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ギルド

 衛兵さんの後に続いて、ギルドの立派な扉をくぐる。

 すると、敷居を超えた瞬間、圧倒的なまでのインクの匂いが押し寄せてきた。

 

「うぉ……」


 物知りの爺さんの家で嗅ぐ機会があったため、これがインクであると理解はできたが、流石にあの場所でもこれほどまででは無かった。

 この場所では、俺の想像もつかないほど大量のインクが日々使われて居るのだろう。

 高級品だと言うのに……贅沢なことだ。

 

 そして、見渡してみれば様々な種族、様々な装備の冒険者達。

 重厚な鎧を着込んだ人間。弓を担いだエルフ。槌を背負ったドワーフ。剣を腰に下げた獣人……

 その他にも十人十色な特徴を持った冒険者達がそこら中に居た。

 まぁ、種族によって職業にある程度の偏りはあったが。


 そして、そんな冒険者達による、値踏みされるような視線が四方八方から俺に注がれる。

 体が強張り、額と背中から汗がダラダラと流れ始めた。

 下手を打たなければ何もされることは無いとわかっているが、流石に怖い。


「あ、お疲れ様です」

「いえ、そちらこそ」


 しかし、そんな気圧されている俺を置いて、衛兵さんは受付の方へと行ってしまう。

 ちょっ、マジで、本当にやめてほしい。本当に置いていかないで欲しい。

 普通に怖すぎるんだよこの場所。

 俺は急いで衛兵さんの下にまで歩いてゆく。


「えーっと……1人だけでよろしいでしょうか?」

「ああ、そうですね。じゃあ、あとはお願いしてもいいですか?」

「はい、有難うございました、エルマーさん」

「いえいえ……さ、頑張れよ」


 俺の肩にポンと手を置いて、それだけ言うと衛兵さんは出て行ってしまった。

 ……いやアンタ、下位騎士名(エルマー)って、貴名持ち(ネームド)じゃねぇか。

 なんでそんな大物がこんなところで冒険者志望のお守りなんかやってるんですかねぇ?

 もっとやることってモンがあるでしょうが。主に騎士団とかで。


「うーんと……では、ヒリューさん。彼を第一検査室へお願いします」

「んえ、あ、了解です」


 受付嬢さんの呼び声に、恐らく真銀(ミスリル)製の胸当てを着けた青年が立ち上がり、こちらへ向かって来る。

 ……しかし、すごいな。これまた強そうだ。威圧感がある。

 いや、多分これも万が一が無いように、ということなのだろうが、せめてもう少しのほほんとした雰囲気の人を所望したい。冒険者志望が泣くぞ。

 ……まぁ、俺は物知りの爺さん程のおかげで、この程度の威圧感なら慣れているわけだが。

 

「えー……あー……初めまして。俺は銅等級冒険者のヒリューって言って……あー……その、君の先輩……に、なるのかな?」

「まぁ、そうですかね。ラダのアトです、よろしくお願いします」

「ラダって言うと……結構近場だね。うん。……あー……じゃあ、その、登録に、行こうか?」

「お願いします」


 ふむ、見た目に反し

 まぁ、そういう臆病さも生き残るには必要なことだ。

 装備を見てみる限り、手入れもしっかりと欠かさずに施しているらしい。

 恐らく、ここに来るまでも臆病に、言い換えれば堅実にやってきたのだろう。

 こういう冒険者ならば、俺でもまだ好感を持てる。


「さ、この中だね」


 ギルドの少し奥の方にある、少し長めの廊下。

 そこに所狭しと並んだ扉の中の、一番手前に通らされる。

 中には書類とペンの置かれた机が一つと、それを挟んで向かい合うように置かれた椅子。

 それと、女神を象った石像が部屋の壁際に鎮座していた。


「うん、じゃあ、そこに座って?」

「はい」

 

 とりあえずこの圧倒的な存在感を放つ女神像について話を聞きたいところなのだが、座れと言われたのなら仕方がない。座ろう。

 指し示された方の椅子に、大人しく座る。

 少し遅れて、ヒリューさんも俺の対面に座った。


「あー……字は書けるかな?」

「はい、これに書けばいいんですかね?」

「うん、そうそう。まぁ、書けるところまでで大丈夫だから」


 ふふん。甘く見ないで頂きたいものだ。

 俺は物知りの爺さんの弟子だぞ。この程度の文字ならば容易く読めるし、書ける。

 名前、出身、性別、年齢、武器、装備、使用可能魔法、使用可能奇跡、その他自己申告等々。

 それらを鮮やかに、綺麗な文字で書き綴ってゆく。……両手で。

 というのもこの鉄棒、やはりかなりの融通が効くようで、普通に足にもくっ付いたのだ。

 まぁ、だからなんだって話なのだが。


「……う、うん……?えーっと……何だこれ……?」

「え?」

「いや、何でもない。こっちの話……」


 ……ふむ。読めない文字でもあっただろうか。

 誰だって読めない文字くらいある。正直に聞いてくれれば教えるぞ。

 っと、そろそろ書き終わるな。


「はい、これで大丈夫ですか?」

「あー……うん、しっかり書けてるね、うん、うん……まぁ、いいか。よし、じゃあ次ね」


 そう言うとヒリューさんは立ち上がり、俺を女神像の前に来るよう促した。

 成程、ついにこの女神像の謎に迫れるわけだ。

 それは非常に有難い。存在感が半端なさすぎて怖いんだよ、これ。


「さて、それじゃあ、あー……とりあえず、この前に立ってくれ」


 言われるがままに女神像の正面に立つ。

 ……ん?鉄の棒が震え出した?

 ふむ、やはり、呪いの類いは女神様のような聖なる存在には弱いのだろうか。

 出来ることならもういっそのこと、このまま浄化して欲しいのだが…まぁ、そう上手くもいかないか。とりあえず、今のところはこの女神像の効果について────……

 

「……まぁ、うん、大丈夫そう……かな」


 ……ん?アレ?終わり?説明無し?


「じゃあ、これを受付にまで持っていってね。それで登録は完了だから」

「え?ちょっと待」

「ほらほら、早く、早く」

 

 ぬ、ぬぅ、追い出された……だと……?

 え……?で、本当になんだったのアレ?

 とりあえず、まだ鉄の棒が震えていることから、ただの置き物じゃ無いんだろうが……えぇ?

 ……………うーん、受付さんに聞くか。

 

 

 主人公(アト)


 あの女神像何なの?

 実は上級魔法も一部使えるバケモン。

 ただ、本人はそれがすごいという認識は無い。

 これも全部物知りの爺さんが悪いんだ……!


 鉄の棒


 女神様に滅茶苦茶睨まれた。

 マジで怖すぎ。


 ヒリュー


 結構弱い方の冒険者。

 主人公の予想通り、堅実に臆病にここまで上り詰めた人。

 文字は普通に書けるし読める。

 主人公のバケモンさに若干引いてる。


 女神様


 ん?なんかヤバい奴おるな?



 評価くれ。くれくれ。

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