第二十二話 伏兵
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ハァッ…ハァッ…ハァッ…
喉から漏れる、呼吸音が大きく聞こえる…
このように友軍を犠牲にして、かろうじて泥地獄を切り抜けたシュライヒャー将軍であったが、かなり消耗しきった状態になっていた。そして現在では数十名の兵士が残るのみになった。
六千いた騎兵の一個師団…
その成れの果てがこれか…
シュライヒャーの口元に、自嘲の笑みが浮かんだ。
何年もかけたこの作戦…
目標の王城は目の前にあるというのに、行軍ができないのだ…
「将軍…これから、どうすれば…」
「森だ。森へ逃げ込み、後方部隊と合流する…」
これが彼らに残された唯一の「希望」であった。
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「…」
シュライヒャー将軍は後方部隊と合流するために念輪で連絡を取ろうとしたが、連絡が取れない… 将軍はおかしさを感じながらも、駐屯地点へ行軍を開始した。
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行軍するシュライヒャー一行であったが、不思議な体験をしていた。
森が静かすぎるのだ…
ただ自分たちの荒い息遣いと、踏みしめる「落ち葉」の乾いた音だけが、響いている。
何かが、おかしい…
カサ…カサ…カサ…
シュライヒャーは、足を止めた。
木に張り付いていた木の葉を手に取って観察してみる。
しかしそれは、葉っぱではなく、
黒い虫の羽であった…
シュライヒャーは慌てて灯りを取り出し足元を照らした。
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そこに広がっていたのは、
おびただしい数の黒い蟲…
地面にびっしりと張り付いた、
無数の「G」の群れだった。
そして蟲たちは突然動き始めた…
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突然動き始めた蟲たちは、
彼らの穴という穴に群がった…
彼らの体は蟲に侵入され、
内側から生きたまま喰われた…
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こうしてサンフォーレ皇国の騎兵一個師団は、
一夜のうちに様々な精霊たちの
「糧」
となった。




