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第十四話 作戦会議


夜盗の本陣…

そこでは、作戦会議が開かれていた。


「報告します」


伝令が入室し、恭しく敬礼する。


「フロストヴァルド王国軍主力、アーモンド将軍率いる首都防衛一個師団、その数約1万! 目標地域に到達。現在戦力を分散させ、索敵を開始した、とのことです!」


その一言に、会議の空気が緩んだ。

どこからともなく、哄笑が漏れ始める。



作戦を指揮するゲルト・シュライヒャー将軍も、口の端を歪めて笑った。

彼の笑顔は老獪な狼のようだった。


「かかったか… あの脳まで筋肉でできていると噂の『獅子』は…」


噂の獅子とは… ロックウェル・フォン・アーモンド… フロストヴァルド王国の軍中枢の将軍であった…


シュライヒャーは、地図を見つめながら続けた。



「歴史は、繰り返す、ということだ。『戦争』とは兵士の数で決まるのではない。『首都』という心臓を防衛することが大事であるのに…」


この作戦は、電撃戦。


「夜盗団」という欺瞞情報で、敵の主力部隊を王都からおびき出し、そのがら空きになった首都を皇国最強の重装騎兵師団「鋼鉄の槍」で、一撃の元に陥落させる。


成功すれば、戦争は始まる前に終わる。こういう作戦であった。



「それにしても見事な手際だったな、諜報部は…」


一人の参謀が感嘆したように言った。

シュライヒャー将軍は頷いた。


「ああ。我が国の『眠れる蛇』が、実に良い仕事をしてくれた…」


彼らが、何年も前からフロストヴァルドの軍中枢に潜り込ませていたスパイ。

その男が、アーモンド将軍と側近達を、巧みに取り込んだのだ。


「女と金に弱い人間は、実に有用だ…」


シュライヒャーは、心底楽しそうに呟いた。



はした金と安っぽい女で、いともたやすく国を売る。

人間のそのどうしようもない


「愚かさ」


こそが、この最も美しい「芸術的作戦」を、完成させる最後のピースだったのだから。


スパイとはいつも動くわけではない。一番肝心な時に、裏切らせるだけでよいのだ…


そしてこれに呼応してこの数年、首都近郊で内密に農民や林業に従事させてきたものたち… 彼らにはこれまでリソースを貯蓄させてきた… 彼らは、ここで一気に優秀な騎兵隊へ変貌するのだ…


「全軍に告げろ…」


シュライヒャーの声が、司令室に響き渡る。



その声は、もはや笑いを殺しきれていなかった。


「『獅子』の留守中に、そのがら空きの『巣穴』を蹂躙しに行く…」


「時は来た! 作戦を開始する!」


その号令と共に、迷いの森に潜んでいた六千の「鋼鉄の槍」師団が一斉にその牙を剥いた。

これは表立った作戦行動ではない… 夜盗の名をかたった浸透作戦なのである。



「平時の人事こそが重要であるのに、愚かな国家であることよ…」


シュライヒャー将軍はそうつぶやき、高らかに笑った。

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