第二話 ルーナ・ノーヴァ誕生す!
◇
こんな幸せな時間も、長くは続かなかった。
時が過ぎるにつれ、おじいさまは老ベッドから起き上がらなくなることも多くなった。大好きだった書物にも、もうあまり手を伸ばさない。
やがて、食事も喉を通らなくなった。
そして、ついに私はおじいさまの元に呼ばれた。
◇
「ルーナよ…」
か細い声だったが、その瞳は、まだ確かな光が宿っていた。
「私のお家にきれくれてありがとう… お礼をしっかり言わせておくれ… キミが来てくれて、私は本当に幸せだった」
おじいさまは私の手を握りながら、そのまま続けた。
「私のおうちのものは、すべてを君にあげよう、屋敷も、本も、知識も…」
「でも、この呪われた名… シュタインフェルトを継ぐ必要は一切ない…」
おじいさまは哀しそうな眼をして、最後の力を振り絞るように言った。
「君に名前を授ける」
「新しい名前は、「ルーナ・ノーヴァ」… 新しく輝く新星のように、自分で自分が生まれた輝きを証明してみせなさい…」
「これからこの名に恥じぬようこの世の中で輝いてみなさい。私は傍らからずっとその輝きを信じている‥」
そして、一枚の羊皮紙を私に手渡した。
「王国の士官学校の推薦状だ。私が全て準備しておいた。」
「いきなさいルーナ、そして二度振り返らないように!」
◇
涙ぐむ私に、傍らに立っていたテラが後を続けた。
「シュタインフェルト様のこのあとのことは、私がお世話をするわ…」
「そしてルーナ、私もあなたとお別れ… シュタインフェルト様の命が終わる時、それは私との契約が終わる時…、私が大地に還る時だわ…」
「あなたとも会えなくなるけど、私はいつでもあなたのことを見守っているわ。いつでも大地の精霊である私に話かけてね!」
◇
私は溢れる涙を堪えて旅身支度を整え、屋敷の整理を行った。
ゴーレムを立ち上げ屋敷の管理をプログラムすると、フロストヴァルドの王都へとまっすぐに旅立ったのだった。




