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第一話 精霊術


私が生まれた時に、大量の虫が、胎盤と共に流れ出たということだった。


母はもう既にこの時点で、おかしくなったという事だった。


農業を主な生活の糧とする村では、虫に取りつかれた私の居場所は、生まれた時からなかったのかもしれない。



そしてこの緑の髪…


両親の色でもなく、森に呪いと言われる伝説の緑の髪の色…


村でも虐められ、そしてもの珍しさに、都会からも見物人がわざわざやってきて、私を虐げた…



物心つくころには、


私はいつも一人でいた。


石と虫が私の友達だった。


さみしくなんかなかった。



私は、石と虫が好き。


私を傷つける人間は嫌い…


人間より、石と虫が好き…



小さいときには目立たなかった私のこの力…

このような環境にいることで、より強くなったようだった。


物心ついたころには、私はいつも石と虫に囲まれていた。



私は石と話した。


そして


私は虫と話した。


これが、私のサガの元凶であったのか…



シュタインフェルト家の養子となった私は、さっそく地精霊テラと、精霊術の訓練に入った。


「ルーナはすごい! いつも大地と一緒に歌ってるみたいね!」


テラはいつもそう言って、私の隣でキラキラした目で見守ってくれた。


小さいころから、大地と会話し、大地の恵みを感じっとっていた私にとって、精霊術は呼吸するようなものであった。


山の中から綺麗な石を見つけだす… 一晩で山を作り、そして一晩で同じ大きさの穴を大地に掘る…


生来の膨大なマナ量にも恵まれ、私はこの時点ですでに王国一の精霊術師となった。



おじいさまは、領主シュタインフェルト… 異世界召喚されたのち、魔王軍を全滅させた天才参謀の末裔… しかし異世界人であること、そして、それを妬む王国の者たちによって、この辺境に封印され、おじいさまの代で家督も潰える…

 

そんな時に、私はこの家に迷い込んできたらしかった。


「いいか、ルーナ… 戦いとは始まる前に九割九分、決まっているものだ」


おじいさまは、書斎の床に広げた巨大な地図を指さしながら、嬉々として私に軍略の基礎を教えた。


虫たちを使って、戦争ごっこをしていた私は、耐えがたく魅力的なこの学問にたちまち魅せられ、始祖シュタインフェルトが残した手記、秘蔵の知識、魔法と異世界の戦術の融合…


私は「(いくさ)」というものの真髄を学んだのだった。



屋敷の者たちは、おじいさまに表面上は従っていたが、陰では「変わり者のご主人様」と噂していた。その冷ややかな態度は、私への態度でもわかった。


そんなとき、おじいさまはいつも私の頭を撫でながらこう言っていた。


「自分を汚さないこと。相手と同じ土俵に上がってはいけないよ」


私は、おじいさまから、この世で生き抜くための処世術も学んだのだった。

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