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「アイツ? 適正者? なんだよそれ?」
『わたしの幼馴染み。わたしに片想いをしてるヤツ。――どう? 嫉妬した?』
「いや、全然」
『殺すわよ?』
出会って二日で嫉妬を期待されても困る……。
「で、そいつがなんだって? 適正者って?」
『勘の悪いおっさんは嫌いだよ』
「ハガ○ンみたいにゆーな。で?」
『まぁ、わたしがあんたに合体アプリをあげたみたいに、アイツもアプリをあげたのよ。適正者――向いてるヤツに』
なるほど、なるほど……。って、ちょっと待て!
「合体アプリって1つじゃないんか!?」
『あんたバカぁ?』
全然ア○カに似てねぇ。――気の強さをのぞいて。
『オピーがオ○ギとピ○コに戻ってたでしょうが。合体の反対。――はい、答えをどーぞ』
スマホの画面からマイクを向けられた。
「……“分離”?」
『はい正解! やればできるじゃん』
ほめられても全然嬉しくねぇ。
「ちょっと待て! やっぱ聞いてねぇぞ! そんなアプリがあるなんて!!」
『そりゃ言ってないし。でも正直予想外だったわ。まさか、こんなに早くアイツも“現世”に来るなんて』
「は? 今なんて?」
『なんでもない。でもどうする? 向こうの持つ“分離アプリ”は合体アプリの真逆。1つのものを2つに分けるアプリよ。いきなりのライバル出現ね~』
妖精女は楽しそうだ。だが、オレの答えは決まっている。
「じゃ、ここまでだな。誰かと競い合う生活に病んでるサラリーマンをなめんな」
『カッコいいようでダサすぎる……!』
失敬な。
『でも、いいの? あんた、退屈してたんでしょ? また逆戻りだよ?』
「……るさいなぁ。オレは危ない橋は渡らない主義なんだよ」
『だからいまだに童貞なのよ』
「なんで知ってんだよ!? ――じゃねぇ。か、関係ねぇだろ……」
オレのプライバシーがどこまで把握されてるかを知るのがおそろしい……!
『まぁ、あんたの好きにすればいいわ。――でも、あまりにやる気なかったら殺すから』
「だ、だから普通に脅迫しすぎだろ!?」
『予言してあげる。あんたは必ずまたこの力を使う。わたしの目に狂いはないのよ』
そんな不気味な言葉を残し、妖精女は画面奥に消えていった。