第十三話 事件勃発
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最近、フロストヴァルド王都を震撼させる事件が頻発していた。
首都近辺の複数の村が、突如として現れた謎の「夜盗団」によって、続けて襲撃される、という前代未聞の凶報であった。
被害は農作物の被害が中心であったが、これは王都の周辺といことで、大問題となっていたのだ。
それは王国の「権威」そのものに対する、あまりにも大胆不敵な
「挑戦」
であった。
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フロストヴァルド王国の、軍中枢作戦司令室。
重苦しい沈黙が支配していた。
「将軍。やはりこれは罠です…」
最初に口火を切ったのは、キーファー侯爵だった。
彼の老練な目は、このあまりにも「不可解な」事件の裏に、敵国サンフォーレの狡猾な
「影」
を、疑っていた。
「首都近辺にこれほど大規模な夜盗団が突如として出現するなど、ありえませぬ! これは我々をおびき出すための、偽旗作戦。敵の本当の狙いは『王都』そのものでしょう…」
それは冷静で、論理的で、「正しい」指摘だった。
しかしながらこの発言は、意見を異とするロックウェル・フォン・アーモンド将軍の逆鱗に触れた。
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「黙れ、老いぼれが!」
アーモンド将軍は、机を叩いて吼えた。
彼の単純な「脳」には、キーファー侯爵のその「正論」が自らの「威信」を貶めるための「戯言」にしか聞こえないのだ。
「貴殿は震えながら、城のトイレでも守っておればよいわ!」
「首都の民が、脅かされているのだぞ! ここで動かぬは軍人の恥!」
「敵が罠だと、言うのなら上等だ! その罠ごと、我が獅子の軍団の牙で噛み砕いてくれるわ!」
彼は既に「功名心」という甘美な「餌」に食らいついていた。
先日の軍学校での息子たちの失態… これを早急に取り戻す必要があるのだ…
この分かりやすい「機会」を圧倒的な「力」で利用し、
国内における自らの「名声」を回復させる最高のチャンス。
神が与えたチャンスなのである…
アーモンド将軍の頭の中では、もはや「成功」の絵しか見えていなかった。
彼が最も信頼する参謀である占い師からも確信を得ていた。
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「夜盗の潜伏場所が分かった! 主力を率いて直ちに出陣する!」
「待たれよアーモンド将軍! 全軍を動かすなど正気か! 王都の守りが…!」
「まだ分からんのか! 『軍の分割は良くない』! 戦の基本であろうが! 敵の規模も正体も分からぬ以上、こちらも全戦力をもって一気に殲滅する! これが最も安全な策なのだ!」
その空っぽな「理論」を、彼は金科玉条の如く振りかざした。
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「士官学校からも、騎兵科の生徒を召集しろ! 我がアーモンド流の『機動戦闘』というものを、その目に焼き付けてやるわ!」
こうしてアーモンド将軍は、自らの「派閥」だけでなく、キーファー家の息のかかったものたちまで「人質」のように引き連れて、意気揚々と「夜盗退治」へと出発していった。
アーモンド将軍は息子の騎兵科学生は、先日のアルブレヒトの様に優秀ではない… この当てつけなのであった…
アルブレヒトに代わり、アーモンド家の息子を学生隊長に据えて、学生部隊は出陣した。




