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検問所

 市壁の外。検問待ちの列の最後尾にて、鉄の棒を杖代わりにしながら順番を待つ。

 正確な数はよく分からないが、前方には馬車が5、6台ほど待機しているので、まだかなりの時間がかかるだろう。

 しかし、流石は町というだけある。俺の村など、一週間に2台来れば多い方だったのに。

 まぁ、日も高いし、別に急いでいるというわけでも何でも無いのだ。

 ゆっくりと気長に待つとしよ────……


「冒険者志望の連中はいるかー!?」


 む。

 成程、そういうのがあるのか。

 列の少し横で、鎧を着けた衛兵の1人が声を張り上げている。

 恐らくだが『冒険者志望は特に何も持っていないはずなので、先にそいつらをとっとと終わらせてしまえ』という思惑なのだろう。

 ううむ、全くもってその通りだ。

 事実、俺は銅貨とこの服とネックレスと鉄の棒以外、何も持っていない。

 もはや手ぶらとほぼ変わらん。そこら辺のお使い帰りの子供の方が多くの物を持っているまである。


 まぁとりあえず、呼ばれたからには行ってみることとしよう。

 冒険者志望というのは非常に、非常に不本意ではあるのだが、そうである事は間違いないのだ。

 列を外れ、その衛兵の下にまで歩いてゆく。

 御者達が俺の事を汚物を見る目でチラチラと見てくるが、そんな事は気にもならない。

 農村の中なら、これでも綺麗な方なのだ。町暮らしの連中が綺麗すぎるだけで、これが俺たちにとっての標準。決して恥ずべきことでは無い。

 貴様らも農村で一月ほど暮らしてみろ。価値観がガラリと変わるぞ。


「……お?お前1人だけか?」


 そんな馬鹿なと後ろを振り返ってみる。誰も居ない。

 どうやら本当に俺1人だけらしい。


「そのようですね。もっと居るものだと思っていましたが」

「おう。この時間は夏か冬でも無い限り、2、3人程度はいつも居るぜ。まぁ、1人だけってのも別に無かったわけじゃ無いし、異常事態でも何でも無いんだがな。さ、こっち来い」


 そう言うと、衛兵は検問中であろう馬車の横を通り過ぎて、待ちの中に入って行った。

 

「いや、検問は?」


 思わず素で聞いてしまった。

 いやしかし、いかに冒険者が何も持っていないとは言え、一切の検閲無しというのは可笑しいだろう。

 そうでもなければ、危険人物が入り放題になってしまうではないか。


「ん?ああ、いやなぁ。冒険者志望の連中はギルドでちゃんと検査受けるからさ、衛兵がちゃんとギルドまで見張って行くなら別に検問いらないんじゃね?ってなってな。そうすれば冒険者志望も道に迷わないし、丁度いいだろ?」

「…………成程」


 どうやらつまりそう言うことだったらしい。

 確かに、言われてみればそれもそうだ。

 いかに万人を受け入れる冒険者ギルドでも、流石に犯罪者はいただけない。

 万が一にも危険分子を持ち込まないように、登録の際はしっかりと検査を行なっているはずだ。


 そうなると、道中さえ何もしないように衛兵が見張っていればほぼ検問と変わらないし、一回で済むので受ける側も行う側も手間が減る。

 それが本当に安全かどうかは置いておいて、確かに効率的ではあるだろう。


「……しかし、お前さん。何だって冒険者に?」

「……と、いうのは?」


 村では見ることの無かったレンガ造りの建物と、びっしりと敷き詰められた石畳。

 至る所で溢れる活気に感動しつつ歩いていると、突然そんな事を聞かれた。

 あまりの唐突さに、その意図を掴みかねてしまう。


「いや、頭は良さそうだし、礼儀作法も最低限だがしっかりしてる。就こうと思えば他の職に就けるだろうに、どうしてそんな棒切れ持ってここまで来たのかと思ってな」

「ああ、成程……」


 それは俺がこの棒に呪われたからです。

 ……とはまぁ、流石に言えないな。

 いや、どうせギルドの検問でバレはするんだろうが、とりあえずここはそれっぽい事を適当に言っておくか。


「まぁ、憧れですね」

「うーん……やっぱりそう言うモンなのかねぇ……?俺には良く分かんねぇな。俺はむしろ、どっちかって言うと冒険者になんて絶対になりたくない、って人間だからなぁ……あ、気分悪くしたらごめんな?」

「いえ」


 全くの同意見なので、全然、これっぽっちも気にしないでもろて。

 そうだよな、うん。やっぱり普通の価値観を持った人は冒険者になんてなりたくないよな。

 俺だって出来る事ならなりたくなんてないぞ。この棒のせいでなるしかなくなったってだけだ。

 憧れなんてこれっぽっちも無い。

 声を大にして冒険者はクソ職業とも叫べる。


「──────よし、ここだ」

 

 っと、くだらない事を考えていたら、一瞬で着いてしまった。

 もっと店の配置とかをしっかり見ておきたかったのだが、まぁ、登録が終わればじっくりと見ていられるのだ。早く登録を済ませてしまおう。

 いやしかし……うむ、流石は冒険者ギルド。デカい。

 どのくらいの大きさがあるんだこれ。俺の家を縦に三つくらい並べたらこれくらいになるか?


「ほれ、入るぞ。俺もさっさと門に戻らにゃならんからな」

「あ、はい」


 さて、何はともあれ登録だ。

 これに通らなければ何も始まらない。

 まぁ、流石に呪われた武具(カースド・ウエポン)一本で追い返されたりはしないだろうが、気は張っておくに越したことはない。

 ふぅ…………よし、行こう。

 

 

 主人公


 町に着いた。

 今からギルドに登録する。

 鉄の棒の存在が不安要素。


 鉄の棒


 あまりの気配の多さに若干ビビってる。

 ご主人様助けて(泣)


 御者


 ただの御者。

 主人公の事をドブネズミくらいに見てる。

 今後一切の出番は無い。


 衛兵さん


 普通の良い人。

 割とエリートな方で、その辺の冒険者なんかよりはよっぽど強い。

 冒険者自体は嫌いでないが、自分がなるのだけは絶対無理。


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