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第十六話 抵抗


漆黒の闇…

平原を支配していた静寂を破ったのは、

無数の「蹄」が大地を踏みしめる、重低音…


(来た…)


セラフィーナは、水晶球から闇の、その先を凝視する。

たいまつに照らし出されたのは、鋼鉄の重装鎧に身を包んだ重層騎兵…

一糸乱れぬ陣形でこちらへと迫り来る「馬の津波」であった。


だがその緊張を打ち破る、場違いな哄笑がセラフィ―ナの水晶球に響き渡った。


「ハッ! 見たか! あれが夜盗の主力だ!」



声の主は、バクスター・フォン・アーモンド。

バクスターは、あの女の指揮下に入ることを良しとせず、

自らの派閥の学生たちを率いて、別行動を取っていた。


「数だけは、多いようだが、所詮は、烏合の衆!

『本物』の兵の戦い方というものを、見せてやる!」


バクスターは自らの手勢およそ150名を率いて、

無謀にも敵騎兵へと、雄叫びを上げながら、突撃を開始した。


「かかれぇ! 最初の、手柄は、俺たちのものだ!」


その恐るべき「統率力」の、意味に全く気づくことなく、

バクスターはむしろ歓喜の声を上げていた。


「素人どもめが!」


それがバクスターの最後の言葉となった。



(ああ、なんて愚かな…)


セラフィーナは水晶球を通して、無謀な「自殺行為」を見つめながらため息をついた。


バクスターの単純な脳の中では、「夜盗の騎兵など素人」という甘すぎる皮算用が成り立っていたのだろう。


だが違う…


あれは「素人」の動きではない。

一糸乱れぬ完璧な陣形。

あの獲物を前にしても、乱れない統率力。


(やけに手馴れている…? 本当にただの夜盗崩れなの?)



地響きが変わった…


敵の先鋒数百騎が、

一斉にランスを水平に構え、

完璧な「突撃態勢」に入ったのだ。


「なっ…!?」


バクスターは、もう逃げ場所がないことに気が付いたが、

全てはもう手遅れだった。



敵将の号令と共に、

数百の鋼鉄の「槍」が、

バクスターたち「歩兵」の群れに、

突撃を決めた…


学生たちの「盾」や「鎧」が粉砕される…


そして次の瞬間の声なき悲鳴…

ランスの穂先が衝突し、

バクスターを含む突撃した150名の学生たちの多くは、


「即死」


した。



即死しなかったものはより不幸であった。


ドッドッドッドッドッ…………!!!


先鋒部隊の後方から、

第二波、第三波の騎兵たちが、

躊躇なく学生たちの上を踏み潰して前進してくる…


数百キロの鉄の塊と蹄鉄に何度も何度も蹂躙され、

つい先ほどまで「人」であったそれらは、

ただの「肉塊」へと変わっていった。



これが「演習」ではない本物の「戦争」の光景だった。

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