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第二十七話 救世主


「モノども、集まれ! この小娘を拘束しろ!」


アーモンド将軍の「権力」という暴力が、まさにルーナを完全に飲み込もうとしたその瞬間だった…


カポ、カポ、カポ…


優雅な馬の蹄の音だ。


正門から現れたのはフロストヴァルド王家の紋章を掲げた豪奢な「馬車」だった。そしてその扉が静かに開かれた。


「ヨイショっと!」


一人の少年が優雅な仕草で降り立った。



彼はその幼い姿に完璧な微笑みを浮かべると、まずその場にいる全ての人間に対して優雅に儀礼的な挨拶をしてみせた。


「皆さま、ごきげんよう!」


その圧倒的な「品格」の前にアーモンド将軍ですら慌てて跪く。


「あ、アッシュ王子殿下…! これは一体どのような…!」


この少年は、にこやかにな口調で言った。


「本日は兄上… コホン… レイヴァルド国王陛下からの『勅命』を皆さんにお伝えするために参りました…」


少年は懐から国王直々の「親書」を、取り出すと、皆の視線が注がれる壇上に恥ずかしそうに上がった。


そして、そのまだ高いよく通る声で淡々と手紙を読み上げ始めた。



「これから国王陛下からのお言葉を読み上げます! コホン!」


「まず昨晩の夜盗に対する兵学校学生による王都防衛… 大儀であった。 この功績を評価し、兵学校学生を指揮した学生、ルーナ・ノーヴァを現状をもってフロストヴァルド軍『中佐』として採用する!」


「そして一年後の卒業をもって、正式に王家直属の将官として招聘するものとする!」


「以上!」


アーモンド将軍と学長の顔が、

みるみるうちに血の気を失っていく…



しかし、その時ルーナは歓喜の瞬間を味わってなどいなかった…


馬車の窓の奥… その、闇の中から、こちらを、じっと、値踏みするように、見つめてくる一対の「ジト目」… そして、そこから放たれる底知れない、強大な「魔力反応」… 先ほどからルーナが感じていた異常な魔力は、おそらくここからくるものであった。


(このプレッシャーは…!)


ルーナは得体の知れない「怪物」… エリザ王女の魔力反応であったが、本能的な「恐怖」を感じ、モブ学生たちの陰にまじり身を隠していた。 おそらく馬車の中からこっそり、あの王子を護衛しているのだろう…


危なかった…


もし、あのままアーモンド将軍たちを石化させていたら…

この最高の「セレモニー」を、台無しにするところだった…

背中を冷たい汗が伝う…


しかしそんなルーナのパニックなど露知らず、かの少年… アッシュ王子は、群衆の中からルーナを見つけ出すと楽しそうに、駆け寄ってきたのだった。



駆け寄ってきたアッシュ王子は、そして躊躇もなくルーナの耳元に顔を寄せた。


そして小さな声で悪戯っぽく一言だけこう囁いた。


「僕にも今度精霊魔術… 見せてくださいね♪ ルーナ先生♪」


その言葉を残して、アッシュ王子は馬車に戻ると、再び遠ざかって行ったのであった。

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