冒険者
半ば押し付けられた登録用書類とやらを持って、受付さんの下へ向かう。
うぅん、なんか納得がいかない。
なんか、検査と言うには滅茶苦茶に軽かったし、あの女神像は怖過ぎるし。
ってか今更だがこの書類だってそうだ。不正し放題……もとい、見栄を張りたい放題ではないか、この方式では。
こう言う正式な人物紹介表で見栄を張られてしまえば、後々になって人物紹介表を書いた側も受け取った側も、相当に痛い目を見る事になる。
まぁ、だからと言ってそれが虚栄であるかどうかを確かめる術など無いし、ギルドとしてもその辺しっかり考慮して────……いや、だからあのような威圧感たっぷりな人を付けるのか?重圧を与えて正直に内容を書かせるために。
ふむ、だとしたらまだ分からなくもないな。
人間、単純な恐怖が一番効くのだ。まぁ、俺には物足りなかったわけだが。
一応、念の為に俺の登録用書類を見直してみる。
名前、出身、性別、年齢、武器、装備、使用可能魔法、使用可能奇跡……よし、間違いは無いな。
物知りの爺さんにしばかれながら覚えたおかげで、魔法に誤字も無い。
……本当に無いよな?
「……あ、終わりましたか?」
「ん、ええ、はい。終わりましたが……これで大丈夫ですか?」
「では、拝見させて頂きます」
本当に誤字が無いか若干不安なところではあるが、着いてしまったなら仕方がない。
カウンターに登録用書類をそっと置く。
「えーと……ん?」
受付嬢さんはそれを手に取ると指を差しつつ上から確認して行って、ある一点で止まった。
形の整った眉が、怪訝そうに顰められる。
……何か拙いことがあったのだろうか。まさかやはり、誤字を……?
「あー……何か問題が?」
「いっ、いえ、特に……そ、その……この魔法は……全て?」
ふぅ、よかった。どうやら違ってくれたらしい。
「ああ、はい。そうですね、使えるのはそれで全部です」
「…………!?」
えぇ……?何故……?
……何故かは分からないが、受付嬢さんが頭を抱えてしまった。
いや……え?何がいけなかったんだ?
そこに書くのは使用可能魔法だけだろう?
「……えー……その、すみません、少々お待ち下さい」
「え、ああはい」
突然頭をあげたかと思うと、そう言って受付嬢さんは奥の方へと駆け足で行ってしまう。
……いや、本当に大丈夫なのか?
なんか、誤字以外の何処かに重大な問題があるように感じるのだが。
……まさか俺が知らないだけで、『アト』が貴名だったりするのか……?
…………いや。多分それは無いな。
一応、貴名表で確認した限りは無かったはずだし、あのゴミも保身だけはしっかりしていた。
しっかりとその辺は問題無い名前になっているはずだ。
まぁ、仮に『アト』が貴名だったとしても、罰を受けるのはあのゴミだから別に良いんだが。
しかし、それ以外で問題となると……うーむ……
「────すみません、お待たせしました」
っと、どうやら受付嬢さんが帰ってきたようだ。
丁度いい。何が問題だったのか、受付嬢さんに聞いてみよう。
こういう疑問はさっさと解消しておくに限るしな。
「あの、どこかに問題がありましたかね……?」
「ああいえ、大丈夫です。ちょっと不透明な点があったというだけなので」
……?
……ああ、文字が読めなかったのか。そうかそうか。
その可能性を失念していた。いかにも育ちが良さそうだったから、大体の文字は読めると思ったのだが。
「では、こちら貴方の認識表です。これを見せれば、門の通行が検問なしで可能になりますので、しっかりと持っていてください。また、再発行は可能ですので、依頼の際などに無くしたら報告をお願いします」
「はい、有難うございます」
受付嬢さんから、木製の小板を受け取る。
表面には『10級冒険者』の文字、裏面には登録用書類に書いた、俺の詳細情報が刻ま……使用可能魔法の欄が空白になってやがるなぁ……
なんだぁ……?流石にあの文字をこの小板に刻むのは無理があったかぁ……?
まぁ良い。とりあえず、これで俺は不名誉なことに、冒険者の一員へとなれたわけだ。
うん……まぁ、うん。はぁ……嫌だぁ………………
が、やるしか無い。
とりあえず、まずは宿屋を見つけてから速攻で終わる依頼だな。
よーし……やるかぁー……あー……やりたくなーい……
主人公
冒険者になった。
凄まじい勢いで帰りたい。
鉄の棒
ご主人様の手汗がすごい。
幸せ。
受付嬢さん
なんか薄汚い農民上がりがスゲー綺麗な字を書いてきた上に、魔法まで使えて超ビックリ。
でもなんか本人は鉄棒持って殴りにいく気マンマン。
一体全体どういうことだってばよ(当惑)
ギルド長
元金等級の冒険者。
なんか受付嬢が嘘みたいな登録用書類を持ってきた。
即刻嘘と断定した。
評価くれ。くれくれ。