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『じゃ、早くドローン飛ばしなさいよ!!』
「いや、もう暗いし、明日だな。土曜で仕事休みだしちょうどいいだろ」
まだ少し不機嫌さを残しつつもユーニがせかしてくる。――俺よりよっぽど楽しみにしてそうだ。
『今日はもう無理』と伝えると、ユーニは文句を言いつつも受け入れてくれた。今は画面奥のソファーでくつろいでいる。
――ほんとに謎なアプリだ……。
◆
夕飯は冷蔵庫に入れていたお惣菜をレンジで適当にチンして用意した。白米すらごはんのパックで片付けるオレに、さすがに思うところがあるのだろう。ユーニが白い目で見てくる。
『自炊した方がいんじゃない? 料理を作れたらモテるわよ?』
「いいんだよ、もうあきらめてる」
結婚願望は若い時は少しはあったが、もうあきらめてる。
SNSで主婦の井戸端会議が全世界発信されている昨今、夫というのはフルタイム働いて家事育児して当然という、超ハードワークをこなせて当たり前の世界線であることを知った。
そこまでして結婚などごめんだ。もちろん、好きな相手に自主的に尽くすのは全然構わないが、それが出来て当たり前みたいな感じはムリ、オレには。
『まったく……あんた、ネガティブ過ぎよ。まだ人生、半分も残ってるじゃない。こっからでも変われるわよ』
「やめろ、そう考えると鬱になる。人生長過ぎんだよ……」
ユーニはため息をつくと、それ以上は何も言わなかった。言っても無駄とあきらめたのだろう。
ふと訪れる静寂。オレはなんとはなしにテレビをつけた。ニュース番組だった。スト○ロを冷蔵庫から出して一気にあおる。
『次のニュースです。17年前に合併統合され設立された株式会社バン○イナ○コホールディングスが、本日分社化を公表しました。バン○イとナ○コに再び別れるとの公表ですが、株主を含め、大きな物議をかもしています』
「…………ごふっ!?」
オレはスト○ロを鼻から吹き出した。




