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第十七話 捕縛


バクスター・アーモンドが率いる歩兵科学生が一瞬で「肉塊」へと変わったその惨状… それを後方から見ていたセラフィーナ・フォン・ローゼンベルクは、心底軽蔑したようにため息をついた。


「まあ、なんて愚かなのでしょう。 歩兵が騎兵に正面から挑むなど… 犬死にとは、ああいうことを言うのですわね…」


彼女の瞳には「悲しみ」など一切ない。あるのはただ軽蔑だけ…


「仕方がありませんわね…」


セラフィーナは扇を閉じると、優雅に一歩前に進み出た。


「あの泥ネズミが動く前に、わたくしがこの戦いを決めてさしあげますわ。見ていなさい。『本物のエリート』の戦い方というものを…」


彼女は、自らの魔力にまだ絶対の自信を持っていた。

相手がどれだけ手練れの騎兵であろうと、所詮は肉塊。

鋼を溶かす「炎」の前では溶けてなくなる、ただおもちゃに過ぎない、と…



「喰らいなさい夜盗ども! 『紅蓮の十二火球』!!」


セラフィーナの詠唱と共に、極大魔法は炸裂した。


12個の灼熱の「ファイヤーボール」が出現し、

サンフォーレの騎兵隊へと、降り注いだ。


騎兵の陣の中央に極大魔法が炸裂し中心の騎兵が吹き飛んでいた。

セラフィーナの魔法の威力であった。


さすがに中央の隊列は乱れるが、先頭集団は怯まない。

夜盗らしからぬ、統率力である。

セラフィーナは、この強力な極大魔法を平然と連続して詠唱する。

彼女もまたフロストヴァルド王国の未来の強力な駒であった。



セラフィーナの第二弾の魔法は、水平に発射され、

騎兵の先頭に炸裂する。

魔法防御をしてある部隊とは言えども、

セラフィーナの強力な魔法は、第一陣を足止めさせる。


「ほーら、みてごらんなさい!」


と得意がるセラフィーナの目の前に現れたのは、

セラフィーナの火球に怯むことなく次から第二陣とともに、

戦闘を駆け抜ける一騎の騎兵であった。



この騎兵…

セラフィーナの強力なファイヤ―ボールを受け止めたうえで、

横にはじいたのであった…


魔法兵は距離が詰められると終わってしまう…

このセラフィーナの強大な魔法も、詠唱と共に発射場所が特定されてしまうことが魔法戦闘のネックなのである。


火の粉を身にまといながら猛然とチャージする騎兵に対して、

魔法科の女学生たちは、セラフィーナをサポートする。


「泥沼!」「地面氷結!」「エナジーボルト!」


様々な属性の魔法が、一斉に放たれる。



しかし、この騎兵は「泥沼」や「地面凍結」の出現するその予兆を感じ取ると、『エアステップ』で飛び越え、「 エナジーボルト 」は彼らの強力な「魔法防護アンチ・マジック」の鎧に当たって砕け散る。


「ば、馬鹿な…!」


「全ての魔法が通用しない…!?」


魔法兵や弓兵は、サポートありきの軍隊である。


しかし今回セラフィーナ達には、魔法兵をサポートする歩兵も、騎兵も存在しない。


敵騎兵のスピードを止める手段が、セラフィーナの部隊には足りなかった。


このスピードという武器で距離を詰める騎兵…

セラフィーナは残りの魔力を振り絞って強力なファイヤーボールを放った。



「わたくしの炎から、逃れられると思わないことですわ!」

「喰らいなさい! 『極大火焔魔法(プロミネンス・ノヴァ)!!」


ゴオオオオオオオオッ!!!!


先ほどとは比較にならない超高密度の灼熱の「奔流」が叩きつけられる…


それはもはや「ファイヤーボール」などという生易しいものではない。

溶岩の爆発をぶつけるかのような、熱による純粋な「破壊」の具現化である。


「ぐっ!!」

「 『魔法防護』が溶ける…」


強力な魔法に将軍自ら突撃を敢行したシュライヒャー将軍であったが、いくら『ファイアレジスト』がかかっているとはいえ、魔法防御もこの熱の暴力の前では限界があった。


周囲の重装騎兵が、灼熱に耐え切れず、鎧を赤熱させながら脱落していった。



「見たか! これが、わたくしの…!」


セラフィーナが勝利を確信しかけたその瞬間だった。


「怯むなァァァ!!!」


シュライヒャー将軍はこの炎の奔流を強引に突破し、自らの体が焼けるのも構わず、矢のような速さでセラフィーナただ一人に向かって突進してきたのだ。


「なっ…!?」


この常軌を逸した「覚悟」と「スピード」に、

セラフィーナの反応が一瞬遅れた。



「もらったァ!!」


シュライヒャー将軍の焼け爛れた左腕が、セラフィーナのか細いウエストを鷲掴みにした。


「きゃあっ!」


「セラフィーナ様!」


そのあまりにも鮮やかな「一点突破」…

他の魔法科の生徒たちは完全に動きを封じられてしまった。


「くっ…!」


セラフィーナは、屈辱に唇を噛み締めた。


将としての「格」が、

あまりにも違いすぎた。


「全員ワンドを捨てさせろ!一人残らず捕らえろ!」


シュライヒャー将軍の号令が響き渡った。



セラフィーナは上半身裸にされ、

騎上に乗せられ、戦利品として扱われていた。


「ちっ… てこづらせやがって…」


と、重度の熱傷を負いながら、シュライヒャー将軍はつぶやいていた。


セラフィーナの魔法はサンフォーレ皇国でも軍主力以上である。

こんな魔法使いが敵方にいては問題になる。

サンフォーレ皇国側に連れて帰るか、

必ず抹殺しないとならぬ存在であった。


魔力を封じたうえ、捕縛したセラフィーナを後方部隊に渡すと、

シュライヒャー将軍は再び、前線に赴くのであった。


同様に多数の魔法科の学生が捕縛され同様の運命をたどっていた。

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