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第8話:きらりの声 ── 守るための【共闘Sync】

 きらりは名残惜しそうに体をふるふる震わせると、

 森の奥へ戻っていった。

 蔦の先を何度もこちらへ向け、

 まるで「また来るね」と言っているようだった。


「……きらり、またね……」

 しのんは落ちていた晶核片を拾い上げ、太陽にかざした。

 透き通った光が頬に反射し、嬉しそうに鼻歌を歌いながら歩き出す。


 ◇◇◇


 仮の拠点に戻ると、美園は昼食の準備を始めていた。

 焚き火の上で湯気が立ち、森の匂いと混ざって心地よい香りが広がる。


 僕は拾った晶核片を並べ、武器と防具の改良点を考えていた。

 軽くて硬い。刃物の補強にも使えそうだ。


「裁縫がいるところは、食後にうちが手伝うけんね」

 美園が微笑む。


「助かります。強度を上げたいので……よろしくお願いします」


 しのんは湧水のそばにしゃがみ込み、晶核片を一生懸命磨いていた。

 光が反射するたびに「きれい……」と小さく呟く。


 ◇◇◇


 昼食を終え、片付けも済んだ頃だった。

 森の奥から、かすかな鳴き声が聞こえてきた。


「……きらり?」

 しのんが顔を上げる。


 僕も耳を澄ませた。確かに、聞き覚えのある声だ。


「春斗さん……」


「行ってきます。2人はここで待っていてください」


 僕は作りたての武器と防具を手に取り、

 音を立てないよう急ぎ足で森へ向かった。


 ◇◇◇


 声のする方へ近づくと、木々の間で激しい動きが見えた。

 きらりが、別の魔物に襲われていた。


 相手は、影を裂くように跳ぶ黒い獣。

 後ろ足が異様に発達し、跳ぶたびに残像が走る。


(今の僕では絶対に勝てないタイプだ)


 きらりの鉱物の外殻は攻撃を弾いている。

 だが、蔦の反撃は相手に全く当たらない。


 影獣は跳ねるように動き、素早く距離を取っている。


(……相性が悪い)


 僕は茂みに身を隠し、敵の動きを観察した。


 跳ぶ前に必ず後ろ足が沈む。

 着地は必ず右側の根元。

 視界は狭く、正面しか見えていない。


(……いける)


 ◇◇◇


 僕は敵の視界外へ回り込み、地面を蹴った。

 敵がこちらを向いた瞬間、武器の柄で横から強く叩く。


「ギャッ……!」

 敵の注意が僕に向いた。


 その隙に、きらりが蔦を伸ばして敵の足を絡め取る。


 動きを封じられた敵が暴れる。

 きらりの外殻が強く光り、ぱんっ……ぱんっ……! と

 小さな破裂音とともに、晶核片が連射された。


 光の弾丸が敵の体に次々と着弾し、影獣は地面に崩れ落ちた。


(……体力はあるが、防御は弱いタイプか)


 僕は息を整え、敵にとどめを刺した。


 ◇◇◇


「……大丈夫か、きらり」


 きらりは僕の声に反応し、体をふるふる震わせた。

 そのたびに、晶核片がぽろぽろと落ちる。


「ありがとう。助かったよ」


 きらりは嬉しそうに蔦を揺らし、

 まるで「こちらこそ」と言っているようだった。


 ◇◇◇


 この日、森の奥で起きた出来事は、

 後に語られる“世界初の記録”となる。


 ――魂レベル0の人間と森に生きる魔物が、互いを理解し、

 そして共に戦った最初の瞬間だった。

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