決意
『呪われた武具』
剣、槍、盾、兜、鎧といった、様々な姿で数々の英雄譚や冒険譚などにも登場するそれは、どれも例外無く『剛力無双な武装』であると同時に、何かしらの『代償』を使用者に求める諸刃の剣。
また、その特徴として『一度それに触れば、触れた体の部分を切り落とすか然るべき解呪を行わなければ、それは永遠に体に張り付き、一生離れることがない』とかいう厄介極まりない性質を持っている。これの影響をしっかりと受けているのが俺の現状だ。
ただ、本当に張り付いているというわけではなかったようで、体の一部が触れていればそれで大丈夫らしい。
持ち替えだったりは普通にすっと出来た。割と融通は効いてくれるようである。
話を戻すが、『呪われた武具』の出自は未だ謎が多く、よくわかっていない。
超古代に施された魔法的な効果が時間経過と共に変容したものだとか、多くの人間を殺した武器に怨念や怨恨が宿った結果だとか、そんな事実とも虚構とも言い切れないような説がそこかしこで散見されるが、それらはどれもあくまで予想、或いは考察に過ぎない。
というのも、そもそもとして『呪われた武具』の絶対数が少ない上に、見つかったとしてもその性質ゆえ、気軽に調査実験を行えないのだ。
となると、何でそんなモンがただの農家の納屋に転がされていたのか、なんでこんな錆の浮いた鉄の棒に宿っているのか、その辺りが本当によく分からないし納得がいかないのだが、まぁ今のところはまだ良いとする。今はそんなのを気にしている場合では無い。
今の問題はつまり、どのようにしてこれと共存しながら町で職を見つけるか、というものだ。
しかしまぁ……………うん……………絶対無理。
ちょっと雇う側の目線になって考えて欲しい。突然物騒な鉄棒を片手に持った薄汚い子供が「ここで働かせてください!」などと店の扉を開けながら言ってきたところで、それに耳を貸すだろうか?
俺だったら絶対に追い帰す。それでもって大声で衛兵を呼ぶ。
いや、だってそうだろう。明らかにヤバいだろうがそんな奴。
そんな気が無かったとしても「お前、雇えよ?雇わなかったら殴り殺すぞ?」的なオーラが滲み出ているのだ。
冒険者志望の可能性もあるし、流石に町中を歩いているだけで通報はされないだろうが、店の中に入ってしまえばその瞬間に有罪は確定。即座に通報からの獄門連行コンボは免れないだろう。
それどころか、なんならその場で切り殺されるまである。衛兵さん達は犯罪者連中に対して容赦しないのだ。
物知りの爺さんも、向こうの指南書には『冤罪の人を切り捨てちゃったとしても、君は悪くない。変な行動をしていた向こうが悪いのだ。疑わしきは罰せよ。その調子でドンドン頑張ろう!』的な記述があると言っていた。世も末である。早急な世直しを進めてくれ。
まぁ、世直し云々は置いておくとして、そのような記述があるというのはどうやら事実らしい。
その辺を考慮すると、こんな物騒な鉄棒を担いでいる俺は、どう足掻いても冒険者にならなければならないという話になってしまう。
心の底から嫌だと叫びたいが、それ以外に選択肢が無いのだ。
冒険者になる以外の選択肢を幾つか挙げてみよう。
森に住んで猟師になる。この無駄に長いし重い鉄棒を持ちながらとか、自殺行為かな?
海か川に住んで釣り師になる。そもそも釣りのやり方を知らんし、海も川も辿り着くまでに餓死する。
研究機関に身を売る。実験動物扱いの末に殺される未来がありありと想像できる。
犯罪者。論外もいいところ。
……とまぁ、このように。
単純に俺が気付けていないというだけで選択肢は他にあるかもしれないが、現状気付けているものだけで考えると、どれもこれもクソなのだ。
いや、冒険者も大概にクソなのだが、あそこはあそこでまだ希望が見え隠れしているので、この三つよりかは確実にマシと言える。
そんなわけで、俺はクソ野郎共に別れを告げたのなら、本当に、本ッッ当に癪ではあるのだが、町へと冒険者登録を済ませに行くことにした。
さて、そうと決まれば善は急げ。とっとと連中に別れを告げ、新天地へと赴こう。
その新天地は相当に苛酷であることは確定しているわけだが、つべこべ言ってはいられない。
どうせ、やらなければ死ぬのだ。だったら精々足掻いてやろう。
大丈夫、俺は村で一二を競うほどに器用で、あの物知りの爺さんの弟子。
大概のことなら、なんとかなってくれるはずだ。
主人公
消去法で冒険者を決意。
物知りの爺さんの弟子。
呪われた。
鉄の棒
ご主人様が血の吸えそうな仕事を決意してご満悦。
興奮してご主人様の生気を吸わないように頑張っている。
両親
今作最高のクズ。色狂い。
本当の三男と四男と五男と長女はコイツらに殺された。
一切の出番は無い。
評価くれ。くれくれ。