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第十八話 鼓舞


新兵であろうが女性であろうが、弱いものは殺され弄られる。

これが「演習」ではない「本物の戦争」の姿だった…


バクスター率いる学生の歩兵科部隊も、セラフィーナ率いる魔法科部隊も、消滅した。


平原にはただ夜盗に扮したサンフォーレ皇国の騎兵たちが、次の「獲物」である本陣へと迫る… その蹄の音が響いていた。



本陣の学生たちは、勝手に出陣したセラフィーナやバクスターが崩壊したことを知らない。この情報は伏せておいたほうがいいだろう、とルーナは判断した。そして今から兵のモチベーションを高める必要があるのだ!


ルーナは、平原の闇に染み渡るように、皆の耳に届くように語り始めた。


「あなた方は、今ここで絶望している…」


「相手は六千。こちら三百…

しかも相手は騎兵で、我々は歩兵…」


「どう考えても勝ち目などない。

我々はここで死ぬのだ、と…」


その絶望的な「事実」を、改めて口にしたことで、

兵士たちの間に、より一層暗い動揺が広がった。



「ですが… 思い出してごらんなさい。つい先日の『御前仕合』を…」


「あの時も相手は学校最強の騎兵隊でした。対する我々はまだ右も左もわからない歩兵科学生だった…」


「あの時、あなた方は歩兵が騎兵に勝てると思っていましたか?」


誰も答えない。


「だが我々は勝った!」


「皆が恐れているこの状況… 今日は演習ではありません。本物の戦争なのです。しかしながら、演習と同じことが1つだけあります!」


「それは、あなた方の指揮官がこの私、ルーナ・ノーヴァであること… この私の全力をもって敵を撃退して見せましょう!」


この事実に、皆の希望を託させるしかない…



「モビオ・ムッツォリーニオ!」


ルーナはモビオのフルネームをいきなり呼んだ。


「は、はいっ!?」


名指しされたモビオが潰れたような声を上げる。


「あなた、先日の作戦会議の後、教官に『ちくり』に行きましたわね?」


「ひっ…! す、すみません…!」


いきなり罪を追及され、モビオの顔が真っ青に染まる。



今から公開処刑でもされるのだろうか… とモビオは絶望的な表情で体を硬直させた。


「ええ、結構ですわ、あなたのその『裏切り』… それすらも、わたくしの『計算の内』なのです。むしろ、よくやってくれました。褒めてさしあげましょう!」


「ですが、あなたは今回『生き延びるチャンス』を得た。このチャンスを掴むも無駄にするも、あなた次第…」


「頑張りなさい!」


ルーナは、モビオに「赦し」と「激励」の言葉を与えていた。

モビオは安堵のためその場に崩れ落ち、声を上げて泣き始めた。



「クラウス! ハインツ!」


ルーナは、続いて身近にいたモブ学生たちの名前を全員呼んだ。


「あなた方も、これまでモビオと同様に虐げられて、悔しかったでしょうね。ええ、悔しいはずです!」


「悔しいならば、証明してみなさい!」


「雑兵には雑兵の役割があり、皆が重要な存在であることを! 皆、この私の隣で生き延び、そして最後に笑うのは、我々の方なのだとこの戦場で証明してみなさい!」


「「はいっ!!!!!」」


この一瞬、彼らの瞳の恐怖の色は消えていた。


ルーナは満足げに頷くと、最後の準備に取り掛かった。

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