジェイソンさんのお仕事は、人を殺すお仕事です。目の前にいる人は子供でも老人でも、襲わなくてはいけません。
ジェイソンさんはそれをいつも嫌だなぁと思いながらしていました。
毎年、年の初めに、一年の13日の金曜日の日を数えて、少ないときはガッツポーズをしていました。
しかし、ジェイソンさんのお仕事は、それでもやはり、人を殺すことです。逃げることは、できません。
人を殺すことをやめたジェイソンさんは動かなくなりました。彼の運命なのです。
女の子は、なんとなく、わかりながらも、それからしばらくジェイソンさんを揺らしました。
そして、耐えきれなくなったのか女の子はジェイソンさんに抱き着きながら、大きな声で泣き出しました。
ジェイソンさんの顔はやっぱり幸せそうでした。
暗い森の奥深くで、女の子の泣き声が、ただむなしく響きわたるだけでした。
13日までに仕上げるつもりが14日になっちゃいました。