9 悪夢 ②
ちょっと長めになりました。しかも、前回よりR15 強めです、すみません。ショタ 近親相姦(微妙です)流血グロ ダメな方はお気を付けてくださいね。
ニキアスは、すでにマヤの力で褐色に変わった痣の痕を手で触わった。
そこはガウディがよく薄笑いを浮かべながら触れた場所でもあった。
******
ガウディがニキアスに最初に接触した日。
その日を境にしてガウディの所謂『お渡り』の回数が増えた。
当主になったばかりの力を誇示する様に、食料、布、金、宝石…まるで姫君への貢ぎ物の様に贈り物が次々と住まいに運ばれていく。
そして。
「ちからを抜け、ニキアス」
「あ、あにうえ……」
理由は分からない。
そんな風に触られる度鳥肌が立つ場所に、ガウディは香油を纏った指をつぷっと一本入れて、何度も抜き差しを繰り返した。
「ニキアス…ここはどうだ?」
ある場所を探り当てられて、何度もソコを繰り返し擦られて、刺激された。
異物感と気持ち悪さと――同時にぞわぞわと背筋を駆け上って来る浮遊感に耐えられそうにない。
ニキアスが泣きながらガウディに懇願すると、また薄笑いを浮かべてやっと指を抜いてくれた。
ただ――ガウディは執拗だった。
イヤだと泣けばすぐに止めてくれるが、次回会った時またもう一度、同じ様にその行為をするのだ。
何度も繰り返し行えば、良くなるとでも言うかの様に。
そして口腔内から全身――果ては恥ずかしい場所の中まで、唇や舌や指を使って、その皮膚や粘膜をぞわぞわする感覚が起こるまで吸ったり揺らしたり擦ったりする。
その度にニキアスの頭は痺れておかしくなりそうだった。
その感覚が快楽の感覚の初まりだと気づくのは、大分後になってからだ。
そんな時に邸の奴隷等の井戸端会議をちょうど物陰にいたニキアスがたまたま立ち聞きする機会があった。
「…うちの坊っちゃんの処に出入りするなんて、一体どういうつもりなのかね」
「ガウディ様だろう?わざわざご本家の当主様が…。やたら訪問も贈物も増えているし」
「…もしかして油断させて殺っちまうおつもりなのかもってあたしは思ってるよ。坊っちゃんのあの醜い痣を見る度にあたしゃゾッとして仕方ないし」
「…ああ、聞いた。ガウディ様が余計なご兄弟を全て排除したって噂だろ?それに…お父上も…」
先日一応ニキアスの父の当たる王弟公が、風呂場で泥酔して溺死したのだ。
そうしてガウディは嫡男としてレオス家当主に成ったばかりであったのだが。
使用人や奴隷が話をしているのは、その王弟公の側妃や愛人らの子供達――ニキアスにとっては異母兄弟にあたる子等が、母親も含めて何故か次々と不審な死を遂げているというものだった。
王弟公は酒と女にだらしない男だったので、庶子を含め10数人はいたのだが、その死に方にいかにも不自然で、嫡男のガウディが裏で何か関わっているのではないか…という、何とも血生臭い噂がその場で囁かれていたのだ。
もちろんニキアスには到底信じられかった。
自分にあんな事をする兄上ではあったけれど、生まれた時から他の兄弟等に捨て置かれる存在のニキアスに目をかけ、本当に稀だが時に優しい言葉をかけてくれる心の広い方だと思っていたのだ。
(まさかそんな非道な事をするお方じゃない…)
そしてその認識はあっけなく覆される日がやって来る。
ニキアスは甘い菓子が苦手だったのだが、今日ガウディが持って来てきてくれた白い大きな桃は甘味の中でも大好物だった。
大きい桃を両手で持ち、かぶりついていると、瑞々しい果汁が口から零れ落ちる。
それを自分の手で拭うと、いつものようにガウディは無表情でニキアスが食べるのをじいっと見つめている。
ニキアスは行儀が悪かったかと、少し恥ずかしくなった。
この日のガウディも食べ終わると同時に、手を伸ばしてニキアスを引き寄せた。
何時もの様にガウディはニキアスへキスをし始め、果実でべとべとになってしまった手や口の回りを丁寧に舌で舐め取っていく。
「…甘い」
ガウディは呟いた。
慌ててニキアスが言い訳する様に言った。
「も、桃を食べたので。…ごめんなさい」
「俺が持って来たやつだろう、別にいい。
普段…好んで食わんから、味が知れて丁度良い」
「え…あにうえ、ふだん桃を食べないのですか?」
「…可愛いな、ニキアス。そんなに驚く事か?」
ガウディは珍しく少し微笑んだように見えた。
「とても甘いな、ニキアス…お前は」
ニキアスの右の耳元で囁くと、耳朶に舌を入れ愛撫し始めた。
「ふぁ…」
いつものように、ニキアスはくすぐったさと心地よさにぼぅっとした。
しかしガウディの左耳に光る赤い宝石を見つめると、何故かふと先程の使用人等の会話を思い出した。
「兄弟をころすなんて…」
ニキアスは自分が呟いた言葉の内容を良く吟味していなかった。
「…あにうえが、ひどい事をしているなんて…うそですよね?」
『そんなの嘘に決まっていますよね』
という確認の意味で思わず口から出た言葉だったのだ。
その瞬間、ガウディのキスがぴたりと止まった。
「…それを誰が言っていた?」
「…え…?あの、えと…」
その声質が冷え冷えとしたものに変わったので、ニキアスは思わずガウディの顔を仰ぎ見てしまった。
ガウディは黒目がちの目をやはり月の様に細めて笑っていた。
「誰が言っていたか教えてくれ、ニキアス。誰がお前に余計な話を吹き込んだのか」
ニキアスはぶるぶる震えながら、首をぶんぶんと横に振って説明した。
「ち…違います…吹き込んだなんて。そ、それを……ぼ、ぼくが勝手に聞いちゃっただけで…だから…」
「そうか、それは残念だ」
ガウディはまた無表情へ戻って、立ち上がった。
******
一体何に対する『残念』なのか?
