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第二十八話 船出


この一年間の月日は、矢のように過ぎ去っていった。


国王陛下の「お墨付き」を得たわたしに、もはや逆らう者など誰一人いなかった。まぁ少し退屈では、あったけれど…


王城に行くのに蟲の召喚だけでは見栄えが悪いので、私の専門の拡張としての錬金術… 地精霊のゴーレム制御の研究をしていました。シュタインフェルトの館でもアイアンゴーレム、ロックゴーレム、マッドゴーレムなど、各種ゴーレムは制御していたし、多数操作にしても一度に10体は制御できるようにしていたのだけれど、もっとかっこよいことをやってみたいの…


空いた時間は、じっちゃんの膨大な「蔵書」を全て読み返し、来るべき「次なる戦場」への準備は十分となりました!


そして、ついにやってきた卒業の日… わたしはもちろん首席…

異例の「飛び級」での卒業だった…



卒業式の翌朝。


王城へと向かう馬車が迎えに来るちょっと前、私は寮の自室の大きな姿見の前に立っていた。


そこに映っていたのは、

光に当たるとキラキラと輝く柔らかな


「栗色の髪」


をしたどこにでもいるような「普通の女の子」♪


あの蔑まれた「緑の髪」の少女ではない。私はその見慣れない… でも私の計算通りに仕上がった自分の姿に満足げに頷いた。



そうなのである。


もう私は誰かに「認めてもらう」必要などないのだ…


この兵学校という、ちっぽけな「戦場」では、

「緑の髪」も「シュタインフェルト」の名も、

自分を「証明」するために重要なものだったのかもしれない。


しかし、もう証明の時間は終わった。


これからは魑魅魍魎(ちみもうりょう)(うごめ)く「王城」という本物の「魔窟」が私の戦場…

ここでは「目立つ」ことは「死」を意味するかもしれない…

奇をてらった「名」も「姿」も必要ない。


「普通の栗色の髪のただ優秀な女の子、ルーナ・ノーヴァ♪」


として、背景に溶け込むことこそが、

最高の「隠れ蓑」であり最高の


「武器」


になる!


(それに♪)


私は、くるりと一回転してみせる。

仕立ててもらった、新しい軍服のスカートがふわりと揺れた。



(こっちのほうが、可愛いですものね♪)

(緑の髪なんて完全に蟲臭くって、田舎臭いですわ♪)


コン、コン、コン… 


扉がノックされ迎えの馬車の到着が告げられる。


いよいよだ…



王城へと向かう馬車の中…


窓の外を流れていく景色を眺めながら、ルーナはこれからの新しい「生活」に思いを馳せていた。


(そういえば…)

(あのお二人も、王宮にいらっしゃるのよね…)


ルーナの脳裏に浮かぶのは、

先日の眩しかった「アッシュ王子」…

そしてジト目でこちらを見ていたエリザ王女である。


聞くところによると、

アッシュ王子も、そしてレイヴァルド国王陛下も

まだ婚約者もいらっしゃらないとか…

少しあの王女は怖いけど…


家柄、申し分なし。

容姿、おそらく国宝級。

将来性、無限大…



(……………)


口元が、にんまりと緩むのを、

ルーナは止めることができなかった。


そして王族だけでなく様々なVIPの集まるところ、

そこが王城である…


「玉の輿、チャーンス♪」


そうにやけながらルーナ・ノーヴァは、王城での輝かしい「生活」を夢見心地な気分で、趣味の


「妄想」


に一人、(ふけ)るのであった…


__________

【了】


つづくかも…

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