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『え? なに? どうしたの?』
「まぁ、簡単に言うとだな。一度合併した会社が再び別れるってさ」
『へ~。そんなこともあんのね』
「いや、普通ねぇよ。女子高生の仲良しグループじゃねんだぞ?」
『まだニュースやってるわよ。続き聞きましょ?』
ユーニは興味津々だ。オレもとりあえず、テレビに向き直った。
『今回の分社化について、片腹社長にインタビューを行いました。VTRをご覧ください。どうぞ』
画面が切り替わり、いかにも仕事のできそうな社長が映し出された。
◆
『今回の急な分社化を推し進めたのは何故でしょうか? 一度統合された会社が再び分社化されるなど、今までにないことですが』
『おぼろげながら浮かんできたんです。分社化というワードが』
『――は?』
「うわ……会社のトップがこれって終わってんだろ。インタビューしてる番記者もとまどってるわ」
『でしょうね。“理由なんて無い”って言ってるようなものよね……』
さしものユーニもドン引いている。インタビューは続く。
『えっと……株主や従業員への説明はいつ頃だったのでしょうか? 反発はありませんでしたか?』
『まだ説明はしていません』
『――は?』
『説明が必要だと思っています。だからこそ、株主や従業員の皆様方に説明が必要だと思っています』
『…………』
「番記者絶句じゃねぇか……」
『中身スッカスカね……』
ユーニが苦笑いしているが、株主や従業員からしたらまったく笑えないだろう。株価暴落待ったなしだ。
やがて、インタビューは終わり、再びスタジオに。
『『『………………』』』
アナウンサー、コメンテイター皆、絶句。
裏から指示が出たのか、アナウンサーがハッとし、コメンテイターに話を振る。
『ど、どう思われますか?』
『マージしてパージしたってことですね。――あ、マージっていうのは――』
時間切れかCMに突入する。なんとも言えない残念さだった。
「世も末だな……」
オレがそうこぼすと、めずらしくユーニも真剣にうなずいていた。