話を聞いてしまった事か、それともこれから彼が行う事に対してなのか。
ガウディは歩いて自分の剣帯から細身の剣をスラリと抜いた。
「ひゃあっ!…」
ニキアスは自分が斬られると思った。
剣を見た事が無かったので、その鋭い刀身の光に怯えて縮こまってしまった。
しかしガウディは、剣をぐっと握ってからぶんぶんと刀身を数回振ると
「ここでいい子で待っていろ」
と優しく言ってから、部屋を出ていった。
(一体…あにうえはどこに行ってしまったのだろう)
と思っていると、部屋の外から凄まじい女の悲鳴が聞こえた。
ニキアスの住んでいる邸は、ほんの数人の奴隷しかいない。
「え!?」
(な、何が起こったの?)
場所が変わって今度は、男の怒鳴り声と野太い悲鳴だ。
ニキアスがその声に呆然としていると、またも耳を劈くような女の悲鳴が聞こえた。
「ガ、ガウディ様!申し訳ありません!お許しください、お許しください。
お許し――ぎゃあああああああああああああああっ!!!!!!!」
そしてニキアスは事態を把握した。
ニキアスのいる部屋以外で繰り広げられる阿鼻叫喚の光景は、声だけで十分想像できたのだ。
「ひぃっ…申し訳ありません。申し訳ありません、ガウディさ…ぎゃああああ!!!!!!!」
ニキアスは思わずその場に座り込み、両手で耳を塞いだ。
助けと赦しを請う声が完全に聞こえなくなるまで。
どれぐらいの時間が経ったのか――。
細身の剣の刀身が一瞬キラっと輝き、目の前を血がポタポタと滴り落ちる。
それは床に小さな血溜まりを作っていた。
生臭い鉄の匂いが部屋中に広がっている。
ゆっくりと上を見上げると、血を浴びた様に赤く染まったガウディはそこに佇んで、ニキアスを薄笑いで見下ろしていた。
それは明らかに本人が流したものでなく、返り血である事は間違えようも無い。
「あ…あにうえ。どうしてこんなことを…」
思わず震えながら呟くニキアスに、ガウディはかくんと首を傾げて笑みを張り付けたままで言った。
「…お前は弱いなニキアス、脅えてばかりで…可愛らしい」
ガウディは血の付いた剣を床に投げ捨てると、ニキアスをひょいと抱えて寝台の方に連れて行った。
「…しかしそれでいい。お前は俺に搾取されていれば、それで」
どさりとニキウスを寝台に転がすと、ガウディは呆然とするニキアスの衣服を次々に剝ぎ取っていった。
いつもの様に舌でニキアスの唇を割り、口腔内を犯していく。
その時懐から出した小瓶の水薬を自分の口に含むと、また唇を重ねてゆっくりと口伝いにニキアスに飲ませた。
(苦くて甘い…これは何?)
疑問に思った時、ガウディの髪先から何かがぽたぽたとニキアスの頬に落ちた。
無意識にそこに手をやって目の前で見ると――ニキアスの指先に生々しい血がついていた。
(さっきガウディが斬った者の――!)
ニキアスは思わず悲鳴を上げた。
その途端、景色がぐにゃりと曲がってぐるぐると回り始める。
身体全体――特にいつもあにうえが執拗に触る場所がジンジンと熱くて頭がおかしくなりそうだった。
「…だからお前は俺のそばから離れるな」
ガウディの低く笑いながら囁く声が聞こえたが、ニキアスはただ唸り声と悲鳴を上げ続けた。
それは地獄の苦痛と悦楽を伴う狂気の夜の始まりだった。
お待たせしました。
(エログロ苦手な方スミマセン)
読んでいただきありがとうございます。
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